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神器物語  作者: 米丸
第2章 二人の過去
18/23

Ⅴ 決着

半径約100メートルの範囲を渦巻く炎。

その中心部で剣と剣で鍔迫り合いをしている二つの影。そのうち一つはその渦巻く炎を作り出した人物。


俺、ジーク・アラウド


相手は非常にして非道の盗賊団の筆頭、ステイン。


俺はステインに対する怒りをそのまま体現したかのように荒々しく燃え上がる炎を操り、ステインに放つ。


「あっと、あぶねぇな」

「俺はお前を殺す気でいるんだ。当然だ」

「ホウ、お前みたいな奴ぁはじめてだぜ?」


ステインが剣を光らせた。


波動か?波動だろう、それにあの光り方には覚えがある。


バチ!


刹那、俺の眼前を電光が走った。


「雷属性か?」

「そうだ。しかしよく避けたな?」

「昔・・・てか2~3ヶ月前まで身近だったものでね」

「どういうことだ?まぁ、いい。感電死してもらうぜぇ!?」


ステインが剣に電撃を纏わせてそれを放ってきた。


これは波動剣術の基本ともいえるもの「雷刃らいじん」だ。

説明するとただ単に波動を剣に纏わせ、それを放つだけのもの。しかし、使用者によってはかなりの威力を発揮する。


「チィ!よく避けてられるな」


ステインがそう言葉を漏らした。

俺からすれば避けれないことはない攻撃速度と言える。


師匠の雷刃はこれとは比べ物にならない程の速度と威力を持っていた。思い出すだけでも冷や汗ものだ。


しかし、避けているだけでは何もできない。だったらこちらも仕掛ける!


「フッ!」


俺は一瞬の隙をみて雷刃と同じ波動剣術「炎刃えんじん」を繰り出す。


「っとぉ・・・あぶねぇな」

「貴様が言えた口か?」


ステインの雷刃を炎神で相殺する。


「なっ!?」


言葉を漏らしたのは俺だった。

相殺しようとしたのだが失敗に終わった。弾き飛ばされたのだ、しかも3~4メートル吹き飛ばされた。


俺は対応しきれず体勢を崩し、立て直せず地面に落下という形で着地した。


・・・押し負けた?いや違う!

ステインは雷を纏った剣の陰にもう一振り剣、いや、短剣を忍ばせていた。

恐らく原因はあの短剣だろう。


「どうかしたか?」


ステインが再び剣に雷を纏わせ斬りかかってくる。迎え撃とうとしたとき俺の剣の炎が不自然に揺らいだ。


咄嗟に迎撃を止め、回避すると同時に今度はこっちから斬りかかる。


ガキィン!


「うわ!」


剣と剣がぶつかり合う音の数瞬後、俺の身体が再び吹き飛ばされた。


「どうしたよぉ?波動士のガキ。震えてるぜ?今更怖がってんの・・・うお!?」


ステインの頬を炎がかすめた。


「怖がる?違うね。お前に対する感情は恐怖なんかじゃない、お前はやりすぎた」

「なにをだ?」

「描人族の集落でやったこと。あれはひどい。お前は非道だ」

「あぁ?何言ってんだガキ。俺が今まで何をしてきたと思ってんだ?」


少し間を置いてステインが再び口を開く。


「強盗、強姦、強奪、虐殺、惨殺。俺らはとにかく奪って殺して好き放題してきた。それを今更非道だってぇ?寝言言ってんのか、お?。盗賊団だぜ?殺して何が悪い、奪って何が悪い?なぜ非道なんだ?」


