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「魔王様」の定義  作者: 神無 乃愛
「魔王様」の定義 本編

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19/91

図式にしましたが、分かりません

 エリに関する話なので、結局哉斗も一緒にということになった。そして、大きいほうはエリ、小さい方をエルフリーデと名前を分けることで一致した。

「とりあえず、俺たちから話をさせてもらう」

 最初に切り出したのは千紘だった。

「俺は周囲からも、エリは哉斗の親戚だと聞いていた。日本人離れした顔立ちとかは、旦那が外国籍だと説明を受けた。一応体調とか病気を持っていないかを調べるにあたって、俺の父親が主治医をしてた」

「『主治医』とは何ですか?」

「疾患の治療方針全般に対して主たる責任を有する医師のことを、一般的に『主治医』と呼ぶんだが、エリの場合は身体や健康を任せるって意味での『主治医』だった」

 神官の問いに、千紘はあっさりと答えていた。

「エリは二年位前まで、あちらの世界にいた。それは間違いじゃない。しかも、二十年近くいたんだ。千紘は一緒に学校に通ったよな?」

「通った。中高は同じクラスだった。大学は学部が違えど同じだったな」

 中高とは? 大学とは? となっている神官たちに達樹は、「勉学に勤しむところ」とだけ答えておいた。

「で、あちらの年数で二年位前か……『残してきた家族が気になります』っていなくなった」

「そのあたりは、大体分かったからもう良いよ。……エリさんにそのあたり聞こうとしても無駄だと思うし。そういや、哉斗兄、エリさんが言ってた『供の人』に見覚えある?」

「ない。話しっぷりだと数年はあっちにいたはずなんだが、一緒に暮らしていた俺ですら見たことが無い」

「おかしいですね……」

 神官の言う通り、おかしいのだ。あまりにも矛盾点が多すぎる。

「天界と魔界は想像上の世界だと思っておりました」

 もう一人の神官が言う。……ちょっと待て。「想像上」? では「異世界」は?

「異世界の方が身近ですよ。ファルス神官長がされたように、こちらに呼ぶ方法もありますし、『狭間』からいらっしゃる時もありますから」

「天界、魔界は?」

「神殿の教えの中にあるだけです。『天より舞い降りし御使い、砂漠のほとりに道を築かん。この世の総てを正しき道に導くものなり。地の奥底より舞い出る御使い、山のふもとに道を築かん。この世の総てを悪しき道に導くものなり』ということです」

「ちょっとおかしくないかな? 普通、山のふもとなら、悪いところに繋がらないはずでしょ?」

 神官の口上に、思わず達樹は口を挟んだ。

「達樹、違う。どちらも迷えばあっという間に命を失う。おそらく、『砂漠のほとり』というのはオアシスのことだと思う。迷った時にオアシスで喉を潤せれば、生き返ったと思うだろ? で、逆に『山のふもと』だが、おそらくはクレパスか、崖下だと思う。あっという間に死んでしまう」

「そういう見方も出来るのか……」

 翠の仮説に達樹はひとりごちた。

「我々もそういた見解で見ております。ですので、エリ様が仰ったように天界と魔界があったということが驚きなんです」

 多種族との混血が「忌み子」とされているのと同じように、エリたちも忌嫌われてきたことだろう。それ故、二人の絆は強かったのかもしれない。

「エリに天界と魔界のことなんざ、聞けないな。魔界のことすらよく分かっていないだろ」

 翠の言う通りだ。だからこそ、まずは時間軸をはっきりさせるべきだとまとまった。


 エリとエルフリーデの母親が天界より誘拐される?

        ↓

 エリとエルフリーデが産まれる。ここで、二人の母親はどうなった? と疑問に思ったが、一度忘れておくことにした。

        ↓

 二人が十歳くらいの時にエルフリーデが自分の声を犠牲にエリを異世界に逃がす。ことの時、供もいた模様。

        ↓エリ、時間を捻じ曲げて帰ってくる。

        ↓この時、エリの年齢のみ二十後半になっている。

        ↓           ↑      ↓

 異世界で翔たちに世話になる。     ↑      ↓

        ↓           ↑      ↓

 供のものだけ帰ってくる?       ↑      ↓

        ↓           ↑      ↓

 二十年近く過ごした異世界から帰ってくる決意をする。 ↓

        ↓                  ↓

 達樹たちから見れば二年、エリからしてみれば今度は十年近く経過。

 達樹召喚。そのあと千紘たち全員召喚。

        ↓

 聖グレス王国にて「聖女」エルフリーデを達樹たちが保護。

        ↓

 エルフリーデがエリ双子だと分かり、現在に至る。



 達樹たちは日本語でこれを書き、神官たちは、こちらの言葉で同じ図式を書いている。

「……図式にしても分からん」

 翠の言葉はもっともだろう。誰一人分からない。

「何とか分かるようにしたいんだけどね……」

 これではエリに対しての尋問すら出来ない。


 男六人、頭を抱えるものの、誰一人正解を出せない。


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