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神器物語  作者: 米丸
第2章 二人の過去
15/23

Ⅱ 残酷な訪問者

ー3年前ー


緩やかな小川の流れる音に小鳥のさえずる音、風で草や木の葉が揺れる音。全てが心地よく感じる森。

そして小川では網や仕掛け、釣竿をもった子供と大人と思しき人影。


「お父さん!見て見て!」

「なんだ?エリー・・・おぉ!立派な魚じゃないか。でかした!」

「エヘヘー」


エリーと呼ばれた、頭に猫耳を生やし、お尻からは猫の尻尾を生やした描人族の幼い女の子は誇らしげに笑顔を見せる。


「だがな、ホレ」

「・・・・・・・・・」


しかし、その笑顔は一瞬で引きつった。


体格のいい男性の描人はエリーが手に取ったのと同じ、またはそれ以上の大きさの魚を数匹持ち上げた。


「俺の勝ちだな」


ニカッと笑うその笑顔はその男の豪快な性格を語る。




ここは森の中にある描人族の集落だ。川沿いにある為、魚はとれるし、森の中なので山草や薬草の採集できたり、草食モンスターを狩って食肉に出来たりと。住む環境としてはかなり恵まれた環境にあった。


描人族の集落とはいっても何人かは人間族もいる。


「お~い、ナナ~、帰ったぞ」

「あら、お帰り。エリーもお疲れ様」

「がんばったよ!」


エリーとその父親を笑顔で迎えたのは人間族の女性でエリーの母親。


「収穫はどうだった?」

「この通りだ」

「ま」


ドンと机に置かれた十数匹の魚。


「腕がなるわ」


ナナは腕まくりをして言った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「やっぱりナナの手料理は旨い!」

「おいしぃ!」

「フフ、ありがと」


実に円満な光景がそこにはあった。


バタァン!


「「!」」


しかし、強引に強く開けられた扉の音でそれは中断される。


「ハァハァ。レックスさん!」


息を切らしながらエリーの父親の名を叫ぶ。


「どうした」

「盗賊です!」


「え・・・」


その言葉で声を漏らしたのはナナだった。


「なに!?場所は」

「東側です」

「距離はそれなりか。カリス!男衆を集めて東の集落地に向かえ。俺もすぐに行く」

「はい!」


カリスと呼ばれた人物はそのまま走っていく。


「レックス・・・」


心配そうな声でナナが言う。


「お父さん」


エリーもまた同じだった。


「大丈夫だ、すぐに追っ払ってくるから、しばらくは安全な場所で待っててくれ。終わったら迎えにいく」


笑顔を見せる。これが、家族に心配させまいとする精一杯のことだった。




「ここは貴様らが来るようなところじゃない!」

「ハッ!んなこたぁ知るか!」


激しく武器と武器がぶつかり合う音がする。


「な!もうここまで来たのか!?」


レックスに焦りが生じる。


ザァン!


