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食堂に到着するとすでに旦那様もお嬢様も先に席についておられました。
「お待たせして申し訳ありません。」
「慌てずともよい。」
そういって私に微笑みかけ旦那様はベルを鳴らしました。これは全員が集まり食事を開始するためにする配膳の合図です。合図を聞いたメイドたちは手際よく食事の支度を始めた。これまで私は配膳する側であったはずが、今はかつての同僚に、配膳してもらうことになるなんて。半年前の私は考えもしなかったでしょう。
順調に配膳が進み食事がスタートした。食事を始め、サラダを口にいれると衝撃が走りました。サラダの味が一年前より格段に上がっています。これはメイドの食事より格が上がったというような話ではありません。素材の味つまり野菜の味が上がっていたのです。これはお嬢様の研究の研究成果の一つなのでしょうか。私が目を丸くして固まっていると、してやったりとでも言いたげの顔のお嬢様が嬉しそうに話してくれました。
「
野菜がおいしくなっているでしょう。これは麦の研究の一環で行っていた土壌改良の結果なのよ。」
「はいとてもおいしゅうございます。正直に申しますと、後宮の野菜よりもおいしいです。」
「あらお世辞でもうれしいわ。あなたに代わりに後宮へ行かせておいて、なんの研究成果も上げられないなんてことにならないように頑張ったのよ。」
きっと私が後宮へ行くことになってから、本当に研究を頑張っていらっしゃたのだと知り、とても誇らしい気持ちになりました。
「本当に頑張られたのですね。」
「そんな泣かないでよ。」
その成果を料理という形で披露して下さり、うれしい気持ちが少し高ぶってしましました。
「すみません、お嬢様。なんだかうれしくて…」
「もうほんとに昔から泣き虫なんだからか。まだまだあるからたくさん食べてちょうだい。」
そういってお嬢様は多くの野菜を私のお皿に多くの野菜を取り分けてくださいました。
「ごほん、感動的な雰囲気の中申し訳ないのだが、大切な話がある。ミミ、王太子様より手紙が届いた。」
そう言って旦那様は王太子印が押された手紙を机の上に出し、私にその手紙を読ませて下さりました。そして旦那様は、お手紙の内容について話し始めました。
「明日正室選抜について公式に発表するそうだ。それに伴い一度後宮の者をすべて帰省させるとのことだ。そして一か月後に選抜に残る者のみを呼び戻すという形を取ると。」
「つまり後宮へ戻る期間が一か月伸びたということですか?」
「ああそういうことになる。そしてこの期間にミミには正室選抜に残ってもおかしくない程度まで、伯爵令嬢としての教養、マナーを身につけて欲しいとのことだ。」
「思っていたより勉強の時間をいただけるようで安心いたしました。」
「正直かなり無理のあるスケジュールであるとは思っていたゆえ、ゆとりができ我も安堵している。そしてここでの教育や準備に関してはすべてクリスティーへ任せることとした。」
「お嬢様にですか!」
「これくらいはやらせて欲しいと、私からお父様にお願いしたの。」
「研究もお忙しいはずですのに、そのような負担お嬢様にお掛けするわけには参りません。」
「そんな水臭いこと言わないでよ。それに私以上に伯爵家教育に詳しい者はいません。」
「それはそうですが…」
「マナーや教養だけでなく服の準備などもある。クリスティーを思う存分頼ってくれ。無論この私も頼ってくれ。王太子様より潤沢な準備金をいただいているのでな。」
ドヤァという効果音が似合いそうな顔をされた旦那様を見て、不覚にも笑いがこぼれてしまいました。
その後これからの学習計画などを話しながら食事が進みました。
「教養はもともとクリスティーの家庭教師を頼んでいた者にすでに頼んである。」
「かしこまりましたお父様。それでは私はその他の分野を担当するということですよね。お茶の種類についてはメイドだったんだからそこまで力は入れなくても良いわよね。毒判別に関しては練習にも危険が伴うから、専門の先生を手配しなくては。実。それでは実践に重きをおいてレッスンいたします。」
「実践といいますと?」
「ダンスやマナーはやればやるほど練度が上がって行くものよ。そうだ、口の堅い親戚を読んで練習がてらお茶会を開きましょう」
「お、お茶会でございますか?」
「ええ、練習だから。そうね3日後で良いかしら。」
お嬢様の思い付きによって、まだなにも知識がないままお茶会をすることになってしまいそうです。
「3日後はさすがに難しいかと思います。せめて1週間後までお待ちください。」
「いいえ、待ちませんわ。一週間後もお茶会をするとして、まずは3日後ですわ。」
お嬢様の目は本気でした。ここまで燃え上っているお嬢様を止めることができるはずもなく、本当に3日後にお茶会が決まってしまいました。




