表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第壱線 いつか見たはずの光景

 本ばっかり読んでた人間が初めて書きました。すぐに完結する予定はありません。いけるとこまで書いていきます。


「そこを退いたらどうだ?魔女よ」


 銀の装束を身にまとい、フードを深々とかぶった男性らしき人物が問いかける。


「…嫌よ!」


「死神をこちらへ渡せ。」


 深い闇色をした――『魔女』と呼ばれる――ロングヘアーの少女は、さらに現れた銀装束の男をにらみつける。


「何だ?そいつをかばってるつもりか?魔女さんよぉ」


「当たり前でしょう!?私にはこの子しかいないの!」


 年は12歳ほどだろうか。少女は後ろを守るように右腕を横に突き出した。


「だがお前の両親を殺したのもまた、お前が今守ろうとしている『死神』だ」


「そんなの関係無いっ!」


 言いながらも前に突き出した少女の左手、そこから淡い赤色をした直径2mほどの魔法陣のようなものが浮かび上がる。


「黙って喰らえ!」


 魔法陣が完成し濃い光を放つ。瞬間、真っ赤な光が槍の形状に収束。左手の人差し指を相手に突きつけ放たれた2本の槍は銀装束の胸を正確に射抜くかと思われた。


 しかし、槍が胸に触れる寸前、銀装束の2人が動く。


「はっはっはぁ、まだそんな力を持っていたか魔女よ」


「あぁだけど無駄だったなぁ!」


 少女の展開していた円が弾けとび、8mもの間合いを銀装束の一人が一気につめる。


「残念だがここまでだぜ?」男は腰から一振りの短剣を抜き少女に突きつける、そして男は気付いた。


 少女の左目の色が深紅に染まっていることに。


「…っ!てめぇまさか『死神』と契約を…!?」


 『死神』と呼ばれた少年――少女よりもさらに幼い顔つきの――もまた左目を深紅に染めていた。


「ねぇ、おじさん」


 少女が銀装束が動きを止めた瞬間に“錬成”した小型の鎌を受け取り、少年はゆらりと歩き出す。


「俺たちをいじめないでよ…」


 そういいながらも少年の口元は笑っている。楽しんでいるかのように。


 離れたところにいたもう一人の銀装束が異変に気付いた、


「下がれ!アーツを使われたらどうにもならん!」


 ひひひ、と少年は嗤う。楽しんでいるのだ。


「…アクセル・アーツ」



 刹那、ビンの栓よろしく二つの頭が勢いよく宙を舞った。



「ほら、もう大丈夫だよ。」


 鎌に付いた血液を振り落としながら少年は少女に声を掛ける。


「ごめんね…ごめんね…――


 少女は両膝をついて少年を抱きしめた。


 ――私が弱いばっかりに…」


「いいよ全然、守らないといけないから。」


 しかし少年はまだ嗤っている、不気味に口角をあげながら


 ――少年は鎌を頭上高くに振り上げ、そして…




「やめろぉ!!」


  ◇ ◇ ◇


 今日は叫びながら目が覚めた、実に絶好調。


俺のベッドの足元で姉がキョトンとした表情で俺の足の裏を舐めている、ってちょっと待て!


「お、お姉さま…?何をしていらっしゃるので?」


 わかっちゃいるけど訊いてみる。


「ん?舐めてますけど?」何か?みたいな顔して動きを止めない姉。鳥肌まで絶好調だ。


「いやですね、あのそんなことは見ればわかるんですが、なぜにそんなことをしているのかなぁって思いまして…。」


 今まで経験したことの無い感触に何とか耐えながら言葉を紡ぐ。頭が真っ白になりかけているんだけど。頑張れ、俺。


「んーと、…怖い夢見てそうだったから……これしたら…違う夢になるかなーって…」


 お願いだから喋りながら舐めないでくれ…。唇の動きまで追加されて余計くすぐったくなる。


 余計駄目な夢見そうだし、ツッコミ所は多々あるにしても。



(…心配、してくれてるんだよなぁ)



「……ありがとう、姉ちゃん。」


 姉に教わったとおりに、相手の目を見ながら礼を言う。


「…ふふ、分かればよろしい」


 まだ眠そうだった目が、笑顔とともに明るくはじける。うーん、これを可愛いと表現するのか…?腰までのびた柔らかな黒髪を左肩に流しながら、俺の姉――霧谷零流(きりたにれいる)は立ち上がってベッドから降りる。


  140cmという低身長のおかげでさっきと目線の高さが変わってないが。こんなんでも一応姉です。ちなみに俺――霧谷零義(きりたにれいぎ)は 165cmだ。15歳にしてはまあまあ高いほうだと思うぞ?


「ほら、昨日の入学式サボったんだから今日くらい学校行きなさい。」


「うん、わかってるって。今日は寄るとこあるしな…」


「またミキのとこ?あなたも好きねぇ。もしかして巨乳に目覚めた?」


「そんなもんの為に行ってるんじゃないっての、ストレス発散だよ。」


 まだ動いていない頭に命じつつ体を起こす。


 頭いてー。



  ◇ ◇ ◇


 ――ペレネ派錬金術ミネルヴァ学園高等部。


 それが俺が今から行かなくちゃならん高校の名前だ。ペレネ派?錬金術?とまあ現代に馴染みのない単語が並んでると思うけど、意味は俺も知らない。


 なんでも、ペレネ派っていうとこが有能な錬金術師を育成するための高校なんだそうだ。


 といっても俺には何の関係もないってのが現状で、我が家では錬金術は“禁止されて”いる。おかげでそういう授業は一回も受けたことがないんだ。



 朝ごはんを食べ終えた俺は制服に着替える。校章が何かの鳥の翼をイメージしたもので、意外とお気に入り。


 ――ん?誰かに見られてる……ような気が…


(…気のせいか)