「下種が」


外を見ると先ほどレックスたちの所へきたカリスが、盗賊の胴体を真っ二つに切り裂いて言い捨てているのが見えた。


襲撃してきた盗賊の数は30人前後


「女、子供は早く逃げろ」

「させねぇよ」

「かっ!・・・あ゛」


カリスが後ろから刺され、絶命した。


「カリス・・・・。ナナ、合図したらエリーを連れて裏口から出て走れ!」

「え?」

「ひきつける」

「まって!」

「ナナ、エリーを頼む」


「レックス!」


ナナの声を無視して走り出す。


「てめぇら!男は皆殺しにしろ、女は好きにしていい」

「ヒャッホ~ウ!」

「いただくぜぇ」


ここから先は、あまりにもよろしくない言葉が飛び交った為省略。


盗賊と集落民の攻防は続く。


「おぉぉぉ!」


レックスが2本の剣を構え鍔迫り合いをしている二人の上を飛び越え、その奥にいる盗賊を切る。

盗賊は頭部、上半身、下半身の三つにわかれて崩れ落ちる。

更に次々と盗賊を切り伏せていく。


「か、頭ぁ!あいつ強ぇですぜ!」


一人が話しかけた男は顔に十文字の傷があり、他とは違う覇気を放っていた。


「・・・無駄な足掻きをしよる。三人ついて来い!あいつを消す」



レックスが6人目を切ったところで背後からの途轍もない殺気に振り向く。


「・・・・あんたがリーダーか?」

「あぁそうだ、ステインだ」

「ス、ステイン・・・だと?」


レックスの額に汗がにじむ。


「ほう、俺の名はこんな森の中にまで届いていたか」

「当たり前だ、お前の悪名を知らない者はここらの地方にはいないだろう」


ステインが率いる盗賊団は行商人や、旅をする一行、または今回みたいな集落をも襲い、奪うだけ奪い壊滅させる。相手は選ばない、手段は選ばない。植えつけるのは恐怖の二文字だけ。


「で?ここには何を目的に来た?ここは金目のものなんてないぞ?」

「あ?なに言ってやがる、あるじゃねぇか」

「・・・?」

「お前達猫人族の女とガキ共だよ」

「な・・・に?」


レックスの中に怒りが込み上げた。


「ガキ共は奴隷商にでも売る、女共は遊ぶ、飽きたらこれもまた売って金に換える」

「させるかぁぁ!!」

「おっと」


ガキィン!


振るわれたレックスの剣2本はステインの手甲によって防がれた。


「・・・っち!」

「どうやら貴様がこの中で一番強いみたいだな?」

「しるか」


一瞬だけ自分の家に目を向け合図した。


「どの道殺すから関係ねぇけどな」


レックスは押し返された。



「さ、エリー。早く」


ナナとエリーは隙を見て家から出て走り出す。


「おい、どこへ行こうってんだ?」

「!」


「お?人間族じゃん。まぁいい、楽しませてくれや!」


「いやぁぁ!!放して!」


「な!」


叫び声を聞いて見た先にはナナが盗賊に捕まり、エリーはそのすぐ横で怯えて固まっている。


一対一サシで向き合ってるときに余所見してんじゃねぇよ」


(しまっ!)


ドス!


レックスの腹部に激痛が走る


「あが!」


「レックス!!」


ナナは叫び、抵抗しようとするが女の力では振りほどくことができない。


「るっせぇ!おとなしくして・・・うぐっ!」


「・・・ナナを・・・放せ!」


レックスが肉体強化系術を発動しナナを捕まえていた盗賊を刺した。


「ナナ!エリーを連れて逃げろ!」

「でもその怪我じゃ・・・」

「だまって行け!!」


集落には火が放たれていた。至る所に火の手が上がっている。


「・・・・おいで!エリー」

「でもお父さんが!」

「いいから来なさい!」


エリーを抱き上げるナナの目にな涙がこぼれていた。


「中々に男らしいな、殺すのが惜しいくらいだぜ」

「うるせぇ」


再び剣と剣が交じり合う。


ステインの斬撃を左手の剣で受け流し、右手の剣で切りかかるが避けられる。左の剣を返しもう一閃。


「その怪我でよくもまぁそんなに動けるもんだ」

「タフさだけは自信があるんでね」

「けどさ、限界だろ?」

「・・・・・」

「カカカ、図星か」

「うるせ!」


ガイィン!


鈍い音でぶつかり合う。


「オラオラオラどうしたぁ!鈍ってんぞ!」


エリーが後ろが気になり振り向いた瞬間


「死ねよ」


ステインの刃がレックスに向け振り下ろされる


「がぁ!」


肩から斜めに深く切られた。


「お父さぁん!」


更にその刃は切り返し、再びレックスに襲い掛かる。


「お父さんが!お父さんがぁ!」


エリーはナナが抱いているのを振りほどき、レックスの元へと走り出し出そうとしたとき、その目の前でエリーの父、レックスの血飛沫が上がり、首と胴が離れた。


「いやああぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!」


目の前で起こったことを否定するように、拒絶するように、発狂する。


「エリー!」


エリーの前に盗賊が立ちはだかる。


「うるせぇよ、クソガキ」


盗賊の剣がエリーを捕える。


ザシュゥッ!