「・・・そうか、それがお前たちの持論か?」

「あぁ、そうなるな」


「なるほどな、ご最もだ。とても理解しやすい。盗賊団なんだから殺して当たり前、奪って当たり前。そんな当たり前のことをして何故非道なのか?ってことだろ?」

「ガキの割には頭がまわんじゃねぇか」

「お前は今までどれだけの人を恐怖に陥れてきた?絶望を与えてきた?」

「覚えちゃいないね」


俺は拳に炎を灯す。


因果応報いんがおうほうって言葉知ってるか?」

「しらねぇな」

「教えてやるよこの言葉の意味を」


「ぐふぅ!!」


ステインに肉薄にて腹に叩き込む


「ぐっ!このガキ!なんだ、このスピードは!?」


炎を推進力に使っているため、普通ではありえない速度で肉薄していく。


「このぉ!」


再び俺を何かが吹き飛ばそうとする。しかし


「同じ手はもう飽きてんだよぉ!!」


俺はステインから放たれたそれを炎の爆風で吹き飛ばす。


「なに!?」


「それはその短剣から発生させられた風属性の波動だろ?」


俺はステインの短剣を聖剣で叩き割った。


「チッ!」


「終わらないぜ?因果応報の意味をまだ教えてないからな」

「笑わせんなよ?」

「ハッ!どっちが?」


ステインの剣を弾く。


「この言葉はな、和国の言葉でね」


腹を殴り、顎を蹴り上げる。


「かっ!あ”ぁ!!」


「己のやったことは、帰ってくるってことだ」


ステインが後ろへ跳躍して距離をとり、剣を上に掲げた。


雷光波らいこうは!」


「な!」


閃光が俺の視界を奪った。


雷光波は、雷の閃光を瞬間的に強く放つ目くらましの波動術だ。


迂闊だった、相手は盗賊だがそれ以前に雷属性の波動士。この程度のことは当然できるはずだった。

師匠にも雷属性の波動士は皆雷光波を使えると思えとボコられながら言われてたのに・・・


「くっ!どこだ!?」

「ここだぜ?」

「しまっ・・・ぐ!」


背後を取られ、背中に強烈な一撃が入った。


「お前はなぶり殺しだ」


視界が回復しない、これではまずい!


「オラオラどうしたぁ?視界が潰されたら何もできないのか?」

「ぐ・・・あぁぁ!!」


殴り、蹴り、投げ飛ばす。ステインは完全に俺で遊んでいる。


微かにステインの動きが見えた、視力が回復してきたようだ。微かにでも相手が見えればこっちのものだ。


ステインの右足の蹴りを受け止め、その蹴りの勢いを使って地面に叩きつける。


「んが!」

「次はこっちの番だ」

「生憎だがそれはかなわねぇぜ?」


バチ!


「くっ!またか!」


「同じ手にかかったなぁ!アァッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!」


バチ! バチ! バチ!


しかも今度は連続で閃光を放っている。閃光は弱いが視認できない。

閃光が止まったがその瞬間に攻撃が入ってきて、その後すぐに離れて再び閃光を放ち始める。


こっちは閃光で見えない、攻撃の瞬間に閃光は止むが本当に一瞬のため反撃はほとんど不可能。

だったらこっちだってやり返すしかない、目には目を、歯には歯を、目くらましには目くらましだ。


「炎柱!」


俺は数本の火柱を立てる。


「お?やけくそか?当たってねぇぜ?」


勿論、当てるのが目的ではない。俺の狙いはこの後に起こすこと。


「発破!」


ちょっとした詠唱と共に右拳を握りしめる。すると、火柱は爆発を起こす。


「ぬお!小賢しい真似をしてくれるなクソガキ!しかし残念だ、不意を付いたかもしれんが結局俺は爆発に巻き込まれてないぜ?」


よし成功だ。

今の状況を説明すると、さっきの爆発の影響で煙が辺り一面を覆っている。つまり、煙で視界を奪ったという事になる。


「余計に自分の視界を悪くしてんじゃねぇのか?」


バチ!


そこか


電気特融の音と共に立ち込める煙の奥にうっすらと浮かび上がった光でステインの位置を見つけ出し、そこに向かって火球を放つ。


ボゴォ!


「なに!?」


作戦は成功だ。


バチ! バチ!


無駄だ、ステインは完全に俺の策にはまってしまっている。


雷光波を放っても煙が妨げになってしまい俺には届かない。逆に雷光波を放てば放つほど、ステインは俺に自分の居場所を教えてしまうことになる。

ちなみにこれは当たり前の話だが煙が晴れれば終わりだ。しかし俺はその前に決着をつける。


ステインに肉薄して不意打ちをかける。

背後から蹴り飛ばし、腹を殴り、背負い投げで決める。


「ぐ!・・・・この煙か」

「あぁ、おかげでアンタを捕えることが出来たよ」

「・・・捕えるだ?」

「俺が受けた依頼だよ」

「チッ!だが、ここで捕まるつもりはない」


バチチィ!


「!」


「つぇあぁ!!」


ステインの身体から大量の電撃が激しく、けたたましく放たれた。

俺はそれを交わそうとしたが一瞬間に合わず、そのもろに電撃を喰らった。


「っつ!・・・大放電だいほうでんか!」

「・・・はぁ、はぁ。ここでこんなに気力を消耗する羽目になるとはな。だがお前は痺れて動けないだろう?お前を殺してトンズラこくとしよう」


・・・俺が痺れてる?


何を言っている?


俺は雷属性の攻撃を何十、何百・・・いや、もしかしたらそれ以上喰らっているかもしれない。

そんな俺がこの程度の電撃で痺れる?


