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神器物語  作者: 米丸
第2章 二人の過去
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Ⅲ 惨状

「じゃぁ、この子が起きたらひとまずは話を聞くってことでいいですか?」

「うんむ、それが一番じゃろうな」

「その上でステインとその盗賊団が襲ったとなればすぐにでもこの子が住んでいた集落へ行って、手がかりを探します」

「たのんだぞ」


俺とこのセイン村の村長で話し合っていた。


あの後俺はすぐに寝てしまっていたため、現在は朝になっている。


一向に起きる気配のない獣人族のこの女の子にいったい何があったのか、そしてこの子はいったい何を見たのか。それを知らない限り俺は動くことができない。何故なら、本当にステインという男がやったのかが分からないからだ。それでもし根拠もなくステインの捜索を始めて、実は違うやつらがやっていて空振りでした、では洒落にならない。


「ん・・・んん」


ん?


「・・・・・んむぅ・・・」



「・・・ん・・・・?」


起きた。


意外と起きたな、誰だよさっき一向に起きる気配がないとか言ったやつ





・・・俺だよ!




いや、まぁ冗談は置いておき。


「大丈夫か?」


「ひっ!!!」


ええぇぇぇぇぇぇ!!?・・・・・・


声かけただけで怖がられた・・・・


「い・・・いや・・・・」


「あ、いや。お、俺は何もしないよ?」


「こ、こないで・・・」


だめだこりゃ、完全に怯えてる。この行動から察するに、モンスターに襲われたわけではあるまい。おそらく人に襲われた。モンスターに襲われたのに人に対してここまで怯える事なんてまずないからな。むしろ逆に安心して泣くなり、思い出して恐怖して泣くなり、悲しくなって泣くなり・・・・


泣くばっかりだな・・・


とにかく、人に対してここまで過剰に怯えたりはしない。


「・・・・・・・あ」


俺はあることを思い出し、腰のポーチに手を伸ばす。


「お、あったあった。これ食べな。少しは落ち着くよ」


俺が取り出したものはハーブの実という木の実だ。この実は食べた者の精神をリラックスさせる効果がある。昨日、何故か採取してた。ハーブの葉もリラックス効果があるので一緒にとってきた。


「・・・・・」


食べようとしない。


「別に毒があるわけじゃない。ほら」


一つとって俺が実際に食べてみせる。そうすることで相手もこれが本当に食べられるものなんだと判断できる。


「な?悪いものじゃない」


ぐぅ~


「ほら、腹もへってるんだろ?」

「・・・・・」


獣人の女の子はハーブの実をとって一口食べた。


「おいしい・・・」


「村長さん、キッチン借りてもいいですか?」


いつの間にか部屋の外に出ていた村長に尋ねる。


「ん?借りてどうするんじゃい?」

「何か作って空腹を満たそうかと。ついでにあの子にも何か作ってあげようかな?って」

「・・・なるほどの。いいぞい」

「じゃぁ、まずは肉類の調達に行ってきます」

「食材は家にあるものをつかって良いぞい」

「本当ですか?ありがとうございます」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



しばらくして俺が作ってきたのはクリームシチュー。

両手にそのシチューが盛られた皿を二つ、一つは俺の分。


肉はカラシカという草食モンスターの肉を使った。カラシカはどこにでもいるような草食モンスターで、頭からは枝分かれした角が生えていてそれが特長である。家畜としても食肉としても馴染み深いモンスターといえる。オスは気性が荒い固体も存在する。気性が荒いオスカラシカは長生きしている証拠だとかなんとか。


話がそれた。

俺はそのシチューを女の子の前に差し出した。女の子は不思議そうに見つめる。


何気にかわいいな・・・・


「食べないと力でないよ?」


「・・・・・」


何かしら反応して欲しかった・・・・


まぁ、そんなに期待とかはしてなかったけど。


片方のシチューの皿を女の子が寝ているベッドの隣の机において、俺はシチューを食べ始める。


半分くらいまで食べたところで女の子はシチューに手を伸ばし、スプーンを取って一口。


「あつっ・・・・」

「ワリー、もう少し冷ましたがいいな」

「・・・・大丈夫」

「そう?」


今、密かに言葉交わした!よっしゃ!ハーブ効果じゃね?




