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ひと部屋の物語

作者: 多事多端
掲載日:2026/06/26

お目汚し誠に失礼します。

初投稿・初作品です。

マインスイーパーの様な小説が出来たら面白いのでは?

いやいや、その前に小学生以来、定型文以外書いたことが無いのに果たして何かを書けるのか?

それを確認するためにしたためて見ました。

「かはっ」

ドキドキする胸を押さえて目を覚ます。

埃っぽい空気を吸って荒い呼吸を落ち着かせる。

「知らない天井…」

ぼんやりと動悸が治まるのを薄暗い天井を眺めて待つ。

何かに追い立てられる様な焦燥感が次第に引いてゆく。

体に掛かっている上掛けをめくる。

コロンと体ごと右側に向く。

「よっこいせっ!」

更に体をひねり、程良い堅さのベッドに両手を付けて上体を起こす。

数メートル先の枕側の壁の灯りが目に留まる。

灯りは、まるで深呼吸をするかのように少し明るくなったり消え入りそうになったりと落ち着き無い。

汗を吸って体に纏わり付く寝間着が気持ち悪い。少しチクチクもする。

そのままベッドの右側へ足を降ろし、ベッドに腰を掛ける。

数メートル先の壁の灯りは煌々と周囲を照らしている。

少し安心する。

と…

数メートル先の左手側(ベッド足許側)の壁の灯りが音も無く消える。

すぐ隣に闇が近づく気配がする。

自分の影がそんな闇に近寄ったり、逃げたりを繰り返す。

ぼんやりとそんな動きを見つめている。

室温が汗と伴に体温を奪っていく。

「ふぃ~」

気の抜けた幼い声が室内に広がる。

寝間着の左袖で額の汗を拭く。

ゴリッ

「いった~い」

額に堅い物が当たる。

左手の親指にブカブカの指輪が嵌まっていた。

右手で指輪を抜いてみる。

抜くと同時に指輪の石が音も無く粉微塵に砕ける。

「ええ~っ」

砕けた石は輝きながら消えてゆく。

途端に室温が一気に下がる。

思わず身震いをする。

少し息苦しい?

足の届いていない床をしばし眺める。モフモフぽい物が敷かれていた。

自分を確かめるように両腕で小さな体を抱きしめる。

そのまま、無精をして首だけでグルンと辺りを見回そうと…

「ひっ」

真後ろにほのかな灯りを背にした大きな赤黒い何かがいた。


慌ててベッドから飛び降りる。

あっ、やっぱりモフモフだ。足触り最高~!

幸せを愉し…まずに現実逃避から戻る。

ベッドを挟んだ先には、椅子に座った赤黒いローブとフードを頭からスッポリかぶった人がいた。

両手は前に組んで書類の上に置かれている。

フードの影に隠れて顔は見えない。

「あ、あの~」

恐る恐る声を掛けるも、ローブの人は動かない。

「もしも~し、あさですよ~」

さっきよりも大きな声で、腹具合で時間を決めて呼びかける。

ローブの人は動かない。

ローブの裾周りの刺繍が灯りに合わせて光る。

沈黙が続く。

「あ~た~らしい~、あ~さがきた~、き~ぼ~の…」

思わず4番まで熱唱するが、ローブの人は動かない。

堪り兼ねて暴挙にでる。

「ごめんねっ、えいっ」

唐突に右手の指輪を投げ付ける。

指輪は山を描いてフード越しの胸辺りに音も無く当たり、そのまま膝の上に…


「えっ!」

指輪が消える。

パサッ

「ええっ!」

ローブの中身も消える。

超常現象に茫然、内心は騒然。

「ど、ど、どーしよぉ~」

両手を胸の前で合わせながらクルクル回転してしまう。

一転、二転三転…足許が覚束なくなる。

ベッドに寄り掛かり気が付く。

「ん?」

左手の親指に指輪が嵌まっていた。

「ひゃ~っ」

指輪を右手で引き抜きベッド越しに再び投げ捨てる。

指輪は先と同じ様な軌跡をたどりローブを…消える。


恐る恐る左手を見ると親指にブカブカの指輪がブラ~ンブラ~ンと引っかかっていた。

左手を前に突き出しブンブン振るう。

指輪、グルングルンと親指を中心に回る。

繰り返すこと数十秒。

「ハァハァ、はぁ…、もぅ、いいや…」

両手をベッドに突き立て…カクン

「ぐぇっ」

体重を支えきれずベッドへと腰から上ごと顔面ダイブ。

体が小刻みに…いや、結構震えている。

「もう、だめ」

くぐもった声と共に腰が落ちる。

ゴンッ

膝がベッドの土台に激突する。

「!!っーー…」

くぐもった声ならぬ声。

ベッドの上掛けを道連れには…出来ずに上体だけがずり落ちる。

両腕と肩から上がベッドに載っかっている。

ローブを載せた椅子に向かって悪態を吐く。

「ったく、なんなのよ、もぅ!」

ずりずりと左手を目の前に持ってくる。

「ほんとにもぅ!」

親指に嵌まっているブカブカの指輪に八つ当たりする。

「あれーっ?」

左手の親指には、良く磨かれた銀色に光る指輪が大きなルビーぽい石を台座に治めて嵌まっていた。


その空間には肌寒さを覚える室温と、膨張と収縮を繰り返す闇と、1人分の呼吸音だけが…

「ねぇ」

少しドスの効いた幼い声が今、追加される。

(なんすか?)