「・・・なめんなよ?」

「あ?・・・って動けんのかよ!!」

「当たり前だ・・・師匠の電撃はもっとシビレたぞ」


再びステインに肉薄しながら言葉を続ける。


「こんなショボイ電撃で麻痺するほど師匠の電撃を喰らった覚えなど」


「い”!!」


「ないわぁ!!!!!」


「ぶがぁ!」


拳に炎を灯し、ステインの脳天から拳を叩きつける。

ステインはその勢いで地面にも叩きつけられた。


師匠の電撃に比べ、かなり弱いステインの電撃、そんな電撃で痺れて動けないとか片腹痛いわ!てことで若干イラつき、結構な渾身の一撃を叩き込んだし。


「ぐぅ・・・動けるたぁ驚きだ」



ステインもこの一撃が中々重かったらしく、ふらついている。


「決着をつける」


聖剣を両手持ちに構え、深く息を吐く。

体の無駄な力を抜いて、姿勢を前めにとる。再び息を吸い。


「フッ!」


短く、大きく息を吐くのと同時に足に炎を灯し、急加速して一閃。


「な・・・ぐ!」


ステインはギリギリでそれを防ぐ。


しかしこの動きはあくまでも囮。ステインの剣と俺の剣がぶつかるのとほぼ同時に俺は剣を手放す。

それによってステインにかかるはずの抵抗の力がなくなり、ステイはバランスを崩す。

体勢が崩れたの隙に後ろへと回り込み首筋に向け肘打ちを決める。


「か・・・あ!」


ステインはそのまま崩れ落ちる。


「・・・危なかった」


いや、マジで

殺すつもりでいたが、依頼の内容をうっかり忘れていた。


ステインは殺すのではなく、生かして捕まえて来い だった。

その他の盗賊団のメンバーは生死問わずだった。


危ない危ない。


俺はそんなことを思い自分の感情のコントロールが出来てない事を反省しながらステインの身体をロープでグルグル巻きに縛り上げ、完全に拘束したのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




グルグル巻きにしたステインを引きずりながら村へ戻ると、見覚えのある装飾を施された馬車が止まっていた。


ってか王国の憲兵のマークの馬車だ。


村長と何やら話をしている様子。


「あのう、どうかされたんですか?」

「ん?いやぁ、波動士の少年が一人でステイン率いる盗賊団の所へ向かったとここの村長から通達が来てね。ステインの身柄、もしくはその波動士の少年の遺体を引き取るために来たんだ」


なんだよそれ・・・


「あ~ステインはコイツです。そしてその波動士の少年は俺です」

「そうかそうか。・・・・・・・えぇ!?」


え?


「あぁ・・・いや・・・すまん。ごく自然な流れだったので驚いてしまっただけだ」

「そ、そうですか」

「して、その・・・・ミノムシみたいにグルグル巻きにされているのが?」

「ステインです」


ステインを引き渡す。


「波動士殿、ステインの身柄確保の協力ありがとうございました」

「いえ、仕事ですので」

「それでは、我々はこれで・・・あ、一緒に乗っていくか?」

「いえ、この付近でまだやり終えてないことがあるので」

「そうか、どのくらいここに居るつもりかな?」

「ん~後二日ほど」

「分かった。では報告は二週間後でいいか?」

「はい」

「ウム、では」


憲兵と別れを告げて見送る。


さ~て、もうひと仕事。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




描人族の集落の場所へ再び足を運んだ。理由は勿論、ここでステイン盗賊団の犠牲になった者達への報告だ。


「ステインは捕まりました。おそらく死刑か終身刑は確実です。奴は死ぬまで牢獄の中で自分がやってきた罪を後悔しながら過ごしていくことでしょう」


集落民の遺体を埋めた墓の前でそう伝える。


そしてエリーの両親の墓の所へ向くといつの間にかエリーがいた。


「!!い、いつの間に?」

「村に戻ってから」

「・・・ずっといたのか?」

「うん」


俺はエリーに何も言えず、エリーの両親の墓の前でさっきと同じように報告する。


「グス・・・」


ん?


「お父さん、お母さん。あのすていんって人は捕まったって。・・・・お父さんとお母さんが生きていてくれたら一緒に喜べたのかな?・・・・私は・・・グス・・・一人・・・どこに行けばいいの?どうすればいいの?」


・・・・・・・・・・


エリーのその姿を見てあの時の師匠の姿が脳裏に浮かんだ。家族や友人を失った時、絶望した時に、とても暖かく、とても柔らかく、とても優しい笑顔で手を差し伸べてくれた師匠のあの姿が。


俺にも同じことができるのか?


「・・・・俺と来るか?」


手を差し出して言う。


「?」

「俺の所に来い、これからは俺がお前の家族になろう。もう、お前を孤独にはさせない」

「・・・家族?」

「そうだ」

「・・・・・・うん・・・家族・・・なる」

「俺はジーク、よろしくな」

「う、うぅ・・・・うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」


エリーは大粒の涙を流し大声で泣いた。


この涙の理由はエリーにしか分からない、いや、もしかしたらエリー本人にも分からないのかもしれない。

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