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「魔王様」の定義  作者: 神無 乃愛
「魔王様」の定義 本編

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46/91

話し合いは終了です


 達樹がまず交渉をしたのはこの国の王だった。

「何故、私と?」

「この国で開催するわけですから、まず挨拶するのが礼儀だと始まった時にも言った筈です」

 既に達樹の中では頭の中で交渉材料のカードが用意されている。

「驚きました。私たちは異世界人ですから、最初に来た国がエーベル王国。衛生面の悪さに辟易しておりましたが、ここは素晴らしい。下水に公衆浴場まである」

「!!」

 王が驚くところを見計らい、達樹は続けた。

「私が第三国にと頼んだだけです。開催国は二つの国のどちらにも属していなければ、それでよかったんですけどね」

「ではこの国を選んだのは……」

「あちらさんですよ」

 にこりと笑ったまま、達樹は話を続けていく。

「いやはや……連れが公衆浴場に行ったと聞いたので、先日私もお邪魔させていただきました。懐かしい」

「懐かしい?」

「えぇ。あの造りは私たちがいた国でも使用されていた造りです。思わず懐かしんで、数人と羽目を外しそうになりました」

 それ以来、ずっと公衆浴場に通っているのは公然の「秘密」である。

「衛生面を整えるだけで疫病が少なくなると統計に出ておりましたので、わが国はそれを実行したまでです」

「その心意気がいいです。正直、あなたとは交易のための話がしたく、今日の席を設けました」

「……交易……ですか?」

「えぇ。互いに無理のない程度の輸出入を考えています。こちらの地理の都合上、神殿の移転装置を使うことになると思いますので、合意が得られれば神殿側に話を持って行く予定です」

「交易の為に移転装置を使うなど……」

「戦に使うよりましでしょう」

 達樹はそれ以上言うつもりはない。

「わが国は山に囲まれているため、周囲との交易は少ない。外敵も少ないといえます。そしてエーベル王国とグレス聖王国に庇護されているため他国ともやりあえておりますので」

「そうでしたか。それは失礼」

 そこで話を切り、達樹は席をたった。

「民の笑顔なくして国は成り立ちませんからね。民の笑顔のためには国の為政と食料、そして住処、これが大前提です。このままエーベル王国とグレス聖王国に食い潰されるのがご希望なら私は止めませんが」

 シスたちを促して、交渉の席をあとにした。


 エーベル王国、グレス聖王国とも話し合い、交渉は幕を閉じた。

 エーベル王国からは独立を、グレス聖王国からはリュグナンたちの処刑を、神殿側からは領内の神殿は今までと同じく庇護下に置き、転移装置を領内に限り達樹たちの使いやすいように維持するということで決着がついた。


 賠償金は必要最低限だけをもらった。「けじめ」だ。


 正直に言えばこれで両国からの移民が他国に増えるだろうと予測している。

 その辺りまで達樹たちが関わっても意味がない。達樹は「偽善者」ではなく、王になったのだ。

 まずは、信じてついてきてくれた民たちを守るのが先決である。


 結局、エルフリーデはエリと共にいることを、そして達樹たちと共に戻ることを表明した。


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