 階段を下りて玄関へ向かった俺は毎朝恒例の“アレ”をすべく姉を待つ。


「いってくるよー」


「はーいちょっと待ってー」


 キッチンのほうで声がするな、食器でも洗ってるんだろう。


 俺は、トッタッタッタっと小走りで来た姉と目線の高さを合わせ、姉は俺の顔のほうへと唇を近づける…


 薄ピンク色をした小さな唇は俺の口元へと近づき…


 ―通り越して耳元へと近づけられた。


「……よーしじゃあルール確認っ」


 頭と背中の後ろに手を回され、ちょうど抱きついてささやく姿勢になっている。もう慣れた。何も感じないぞ。本当だ。


「錬金術は?」


「使わない。」


「女の子には?」


「優しく紳士に。」


 ――くだらねぇ。と思うかも知れないけど破ったら絶命の危険性があるからな…


 とくに二つ目が難しいんだ、これ。


「はい、よろしい。」


 肩をポンっと叩かれ拘束(?)が解かれる。ちなみに日ごとにルール確認の内容は変わるけど、その全部を毎日守らないといけない。全部で何項目あったかなあ。


「じゃあ、いってくるよ。」


「いってらっしゃい。」


 俺が家のドアを閉めた瞬間、お隣さんの家のドアが開いて、出てきたそいつと目が合った。



  ◇ ◇ ◇


 俺は小学生のときここに引っ越してきた。んで、そのときから隣に住んでいたのが一つ下の女の子で、現在不機嫌な顔で「むうぅ…」とうなっているのがそいつだ。


 彼女の名前は神村ほのか。ほのかって漢字があったんだけどなんて書くかは忘れた。この前なんて書くのかと聞いてみたんだけど、とびっきりの笑顔で


『最低』


 とだけ言って教えてくれなかった。聞く位いいじゃないか、全く。


「それで神村?お前は一体何に怒ってるんだ?」


 どうせ怒りの矛先は俺なんだ。特に何もした覚えはないけど。


「昨日。」


 少し青みがかった黒髪のショートカット、左に流してある前髪の隙間からチラッとこちらを見ているのがわかる。聞いているか確認してるんだろう。


「うん。昨日?」


「…入学式。」


「あーあったねー。」


「…私も見に行った。」


 ん?中1と高1は全員出席だったけど、中3は出なくてもよかったはず……


(どういうことだ?)


 未だに理解できない俺を見かねてか、ほのかが立ち止まってこっちを向く。あ、ちょっと寝癖ついてるな。


「せっかく…!私が先生にお願いして…!上のほうのクラスにしてもらって…!他にも…!色々…!」


 ずんずんずんっとこっちに迫ってくる、これは完全にキレてるな……。


「零義来なかったでしょ!」


「う、うん悪かった、悪かったから落ち着け…!」


「いっつも正装しないから!何色か教えてくれないし!わざわざ何色貰ったのか見に行ったら!来てないし!」


 何もした覚えはなかったんだけど、何もしなかったのが悪かったらしい。こりゃ、ただの寝坊だなんて言えないな…。丸焼きにされてしまう。


「わ、わかった。よし、じゃあ今日教室でずっと術装のやつ着てるからさ放課後にでも会おう。」


「本当…?」


 上目遣いでこちらを見てくる。いつそんな高等技術をマスターしたんだ…?


 ニコッと笑って俺の右手首を掴んできた。おい、ちょっまった……



 …ジュウっと肉の焼ける音がした


 

「……!あっつっっ!!く無い…?」


 焼いた張本人は、ふふんっといった顔でこちらを見てくる。ドヤ顔うぜぇ。


「まあクラスの人に治してもらったら?その火傷。戒めにとっておくのもいいかもねー。」


「誰がこんな傷残すかっ」


 ベーっと小さく舌を出して逃げるほのか。あーいうとこが子供っぽいな。



(そうか高等部には全員術装が支給されるんだったか…)


 術装ってのは錬金術師が使う装備品のことだ。たぶん。


 たしか高校1年で支給されるのは防具のほうだけで、2年から武器である錬具(アーツウェポン)の所持が許されたはずだ。


 その防具の錬衣(アーツプロテクター)には、さっきほのかが言っていた色分けが施され、相手の実力が一目で分かるようになっている。


 ほのかは中学生ながら、その実力が認められ、最高ランクである紅い錬衣が与えられていたな。でも、おそらく俺は紫だ、もちろん最低ランクのな。



  ◇ ◇ ◇


 俺は将来、錬金術師になるつもりは無い。大学にいければそれでいいんだ。


 この学園に入った理由だって姉ちゃんが入るから、入試がないから、才能さえあればお金がかからないから。そんだけだ。



 ただ今日の夢を見て思った、本当にそれだけなのかと。


 あの夢が本当にあったことだとしたら…?


 あの『死神』が俺で『魔女』が姉ちゃんだとしたら?人を何人も殺していたのだとしたら?



 ――両親を殺したのは俺だったとしたら?



 俺は何も覚えていない。何も思い出せない。


 ――だから、


 この学園で、高校3年間で見つけてみせる。



 知らないままの自分は嫌だから



 そんなことを考えながら俺は校門をくぐった。



何か変な箇所があったらドンドン言って下さい。記号とか改行とか不慣れなもので読みにくいかと思われますので…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