やさぐれた少年の声が応える。

「おー、やっぱ、喋るんだ~」

少量の意地悪と、嘲りと、諦観を驚きで包みこんだ幼い声が続く。

(じゃあ、黙ってます)

「うそ、うそ、うそ、いや~、応えてくれて良かったよぉ♡」

(…)

「頼りになる指輪さんだと思ってたんだ~」

(…)

「やっぱり、ありきたりの指輪さまでは無かったんだねっ♡こんな指輪さまが、ぼくと一緒にいてくれて、な~んて、ぼくは幸せなんだろう♡あー、指輪さまの声が聴きたいなぁ~」

媚びを重ねる幼い声が間髪を入れず垂れ流されてゆく。

(はい、はい、分かりました。分かりましたよ。なんすか、もぅ。)

言葉とは裏腹に先ほどとは打って変わって機嫌の良い少年の声が応える。

この指輪チョロ過ぎる。

「ここは何処で、ぼくはだぁれ?指輪さんは何者なの?」

(ここは御座所です。あなたはマイン・ス・イーパさまでした。私はリングと呼ばれていました。詳しいこ)

「リングさんや、も少し詳しく教えてよ」

(ん、んん。ですから、詳しいことは、この書き物をご覧くださいよ。私とマインさまご自身が張り切って創りあげた最高傑作ですから。)

ポンとリングとマインの間に紐綴じされた冊子が現れる。

そのまま、冊子の角が顔面に直撃する。

「ぐぅぅ」

ベッドからずり落ちた体勢のままなら、こうはならなかっただろうに…。

へたり込んだモフモフの敷物を味わうために仰向けにゴロゴロ寝そべって、貧弱な両腕を顔の前に持ち上げたがための結果であった。

(ふふっ)

リング、心底愉しそう。

マインは、右手で冊子を脇によける。

鼻の頭が少し赤い。

少し涙目になっている。

無言で左腕を左側にヒュンと倒す。

ゴンッ!

手の甲が敷物の外に当たる。

「~!~~!!」

折角広げた左腕を胸の前で右手で抱える。

両目から今にも涙がこぼれそう。

リング?毛ほどの傷も付いていない。

(~♪~♪~♪)

何処からともなく愉しそうな雰囲気が醸成される。


「はぁ…」

マインから盛大な溜め息が漏れる。

漸く涙も引っ込んだようだ。

右腕をモゾモゾ動かし、冊子を掴む。

微かに上下するポッコリお腹の上に冊子を置く。

「リングさんや、読むの面倒い。教えてよ。」

マイン、態度悪すぎ。

(は~い。じゃあ、冊子を開いて顔に被せて、「叡智よ我に集え」と唱えてください。)

可哀想に年端もいかないうちから黒歴史を量産するらしい。

「え、えいちょわれに、ちゅどえ」

噛み噛みのくぐもった言葉が紡がれる。

ポゥと冊子全体が光る。

冊子の端から金色の光の粒となって部屋全体に銀河のように回転しながら広がる。

冊子のあった場所が一際輝く。

途端に全ての光の粒が一点に集まり消える。

(…)

「…」

暫しの沈黙がおと…ずれない。

「おい、リング!お前、なんだってあんな文句を唱えさせたんだよぉぉぉ」

幼いながらもドスのとてもよく効いた声が室内に充満する。

(これはこれは、マイン・ス・イーパさま、気持ち良くお目覚めでございますね。ご希望どおり、うら若き乙女に転生なされたこと、心よりお喜び申し上げます。あれほど、方陣寝台の上で寝なさいと言ったのに、聞き流したもんだから、丸っきり記憶も体力も中途半端にしか引き継がれませんでしたよ。そもそも環境制御石を稼働中に引っこ抜いて壊すだなんて…)

リング、喋る。

鬱憤と嫌味を程良くブレンドして門限破りを玄関で待ち構えていたオカンのように尽きることなく喋る。

マイン、寒いのか?ワナワナと体を震わせ漸く座る。

そして、親指からリングを外し両手で捧げ持つ。

「誠にご迷惑をかけましたぁぁぁ」

言葉と伴に肘から下を全身土下座する。

と同時に、少しくぐもったゴンと音がする。

暫しの沈黙が訪れる。

(…)

「…」

(もぅ、いいですよ。反省しましたね?)

少し言い過ぎて困ったような少年の声音。

(ともあれ、お帰りなさい。)

「ただいまー、リング、早速だけれど、あのさぁ~、お腹すいたんだけど、なんかある?あとさぁ、洗濯済みの綿か絹の服って…」

マインが言い終わるよりも早く。

(…怒!)

リング周辺の空間が歪み始める。血のような光と得体の知れない灰色の霧の様な物がマインを包み込む。

「改めて少し、よろしいでしょうか。マイン・ス・イーパさま、あなた一体…」

マインの返事を待たずに先の倍速でリングのお小言がマインの心を撃ち抜き始めた。


果たして、マインの転生は本当に成功したのだろうか?


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