Ⅷ 鬼ごっこ
リーガルの草原
「とりあえずお前は剣はそれっぽくなってきたが、波動が全然だめだから今日からは波動の強化を徹底していく」
「は~い」
しばらくの間はエリーの波動コントロールの強化をやっていくつもりだ。
「ひとまず氷を作れ」
「作ってどうするの?カキ氷?」
「アホか。作った氷の形状を持続させろ」
「は~い」
エリーは自分の目の前に氷を作り出し、それを凝視し始めた。
「ムゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・」
「・・・・・・・・」
エリーが何か唸りながら自分が作った氷を見つめているのを俺は見つめる。本人は相当集中しているのかも知れないが、さっきから氷はヒビが入ったり、欠けたり、曲がったり、伸びたり、縮んだりしている。
「あー、エリー?」
「ムムムム・・・・・」
「エリーさん?」
「話しかけないで、今集中してるんだから」
「そうかも知れないけどさ?」
「ムゥ・・・・」
エリーはまだ唸っている。
「流石にそれは無いんじゃないかな?」
俺は目の前の光景につい口出ししてしまう。
その目の前の光景というのは、氷が大きくなって何故か「ム」の字みたいな形になっている。しかも何気に綺麗だ。
「あぁぁ!!」
「気付いてなかったのかよ!」
とまぁ、こんなやり取りをしながらこの日は氷の形状の維持をさせた。エリーはただ単にやり方がわかっていなかっただけで、分かってしまえば朝飯前のようだった。
午前中にめちゃくちゃしごいたら午後からはすんなり出来ていた。
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3か月後
森の中で場に相応しくない氷の塊が地面に多数刺さっている
「てやぁ!!」
「よおし、もういっちょこい!!」
「あぁぁ!!」
「まだまだぁ!」
ズドン!
加減が出来なかったのか、強い衝撃が走る。
「あ!ごめんジーク!大丈夫!?」
「銀炎竜ナメんなよ?こら」
「もう!」
猫人族の少女エリーが駆け寄るが、心配するだけ損だったと言わんばかりに俺の肩を叩く。
「ハッハッハ!でも良くなったな。そろそろ次の段階に進むか」
「うん!やった!で、何するの?」
「ん?鬼ごっこ」
「え・・・」
予想通りの反応だ
俺も師匠に次の段階の修行は俺と鬼ごっこだ!なんて言われたときはナメてんのか!?なんてことを言いたくなったのを覚えてる。しかもそれを見透かされていた。
「まぁ、言いたいことは何となく分かる。けどそれは実際にやってからだ」
「・・・・わかった」
やっぱり不服そうだな、まぁいいだろ、やったら考えが180度変わる。
何故なら、ここから実戦に近い修行になるからだ。
「じゃ、波動も武器も使っていいから、とにかく俺に一撃でも当てろ。今回は俺は避けるだけだ。もちろんそれに波動は使わない」
「それだと簡単に当たってしまうんじゃないの?」
「だから銀炎竜ナメんなっての。今のお前じゃ簡単に当てれねぇよ」
「ムッカー!絶対に当ててやる!!」
「期待してるよ。そんじゃ、鬼ごっこ開始」
俺が鬼ごっこ開始の合図をしたのとほぼ同時にエリーが木剣を構え突っ込んできた。
まぁ、そう来るわな。
「甘いぞ?」
跳躍してエリーの頭上を飛び越え、森の中へと逃げる。
「え!?逃げないでよ!!」
「だから、鬼ごっこだってば。俺に一撃与えたくば、俺を見つけるんだな!」
そう言って俺は森の中へと姿を消し、隠れるようにエリーから距離を離した。
「ジーク脚はやっ!もう居ないし」
エリーは辺りの匂いを嗅ぎ始めた。
「こっちか・・・すぐに一撃当ててやる!」
この時、エリーはこの時すぐにでも一撃当てれると思っていた。何故ならコレは鬼ごっこだ、そしてジークは波動を使わない。そんなに難しいと思えないのだ。
「でも、そこが盲点だったりしちゃうんだよね」
俺は静かに師匠とやったこれと全く同じ修行のことを少し思い出していた。
「さぁて、俺は全力で逃げるからな?エリー。お前はどれくらいで俺に一撃与えれるか」
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「見つけたぁ!隠れても匂いで分かるんだからね!」
エリーが茂みを勢いよく掻き分けた。
「え?」
しかし、そこにジークの姿は無く、代わりに「バカタレ」と書かれた布があった。
「・・・・・」
ジークはエリーが鼻がきくことは知っている。そこで、自分の臭いを付けた布のトラップを仕掛けた。これに引っ掛かったら少なからず自分の力を過信している可能性がある為、反省させようと考えたのだが。
「絶対に見つけてやる!」
エリーが布を手に取った瞬間。
「キャァ!!」
網がエリーを捕らえ、そのままエリーは木に吊るされた。
「こんな単純なトラップに掛かってどうすんだよ」
「うぅぅ!」
「あ、トラップに掛かったら自力で脱出な?」
「えぇぇ!?」
「常に近くにパートナーが居るとは限らんだろうが、このバカチン」
エリーは唇を尖らせる。
「んま、そんな訳だから頑張って。因みにその網は刃物で簡単に切れるから」
最後に脱出のヒントを与えて俺は再び森の中へと走っていく。
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2時間後
エリーはとうとう波動を使い始めた。
今回の鬼ごっこは、波動と剣術の使い分けや状況に対する瞬間的な判断力と対応力を鍛えるのが目的だ。
あと、自分が今持てる力をどう駆使して獲物を追い詰め、どう仕留めるか、かな?
