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「魔王様」の定義  作者: 神無 乃愛
「魔王様」の定義 本編
36/91

何とか目的地を見つけられました

 浮いた、動いたと歓声をあげ、はしゃぎ回る子供たちと、驚き、何かに備えようとする大人たち。それを横目で見ながら達樹は移動軸を固定していく。

 まずは魔王領と人間領の間にある砂漠へ向かう。

 前回歩きの旅のときはここを通らないように考慮していた。

 理由はいくつかあり、一つは達樹の身体のため、もう一つは、人間が住む領域ではないということだ。

 今回ばかりはそうもいっていられない。何せ、未開の土地にこの自治領を根付かせるのだ。

「行ったら、オアシスの主に挨拶しなきゃなぁ……」

 新参者が行くのだ。菓子折りとまではいかなくとも、挨拶は必要だろう。

「翠兄、千夏姉、砂漠の魔物って聞くとなにを思い浮かべる?」

「色々いるけど? 有名どころだとマミーとか?」

「あとはロック鳥、パズズ、バツ、ラミア。意外なところでトウテツとかな」

「バジリスクとリザードマンも入れないと」

 そこまで言われてもどうしようもないと思ったのは、どうやら達樹だけではないらしい。千紘やシスまで呆れた顔をしていた。

「……もういいです。ありがとう。で、その中で砂漠、もしくはオアシスを守っているものと言ったら?」

「オアシスとかじゃなく、『守り』っていう意味でなら、スフィンクスとギルタブルルだろうな。スフィンクスは有名だろ?」

「なぞなぞ……だっけ?」

 達樹のあやふやな答えに、翠と千夏はにっこり笑って頷いた。

「それだけじゃないでしょ? 何考えてんの?」

「どうせ行くなら『守り』の方がいる砂漠に行きたいと思っただけ。その方が恩恵にあずかりやすいし。ただ、いきなり戦闘になると、オアシスの恩恵がなくなっちゃいそうだから、穏便にすまそうななぁって」

「あんたが、『穏便に済ます』!? 天変地異の前触れ!?」

 周囲に他の住民がいるにもかかわらず、千夏は大きな声をあげた。

「人聞き悪いよ、千夏姉。俺は今までだってなるべく穏便に済ませてるよ」

「どこがだ」

 そう言ってきたのはシスだった。全員酷いと思ったが、「自業自得」と満場一致で言われてしまった。

 どうやら自治領に住む人々にもその話は伝わっているらしく、笑って終わった人が多数だった。「聖女様をこのように扱うなど……」と怒る住民もいなくはなかったが、他に方法があったのか、となれば誰一人答えられずにいた。

「ちなみに、他に方法ってなかったの?」

「あることはあったけど?」

 千佳の問いに達樹はあっさり答えた。

「一番簡単なのは、住民と聖女様を見捨てることかな? あとはどちらかを見捨てる方法とかね」

「いきなりそういうこと言わないの」

「せっかくエルフリーデさんが提案してくれたんだし、移動するものの大きさを大きくしてみようと思っただけだよ」

「大きくなりすぎだ」

 シスが笑って入ってきた。

「……シス、神殿の関係者と自警団に裏切り者がいる」

「だろうね。君の動きからしてそうだと思っていたよ。で、誰だい?」

「まだ分からない。その前に住む場所とそこの主の許可を取ろうと思ってる。とりあえず酒ってあったっけ」

「……ある」

「俺と千紘兄、シスとエリザベスさんで行くことにする。……二人はどうしようかなぁ」

 エリとエルフリーデ、この二人を連れて行くか、行かないかが問題なのだ。

「連れて行ったほうがいいと思う。裏切り者がグレス聖王国に連れて行ってしまうと、後々たいへ……」

「別に大変じゃないよ。その方が楽」

 楽な理由を言えば、シスはため息をついた。

「穏便に済ませる気はないんだね」

 穏便に済ませようとするからこそ、そういう計画になると言っても誰も信じやしない。

「信じろというほうが無理だぞ」

 とどめは千紘だった。



 一昼夜、そこそこ速いスピードで動かしていたら何とか目的地近くまで来ることが出来た。

 ここからはゆっくりと場所を探していくのだ。


 実はこの砂漠、最初に行こうとしていた砂漠とは違うところなのだ。

 ただ、達樹に言わせれば「嘘は言っていない」ということになる。


 何せ、「魔界領と人間領の間の砂漠」という点では同じなのだ。

 未開の地なので、当然地図にも載っていない。

 魔界領と人間領に伝承が数点あるだけだ。


 当然、知っている砂漠に行って欲しい連中はこのことを隠す。ところがどっこい、達樹は隠されたものを暴くのがかなり得意である。

 そしてこの地図は、アリーが描いたもの。諸国をたった一人で旅してきたアリーは地図を大まかに描くことだけが、心休まる一時だったようだ。

「もうそろそろかな?」

 砂漠の中にある、大きなオアシス。

 斥候を立てれば大体のことは分かる。ここも駄目、あれも駄目。そうやっているうちに、あっという間に日暮れになった。

「まいったなぁ……」

 希望に沿うようなオアシスがない。


 仕方なく、もう少し進もうとした時だった。


 ひゅん。

 どうやら矢が飛んできたらしい。

「じじじじ人体と、ささささサソリが合わさった化け物が!!」

 ちょうど見回りに行っていた自警団が報告に来た。

「いい場所見つけた」

 達樹は少数精鋭で一度大地に降りる決心をつけた。


矛盾部分を訂正しました。

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