「そういえば名前は?」

「・・・エリー」

「エリーか。俺はジークだ」

「じーく・・・」

「そ、ジーク・アラウド」


スプーンで掬ったシチューにふぅ~と息を吹きかけ少し冷まして口に入れる。


「おいしい」

「そうか、それはよかった」

「・・・・」


急に黙り込んだ。


え?なんで?なんかいけないこと言った?いや、そんなことは・・・でも、何気ない一言が相手を傷つけることも・・・・ってバカ!そんな要素さっきの言葉の中にあるわけがない!


「ぐす・・・」


マジであったのか!?


アタフタしていると泣きながら呟く


「おかあさん・・・・」


ズキ・・・


何かが痛む。


「なぁ、話・・・聞いてもいいかな?」


思い切って問いかける。エリーは涙目のまま首をかしげる。


「えっと、昨日何があったのかをさ」

「・・・・・・・」


うつむいた。もしかしたらこの子にとって辛すぎるものがあったのかも知れない。


「・・・・・みんな死んじゃった」


やがて口を開いた。


「盗賊がやってきて、カリスのおじさんも、ミサキや他の友達も、物知りおじさんも、お父さんもお母さんもみんな、みんな!・・・うっ!ひぐぅ・・・うわぁぁぁぁん!」


とうとう泣き出した。俺はそんなエリーの頭を撫でながらもう一つ質問した。


「君の集落を襲った盗賊団。そのリーダーの名前知らないか?」


知らない確率のほうが高い。


「・・・ステイン」


「え?」


「お父さんがステインって叫んでた」


確定だ。この子の集落を襲ったのはステイン率いる盗賊団。




食事が終わった。色々と話してこの子、エリーが集落まで案内してくれることになった。色々と大丈夫なのかと聞いたが大丈夫の一点張りだった。


強い子だ。



「村長さん」

「む?なんじゃい」

「あの子の集落を襲ったのはステインたちです」


エリーとの話が終わった後村長さんのところへ行きこれから出発することを伝える。


「波動士殿、お願いいたします」

「任せてください」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「なぁ、本当に大丈夫なのか?」


森の道なき道を歩きながら問いかけた。


「・・・・・うん」


本当だろうかと思いながらも俺の前を歩き、先導するエリーの背中を見た。やはり悲しげで、淋しげで、怖いのか、やや震えている。それでも足を止めない。それに流石は獣人族とでも言うべきか、草木が生い茂る森でよくもまぁこんなにスルスルと行けるもんだ。獣人族はこういった森とかの活動に最も適している種族だというのは本当らしい。てか、5~6歳にしか見えない子供が目の前で普通に枝から枝へ飛び移ったり、壁ジャンプまがいの事をしたりしてるのを見るのはちょいとばかし奇妙だ。


「場所分かるの?」

「・・・うん、なんとなくこっちの方にわたしの集落があるって分かる」


帰巣性とでも言うのだろうか。違うとは思うが恐らくそれに近いものだろう。


「この方角にまっすぐ行けばいいのか?」

「うん」

「じゃぁ、こっち来て」

「・・・?」


なにも言わず来てくれた。そして背中に乗せる。

まぁ、おんぶってやつだな。


「口閉じとけよ?舌噛むから」


俺はそういうと、姿勢を低くする。そのまま脚に炎を灯して脚部強化、更にその炎を推進力に跳躍、そして木から木へ飛び移りながらの高速移動。


景色が見る見る後ろへ流れていく。俺の背中でエリーが必死にしがみ付いていいるのが分かる。てか何かを訴えようとしている。しかし、無視して更に進む。


しばらくして木が少なくなった。速度を緩めて地面に脚をつける。


「ハァ、ハァ・・・・ケフッ!。たぶケフッ、もう少し行ったらケホッ!ケホッ!崖があると思う。そ・・・カフッ!・・・その崖の先にわたしの集落がケフン!あると思うっクシュン!」

「・・・わかった」


ムセながら、そして何故か最後はくしゃみでしめたエリーの言葉にうなずきながら更に進む。


鼻水が首筋に付いた気がするがスルーしよう。






・・・崖が本当にあった。


下を見ると、開けた箇所があり、よく見ると建物と思しきものが確認できた。


「降りようか」

「え?え?」


俺は助走をつけ、崖から勢いよく跳躍。


「いいぃぃぃぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


耳元ですんごい叫び声。鼓膜破れそうじゃ!!