「氷の雨!」
降り注ぐ無数の氷の針。
俺はエリーに肉薄して逃れ、軽く一撃を与えてからその場から離脱した。
「あぁもう!いけると思ったのにぃ!」
「残念だっ・・・」
刹那、地面に異変を感じ、すぐに身を翻す。
ズガァ!!
地面から氷の棘が突きだした。
一丁前にトラップ式の術か、やるようになったもんだ。
「惜しかったな!だがまだまだ詰めが甘いよエリー殿?」
「ム~!」
この日は結局、エリーの攻撃は一度もかすめることもなく終わった。
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4日後
未だに俺に一撃も与えれていないエリー。今度は少し戦法を変えているみたいだ。
前までは正面から突っ込んで来て別の地点から波動を放ってきていた。今日は波動を目隠しに使い、更には積極的にトラップとしても活用してきた。
コイツ、つい最近までお粗末だったとは思えない程の波動の使いっぷりだな。
こんなことを考えながらエリーから距離をとる為にバックステップをした瞬間。
ゴン!
後頭部及び背中一面に強い衝撃を感じた。そしてその直後にひんやりとした感覚、ってか冷た!
確認すると氷の壁が出来ていた。・・・いつの間に?
「もらった!!」
「もらってない!」
エリーが木剣を横一文字に振るってきたので俺はしゃがんで回避する。
ガキッ!
木剣が氷の壁に食い込み、一時的に身動きがとれなくなった状態に陥るエリー。ちょっと慌ててますな。
俺はそんなエリーの横をすり抜け再び走って森の中へと隠れる。
「早くしないと、いつまでもモンスターと戦うことは出来ないぞ?」
と言い残しておいた。
俺は波動は使わない。
この鬼ごっこのクリアのポイントはココになる。
エリーは氷属性の波動、俺とは違い固形物だ、つまり波動で拘束することが簡単にできるということになる。俺の足元を氷付けにするなり、全身を凍らせるなりすれば身動きできなくなるから、ソコにペシ!っとやれば良いだけだ。
しかし、エリーはそれに気付いていない。教えてやることもできるが、自分が使う波動の利点を自分で見つけないと意味がない。
まぁ、頑張ってもらうしかないね。
ガガスッ!
「おおっと!」
目の前に氷の柱が2本突き刺さり、行く手を阻んだ。
ガッ! ドッ! ゴスッ!
次々と氷の柱が飛んできて俺を360度包囲したもようだ。
ここからなにをする気かな?
こうなると上から攻撃を仕掛けてくるしか・・・
そこまで考えたとき、俺を包囲している氷の柱の側面からトゲの様なものが出てきて、勢いよくそのトゲが射出された。
しかも全方位同時攻撃。
俺は反射的に跳躍して回避。しかし、それが裏目に出たようだ。
氷の柱の影から人影が飛び出してきた。エリーだ。
エリーは一直線に俺のところへ木剣を構え、飛んでくる。
「なるほど」
考えたな。
氷の柱からのトゲ射出攻撃。アレは陽動だったわけか。空中だったら避けることはできないからね。
でも。
「捌くことはできる」
木剣の側面に手を当て軌道を大きく反らすことで回避し、エリーの腕を掴んで落下の勢いを使って横に投げる。
再び俺は氷の柱に包囲されてるなかに着地した。
ピキ・・・
柱にヒビが入り倒れ始めた。包囲の中心、つまり俺に向かって。「あれ?・・・マジか!」
避けようとしたら動かなかった。
着地したときの体勢は右膝と右手を地面に着けての体勢だった。右手が凍りついて地面から離れない。恐らく、さっき空中でエリーを投げた時に仕掛けられたのだろう。
柱は形を変え、俺は肩から上を残して完全に氷付けになってしまった。
動けない・・・・
「これでは流石に動けないよね?」
エリーが嬉しそうに歩いてきた。
「動けないな」
エリーは俺の顔の前でしゃがみ、チョップした。
「・・・・鬼ごっこ、第1段階クリアだ」
「やったぁ!!」
エリーは嬉しそうにはしゃぐ。
「じゃあエリー退いてくれ、脱出するから」
「え?解いてあげるよ」
「ん?いいよ」
ビキ!ビキビキ!
「ちょっ!」
ドゴォ!
火柱が上がり、氷を破壊した。
「よし、明日は1日休みに・・・・って、どうした?」
エリーが暗い表情をしていた。
「自信なくした」
「はいぃ!?」
「だって!あんな簡単に破壊されたんだもん!結構硬くしてたのにぃ!」
エリーを慰める羽目になった・・・・




