とある女性の独白、そして次は尋問です
矛盾点を訂正しました。
えぇっとですねぇ、私たちは二人で「エルフリーデ」なんです。ハイ。天界の姫と魔界の皇子の子供なんです。
簡単に説明しちゃいますとね、この世界って天界、下界、魔界の三つの世界に分かれてます。あちらの世界とはまったく違いますよね。
え? 私の母に食いつかないでくださいよ。神官さん。私だってよく分かりませんから。物心ついたときには母はいませんでしたし、父だって「忌み子」だから近寄りませんでしたし。
ただ、お世話してくれる方からちょっと聞いた話だと、父が母を攫ってきて、産ませたそうです。で、産まれたのは私たち双子ってわけです。
ふふふふ双子、ですよぉぉぉ。
年齢が合わないとかは、あとで説明しますから。
顔は昔から一緒でした。色が違うだけです。見て分かるとおり、私は父の力を強く受け継ぎました。姉は母の力を強く受け継ぎ……えぇ。私が妹です。え? 逆? 酷いですね。達樹さんは。ごごごごご御免なさい。嘘です。達樹さんの仰るとおりです。
もう、年齢が合わないところを先に説明します。姉が声を失ったことに起因するんですが、姉の声を代償に私は供をひとり連れて異世界に飛びました。そこでお会いしたのが、哉斗さんのお父さん、翔さんと哉斗さんのお祖父さんです。
話を聞いて、お二人は快く私たちを受け入れてくれたんです。そして、その間に供のものから翔さんは色々お話を聞いて、納得されたみたいでした。
それで、「身元不明」という形で私たちを保護してくれたんです。
子供ながらに、私はあの場所を楽園だと思いましたよ。だって、ご飯は普通に出てくるし、衣服にも困りませんでした。それに、迫害されませんでしたし。
翔さんと、供のものの間にどんな約束があったかは分かりませんけど、翔さんにこちらの国の文字や魔法を教えてました。ある程度経ったら、いなくなっちゃいましたけど。
姉のことも心配でしたけど、十歳くらいの私に何が出来るって言うんですか。大人しく「翔さんの親戚」として振舞ってましたから、そのあたりは達樹さんたちのほうが詳しいですよね。
あ、二年? そうですか。私はある程度大きくなりましたし、魔法もどんと来いになったので、姉を助けるためにこちらに戻ってきたんです。天界の魔法を借りて、姉が寄越してくれた時間と同じ日時に指定したはずなんですが、ちょっとずれちゃいました。
そしたら、父にばれまして、姉を抱っこして私は逃げました。逃げた先は何故か天界で、「不浄」だからと下界に叩き落されてしまったんです。……翔さんがどうしてそれを知ってたのかは私だって分かりませんよっ。あのヒト、ほんと不思議なヒトですから。
話、戻します。
その……叩き落されたところで私たちに魔法で攻撃した、先代聖女様が亡くなっちゃって……、その拍子に私が姉の身体と融合しちゃって、神殿側で驚いたんです。だから、私たちを「聖女」にしたんですね。
まぁ、私は「闇」の力が強いですし、姉は「光」が強いです。だから、そのせいで私たちは魔法が使えなくなるわ、姉の身体ですから声は出ないわで、神殿に幽閉されちゃってたんです。
すすすすすすすみません。私、「清めの魔法」がなされるまで、意識がなかったんです。だから皆さんに気付きませんでした。……すみません。
エリはコーヒー代わりの飲み物を、聖女はジュースを飲みながらの激白会となっていた。
「それだけで、分かると思うの? エリさん」
「でででですからぁぁぁぁ……、私だって分かんないこと多いんですって」
「戻ってきてから、年月として何年くらい経ってるの?」
「そうですねぇ……。十年くらい、だと思います」
「あっちにいたのは大体二十年近く、で間違いないよね?」
「そうですねぇ……間違いなかったかと思いますけど」
エリの言葉を達樹たちはまとめていくしかない。このあがり性のエリでは、話がまとまらない。
「その計算だと、エリさんは四十近い年齢になってるはずだよね」
「そうなっちゃうんですかねぇ……」
「エリさん?」
はぐらかしているのか、本当に分からないのか、いきなりほのぼのと肯定するエリに達樹は苛立ちを覚えた。
「たたたたた達樹さん! 怒らないでくださいぃぃぃぃ!」
「あなたの心がけ次第だって言ってるでしょ? こちらに分かるように言わないあなたが悪い」
「わわわわわ私だって分からないものを、どどどどどどうやって説明ぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「エリ、達樹」
呆れたように哉斗が割って入ってきた。
「これじゃ、尋問にすらならん。一回中止。達樹はどうやってエリから真実を聞きだせるか一時間で考えろ」
「かかかかか哉斗さんまでぇぇぇぇ。わわ私に拒否権はぁぁぁぁぁ!!」
「あるわけ無いでしょ」
哉斗の言葉に怯えるエリに、達樹は軽く止めを刺しておく。まぁ、哉斗の言う「一時間」はおそらく、達樹に考えをまとめさせる為の口実でしかない。
「シスと千佳姉でエリたちを見張ってて。俺は他の方法考えるから。千紘兄と翠兄、それからそちらから神官さん二人くらい欲しいな」
神官たちに隠し事をしない、という面で絶対に神殿の人間を入れるようにしている。
 