脚に炎を灯して逆噴射。落下速度を緩めて、ストン・・・と極力背中のエリーに衝撃が伝わらないように着地。


前を見ると焼けた家がある。恐らくここがエリーの集落だった(・・・)ところだろう


「ここか?」

「・・・・・・・」


返事がない


「え?」


エリーは目を回して気絶していた。


俺はエリーを木陰に寝かせて調査を開始した。


集落の中に入って真っ先に目に入ったのは、猫人族の多数の死体。それもバラバラ死体だったり、焼死死体だったりする。他には陵辱を受けたのだろう。裸にされた状態で放置された女性の猫人の死体。それも一人や二人ではない。その体にまとわり付くように付着しているのは盗賊のものと思われるカピカピに干からびた白濁液。


「ひどいことをする・・・」


俺は陵辱を受けた女性の死体をまず一箇所に集めることにした。


「この人で最後か・・・」


水属性の波動石が埋め込まれた指輪(村長に借りた)を使い波動を発動、一人一人丁寧に洗い、干からびた白濁液を洗い流していく。体の表面だけでなく、口の中も洗う。せめて葬られる時くらいは綺麗にしてあげたい。今の俺の精一杯の謝罪と弔いの気持ちのつもりだ。すこしでもこの者達の魂が救われるならと。中には14~16歳と思われる女の子の死体もあった。


「ふぅ・・・」


洗う作業が終わった。次はその他の死体を集める。腹部を切られて出血多量で命を落とした者、首を切り落とされた者、五体をバラバラに切られた者と様々だ。こちらもまたさっきの女性達の死体の近くに集める。そんな中ある物が目に入る。


「んな・・・・こ、これは」


俺の目の前にあったのは木を地面に突き刺して、その根元を他の木で倒れないように支え、その木には一人の猫人の体格のいい男性の死体が裸の状態で吊るされていた。そして、その死体の胸部から腹部にかけて傷が付けられていた。それもただの傷ではなく文字だった。

その死体にはこう刻まれていた。


《我が名はステイン》



一気に怒りが込み上げる。胸の中が熱くなるを感じる。


「もう、二度と・・・・二度とこんなことができねぇように、徹底的にお前を潰す!」


俺はその死体を降ろし、刻まれた傷の上から炎を押し当て傷を消す。そして他の死体と同じ場所に連れて行く。


「ん?・・・エリー?」


運ぶ途中でふと視界に入った人物を見るとエリーがいた。


「何をしているんだ?」


死体をいったん集めている場所に置いてから再びエリーのところへ来て聞いた。

一人の人間族の女性の死体の前で座っていた。


「この人が・・・お母さんなの」


「っ!」


何も言えなかった。どこから来たのか分からないあまりにも大きい衝撃に、何を言っていいのか分からなかった。


「・・・じゃぁ、エリーのお母さんは他のみんなとは別にしよう」

「だめ、お父さんも一緒」


「・・・・・・」


再び言葉を失う。


「じ、じゃぁそのお父さんはどこにいるんだ?」


エリーが言葉もなく、目線だけを変えた。俺もその先を見ると一人の首がない猫人の男性が倒れていた。


・・・・まさか。


「あの人が?」


エリーはコクンとうなずく。


エリーの父親の元へ行くと近くに頭部が転がっていた。

その顔は死して尚も戦おうとする、あるいは家族を守ろうという意思が感じられる力強い表情が見て取れた。


・・・・なんて人だ。


俺はエリーのお父さんを担ぎ上げてエリーのお母さんの隣へ寝かせてあげた。切断された首は焼いてくっつけた。溶接に近い行為だ。もしかしたら死者を冒涜するといわれたりもするかもしれない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「これで全員か」


この集落地のどこを探しても、もう見つからない。


「みんな、後一日だけ待ってほしい。やつらに、ステインに罪を償わせたという報告を、仇を討ったという報告を聞いて欲しいんだ。そしてみんなに安心してもらいたい。だから、待っててくれ」


俺は深く頭を下げ、その場を後にする。


ステインたちの手がかりは見つけた。大人数のものと思われる多数の足跡。それが全て同じ方向へ向かっている。それだけじゃない、血痕も見つけた。恐らく怪我した者の血だろう。これで確定だ。

この足跡をたどっていけば、奴らがいる。


「待っていろステイン。お前には灰になってもらう。いや・・・」


一拍、間をおいて足跡の先を睨み付ける。


「灰も残らねぇと思え!」

次回

ジーク1人VSステイン率いる盗賊団多人数

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