表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「魔王様」の定義  作者: 神無 乃愛
「魔王様」の定義 本編
38/91

一体何がしたいのですか?

 ギルタブルルの毒だ、エルフリーデ()が気付いた時には遅かった。

 そして、達樹は知っていて飲んだのだと。

 シスリードは達樹に巻き込まれるように倒れこんだ。


 自殺行為だ。思わずエルフリーデ()は達樹の傍に駆け寄った。

――誰か! 水属性の魔法を使えるものはいないの!?――

 このままエルフリーデ()が癒しを行えば、確実に毒が回る。

――姉さん、闇で時間(とき)を止める方法があります!――

 そんな魔法があること自体、エルフリーデ()は知らなかった。


 エルフリーデ()が闇魔法を使って、達樹の時間(とき)を止め、随行したもう一人の神官が水魔法で達樹の体温を下げているている間、エルフリーデ()はギルタブルルに向き直った。

 これが、ギルタブルルのやり方か、と。

「我らは侵入者に手加減などしない」

 きりっと弓を引き始めた。

「エルフリーデ様!」

 苦しいはずのシスリードがエルフリーデ()の前に立ちはだかった。

「エルフリーデちゃん、ギルタブルルに色々言いたいことがあるだろうけど、まずは達樹の治療に……」

 血清がない。その場しのぎにしかならない。それほどにギルタブルルの毒は遅効性であり、強いのだ。

「……ここまでしなくて、大丈夫だよ」

「タツキ!」

「毒なのは最初から分かって飲んだし。それに私は通常より毒に対する抵抗があるから」

 少しして目を覚ました達樹が、ギルタブルルに向かって笑っていた。

「まぁ、私は特殊ですけどね。……サソリ毒でなかったことに感謝です」

 どこまでも他者を心配させるのが趣味らしい。

「あなたは……」

「交渉に必要なカードは一枚だけじゃない。それは常に覚えておくといい。それから、最大の切り札とも呼べる交渉カードはいつ、どんな時に切るかしっかり見極めなきゃいけない」

 エルフリーデ()とほとんど年齢が変わらないというのに、達樹はどこまでも冷静だった。

「ここから先の交渉は誰にも見られたくないんだ。……私とそちらの代表者数人で話できませんか?」

「タツキ!!」

 シスリードの言葉を無視して、達樹は千紘とシスリードに向かって言う。

「千紘兄とシスはここに残って、あとは戻って欲しい」

 そこまで言うと、達樹は千紘に何かを耳打ちし、そのあと翠ともう一人の神官へ耳打ちした。

「分かった。それでいく」

 千紘が悔しそうに答えていた。


「だだだだ大丈夫でしょうか」

「エリ、あいつを見くびってるのか?」

「そういうわけではないのですが」

 不安そうなエルフリーデ()に翠は軽く答えている。


 ここは自治領内である。


 エルフリーデ()は達樹と交渉の場につきたかったが、達樹が拒否。せめて地上に残ろうと思ったが、それも千紘たちが止めた。

 無力だ、今回ほどそれを痛感したことはない。


 何故、達樹はエルフリーデ(自分)たちを信じないのだろう。

 何故、頼ってくれないのだろう。


――姉さん……――

 心配する心話を送ってくるエルフリーデ()を無視した。

「今回はかなり厄介な交渉相手なんだよ。交渉カードの切り方は、重見の爺さんに色々教わったはずだ。

 あいつ、交渉で負けんのってほとんどないんだ。大抵初見で相手の本心を見抜ける。そこでどういうカードの切り方をすれば勝てるっていうのが分かる。もしくは達樹自身が相手と交渉する価値がないって判断して切っちまうんだ。……いい例があの愚王だな」

 翠が誰に言うでもなく話し始めた。

「ファルス神官長も仰ってました。陛下を怒らせた挙句、交渉を打ち切ったと」

「わたくしも存じ上げておりますわ。その足でわたくしをパトロンにすると仰ってくださったんですもの」

 神官とエリザベスが放った言葉に、エルフリーデ()はただ驚くしかなかった。

「エルフリーデさんは初耳かもしれないけど、本当のこと。今回の交渉はおそらく五分以下で達樹の言い分が通らない。……最悪相手側に殺されてもおかしくない。だから余計な連中を下げて、自分ひとりの交渉に臨んだんだ。

 おそらく、ある程度の時間が経ったら千紘たちは戻ってくる。そして、その時点で達樹を見捨てて他の場所へ移動するはずだ」

 馬鹿な……あれほど死んでは困ると言った筈だ。

「そういう奴なんだよ。……エルフリーデさん、達樹が心配だからって俺らに嫉妬しないで欲しいな。ってか、俺たちはエルフリーデさんに感謝してるよ」

「ほほほほ本当ですか?」

「エリ、お前には感謝できない。千紘の苦労増やしてっだろ」

「すすすす翠さん、ひひひひ酷いですぅぅぅぅ!!」

「スイ殿、我々はどのようにすれば……」

「とりあえず、交渉の件は内密に。あとは無事に戻ってくることを信じるしかない」


 その言葉を聞き、数人の神官と自警団の面々が下がっていった。

 それに続いて他の人間も己の職務に戻っていく。



「……達樹の読みどおりだな。エリ、千紘に連絡だけ入れといて」

 翠の言葉を受けたエルフリーデ()が空間を繋いでいた。そして翠は不思議な箱を取り出して何かをしていた。

「あんまり変わらないんですねぇ」

「俺はガラケーだからな」

 意味が分からない話を二人がしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