月影ラプソディ
姉のように慕っていた、大好きな人。
心から想っていた、大好きな人。
二人は俯き、私に言った。
『ごめん』
その一言で私の恋は終わりを告げた。
「……なんだろうなぁ……」
半月の下、私はぼんやりと呟いた。
一ヶ月前から二人は付き合っていたのだという。
二人とも、私が彼を好きなのを知っていて、だけどお互いに思いあっていて、だから付き合いだしたのだと。
辛かった。哀しくて悲しくて、苦しくて。
だけど、それよりも。
何よりも辛くて悲しくて苦しかったのは、私に話していた時の二人の今にも泣き出しそうな顔。
そんな顔をされたら、大好きな二人にそんな顔をされたら、私はもう何も言えなかった。
本当は、言いたい事がいっぱいあった。
彼女はずっと私が相談してて。違うよって言ってくれてて。なのに彼と付き合いだして。
正直、裏切られたんだなって思った部分はあった。
だけど、好きだから。二人が本当に本当に好きで。二人を好きなことを後悔したくなくて。
私は微笑んだ。彼を思っていた、本気の分の涙はやっぱりこぼれてしまったけれど。
それでも、なるたけ声を震わせないように。二人をこれ以上苦しめないように。
私はつとめて冷静な声で、明るく言ったのだ。
「幸せになってください」
そう、この事について、私は納得している。後悔はしていない。
だけど、それでも。
彼を好きだという思いが、気持ちが、消えた訳ではなくて。
声を上げてその場で泣き叫びたいほどに大きくなってしまった、彼への思い。
けして叶わないこの思いを、どうやって消せばいい?
「ねぇ」
呟く声は夜風に消える。
「いつか、私にも私だけの人が現れるかしら?」
聞く者のいない疑問に答える声はなく。
ただ、白い月だけが、私を優しく見つめている。
願わくばいつの夜にか、誰かと。
いつか出会う愛する二人で月を見上げられますように。
泣き叫ぶ恋心にそう呟いて、私はそっと目を閉じた。
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