「う゛」


「おか・・・あさん?」


ナナがエリーをかばい、背中を斬られる。


「エリーだけは・・・ふっ!」

「ぐ!・・・このアマァ・・・」


盗賊の心臓にナナの包丁が突き立てられた。


「逃げなさいエリー!あなただけでも生きるの!生きなさい!」

「おかあさん!」

「はやく!行ってぇ!」


エリーは走った。ひたすら、転倒してもすぐに立ち上がり、火傷をしても構わず走る。集落を離れ、誰かいないかと探しながら、後ろから盗賊が追ってこないか恐れながら。


「包丁・・・持ってきててよかったわ・・・」


エリーが走り去ったのを確認する。


「レックス・・・ごめんなさい。エリー、絶対に生き・・・て」


ナナは静かに目を閉じる。







「グス・・・お父さん、お母さん・・・」


盗賊から逃げる。両親や友人、帰る場所を無くしたという現実からも逃げる。














ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












「・・・どうしよ」


どうしよ

この言葉が何を意味するのか。


現在地は森の中のどこかであり、この森を抜けた先にあるはずの村を目指していたのだが。どうにもおかしい。


遭遇するモンスターを撒くのに無意識のうちに必死になっていたのだろうか。どうにも方向が分からなくなっていた。


そう、俺、ジーク・アラウドは森の中で迷ってしまったのだ!


いや、別に自信持って堂々と言えることでもないのだが。果たしてどうすればいいのか?


ここはリィンの森と言われる森で、聞いた話では獣人族の集落がいくつか存在する森とのこと。


いったい何故俺がこの森にいたのかというと。

この森を抜けた先にある村の村長からの依頼を受け、その調査の為にこの森へ入り、一通り確認して村に戻ろうとしていた。しかし先程も言ったように、モンスターに何度も遭遇し、撒くためにいろんなところを走り回った結果、方向が分からなくなり今に至る。


ざっと説明すればこんな感じだ。


「・・・・・・・」


ん?


今、微かにだが気配がした。


「またモンスターか?」


聖剣を召喚し構える。


ガサガサ・・・


草が揺れる音がした


「そこか!」


炎の聖剣を構えて炎を灯し、音がした方へ体を向けて振りかぶった。しかし、目の前に現れた存在は俺の予想を大きく外した。


「・・・子供?」


たしかに子供だ、人間ではないようだが人だ。


「獣人族の子供?」


頭からは明らかに獣のものだと分かる耳、お尻からは尻尾が生えている。


「たす・・・け・・・」


パタン・・・


「ちょっ・・・おい!」


何か言いかけて倒れた。俺は即駆け寄り抱き抱える。


よく見ると、いや、よく見なくてもこの子はボロボロになっていた。すり傷に切り傷に火傷の跡に打撲の跡、それに衰弱している。


「助けて・・・か?」


この様子を見るとそれが一番適当だろうけど、何からどう助ければいいんだ?


ガクン・・・


「気絶?」


気絶だ。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







どうにかこうにか村に辿り着くことができた。その頃、日はもう完全に暮れて・・・・ていうか深夜を過ぎていた。奇跡的に村長は起きていた為、事情を話し描人の女の子を預かってもらった。


「もしや、奴らがこの子の集落を襲ったのやも知れんな。この子はそこから逃げてきたと考えるのが妥当じゃな」

「・・・・奴らって、もしかして」

「ステイン率いる、盗賊団じゃ」

「じゃぁ、早くこの依頼を達成しないと」


俺が受けた依頼は、最近ここの付近に拠点を構えたステインの捕獲とその盗賊団の討伐だった。ステインは必ず生かして捕まえて来いってのが絶対のようだ。

この依頼のランクはGランク。


しかし、モンスターがこの子の集落を襲ったとも考えられる。

いや、その線の方が薄いか。獣人族は竜人族程ではないが、何かと強いからこの森のモンスターにやられることはないだろう。

最奥部のは別として・・・


「明日、この子の集落を探します。もしかしたら奴らの手がかりとか掴めるかもしれません」

「ウム、頼みますぞ。波動士殿」


ヘタしたらこの村にまでその魔の手が伸びてくるかもしれない。


「おか・・・さん、おとう・・・・」


獣人族の女の子は涙を流しながら、うなされていた。怪我といい、衰弱のしかたといい、よほどひどい目にあったのだろう。


「ステイン・・・非道な奴め」


俺はいつの間にか拳を強く握り締め、そう呟いていた。

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