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「魔王様」の定義  作者: 神無 乃愛
「魔王様」の定義 本編

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37/91

交渉します!

「人体とサソリが合わさった化け物って事は、おそらくギルタブルルだろうな」

「ギルタブルル?」

「あっちの世界だと古代バビロニアに伝わる門番だ。守るところは色々、王宮や街だったり冥府の門番ともされてるな。無理に入ろうとしない限り、攻撃してこない。下手にやりあうな」

 翠が説明をしてきた。好都合、達樹の中ではそう結論付けていた。

「どどどどどうしましょう!」

「エリさん、黙ってて。今計画練ってる最中なんだから」

 相手に主と認めてもらうのがベストだろう。さて、どうしてものか。

 降りる人物は達樹、千紘、翠、エリザベス、シス、エリ、エルフリーデともう一人の神官だ。この中で問題なのはエリだろう。余計なことを言わないとも限らない。

「相手を刺激しないでいこう。相手はただの魔物じゃない」

「……分かった。タツキに任せよう」

 不安げにシスが言った。



 武器の携帯はしない、それを相手に伝えておく。実際、持っていってもあまり意味がない。

「あなたはここの守りですか?」

「如何にも」

「私たちはあの土地と共に休める地を捜しています」

「では何故、他のオアシスでは無理なのだ? そなたらはずっと動いておった」

 やはり見ていたか。ならば都合はいい。

「安住の地を捜すのに、時間をかけるでしょう」

「では何故、降りてきた?」

「簡単です。あなたが攻撃してきた。つまり、守りをしっかりなさっていらっしゃるからです」

 その言葉に交渉役のギルタブルルが不服そうな顔をした。

「我らはこの地を守るモノ。なれば、不審なものに対してけん制をするのは当然のこと」

「えぇ。だから、あなた方と交渉の余地があると思ったんです」

「言葉が通じんな」

「いえ。あなた方は私の言葉を理解しよう(、、、、、)としていない(、、、、、、)だけです」

 やはりその言葉には反応したか。

「守ろうとしない愚かなところに私は交渉しようと思いませんよ」

「我らを試しておるのか?」

「試していません。名乗り忘れました。私は重見 達樹。異世界人です」

「俺は真壁 千紘です。同じく異世界人です」

「同じく、高峰 翠です」

「シスリード=ファルス。神官をしております。こちらは私の供」

「……何故、混血がおる?」

 エリたちが名乗る前にギルタブルルは言った。

「私にとって、混血だろうが、魔族だろうが関係ないからでしょうか。共にいて、楽しければそれでいいかと思います」

「それは理想論だ」

「そんなことくらい、分かってますよ。異世界にだって、沢山差別はありますし」

 意外そうな顔でギルタブルルはこちらを見てきた。

「理想郷から来たと思いましたか? そんなところがあるなら、私だって見てみたいものです。誰しも、そういった他者を排除する感情はあると思いますよ」

 その言葉にエリがびくぅぅぅっと驚いていたが、達樹は無視した。

「理想郷なんてこの世にはありません。理想を現実にするために動いたところで、何人支持してくれるでしょう。支持するモノと同じくらい排除するモノもいます」

「我らを恐ろしいと思わぬのか?」

「あちらの世界の知識では、あなたは『守り人』だと聞いています。こちらの世界ではどうかは分かりませんが。それでも、あなたは私を『脅威』と感じた。それだけで充分です」

「どういう意味だ?」

「あなた方を味方に引き入れれば心強く、敵に回せば我々の存在自体が危ぶまれる、それだけです」

 正直、人間の嫉妬とかの方が怖い。

「なれば、これを飲め。話はそのあと」

「飲むのは私だけでいいでしょうか?」

「何故?」

「私一人、魔法耐性がない」

 魔法耐性がないという事実は、達樹にとって「切り札」の一つだ。

「では、『庇護者』は?」

「私です」

 シスがすぐさま名乗り出た。


 しばらく、両者に沈黙がよぎった。


「……とするならば、これを飲むと二人に影響が出るというわけだな」

 ギルタブルルはシスを見ながら呟いた。

「早い話がそうです。ですが、正直に言えば私は、タツキにそれを飲んで欲しくない」

「理由を聞こうか」

「タツキが今回移動を計画・立案した張本人で、方法の細部まで知っているのはたった一人、タツキだけだからです。勿論、タツキに倒れられては、我々はここから移動する術もなくなり、皆死に絶えるでしょう」

 そこまで聞くと、ギルタブルルは達樹のほうを見た。

「それはまことか?」

今回(、、)の交渉に嘘は使いません。全て事実です。嘘をつくなら、別の人間に遠隔で交渉させます」

 これだけは自信を持っていえる。

「そなたは策士か」

「よく言われます」

「なれば、今すぐ飲め」

 おそらく、これは毒だろう。

 飲んだとしても、別に不都合はない。死期が早まるならそれもまた受け入れるだけだ。


 皆が止める中、達樹はギルタブルルから杯をもらい、臆することなくそれ(、、)を飲んだ。


「……満足、ですか? 誇り高き、守りのギルタブルルよ」

 そこで、達樹の意識は途切れた。


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