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【悲報】底辺ダンジョン配信者の俺、うっかりS級ボスをテイムしてしまい同接が止まらない  作者: 無響室の告白


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第1話:死ぬかバズるか、それが問題だ

「えー、現在の同接は……ゼロ!? うそでしょ!? ねぇ誰か見てる!? この暗闇の中で俺の独り言だけが響いてるの!?」


俺、佐藤カイト(22歳・借金持ち)は、スマートフォンの画面を凝視して絶叫していた。


場所はEランクダンジョン、通称『初心者の墓場』の地下三階層。


湿ったカビの臭いと、遠くから聞こえる魔物の唸り声。


本来なら恐怖で足がすくむシチュエーションだが、俺にとって一番恐ろしいのはモンスターではない。


今月末のカードの支払いだ。


「くそっ、なんでだ……! 今日は『スライムの体液でローション作ってみた』っていう渾身の企画なのに!」


俺の頭上では、ドン・キホーテで980円(税抜)で買った『安物ドローンカメラ』が、ウィーンと情けない駆動音を立てて浮遊している。


画質はガラケー並みだが、なぜか対衝撃性能だけは軍事用兵器並みという謎スペックを持つ相棒だ。


『ピロリン♪』


「あ! 視聴者キタ! 初見さんいらっしゃい! 今ちょうどスライムを探して……え? 『死ね』? 『画質悪すぎワロタ』? ……くっ、アンチコメントも貴重なインプレッション! ありがとうございますぅ!」


涙を飲んで画面に笑顔を向ける。


登録者数38人。


底辺の中の底辺である俺がバズるには、もっと過激な映像が必要だ。


そう、例えば。


「……行っちゃうか。立ち入り禁止エリア」


目の前には、『これより先、生存確率ゼロ』と書かれたドクロマークの看板。


ダンジョンの裂け目が口を開けている。


俺は視聴者を稼ぐためだけに、震える足でその裂け目の縁に立った。


「み、見ててくださいね! この崖の下には未発見のルートがあるという噂が……うわっ!?」


足元の岩が崩れたのは、まさにその時だった。


俺の体は重力に従い、奈落の底へと真っ逆さまに落ちていく。


「ギャァアアアアア! 死ぬ死ぬ死ぬ! 借金残して死ぬぅううう!!」


ドローンカメラだけが、シュールなほど冷静に俺の落下を追尾してくる。


ドンッ!!


奇跡的に何かのクッション――恐らく巨大なキノコの群生地――の上に落下し、俺は一命を取り留めた。


だが、安堵したのも束の間。


「……グルルルルルゥ……」


地響きのような唸り声が、鼓膜を震わせた。


俺が落ちた場所。


そこは地図にも載っていないダンジョンの最深部、『奈落のアビス・フロア』。


ゆっくりと顔を上げると、そこには闇そのもののような巨大な影があった。


燃えるような真紅の瞳。


ビル三階分はあろうかという巨体。


伝説上の存在、S級指定モンスター『終焉を喰らうもの』――ドラゴンだ。


「あ、あ……」


腰が抜けた。


終わった。


配信とか借金とか言ってる場合じゃない。


これは、明確な「死」だ。


ドラゴンが俺を見下ろし、巨大なあぎとを開く。


喉の奥で灼熱のブレスが渦巻いているのが見えた。


(ごめんなさい母ちゃん、俺の人生、バズることなく終わります……!)


死を覚悟し、せめてもの抵抗として震える手を前に突き出した。


それは俺が生まれつき持っていた役立たずスキル、『動物愛護』の発動ポーズだった。


野良犬にちょっと懐かれるだけのゴミスキルだ。


「お、お座りぃいいいい!!」


涙目の絶叫と共に、俺の手がドラゴンの鼻先に触れる。


バヂヂヂヂッ!!


その瞬間、俺の手とドラゴンの間に黒い稲妻のようなエフェクトが奔った。


『警告:スキル【動物愛護】がダンジョン深層の魔力と反応し、変質しました』


脳内に無機質なシステム音が響く。


『スキル【絶対支配ルーラー】に覚醒。


対象:S級個体名《終焉を喰らうもの》……テイム成功率0.00001%……成功しました』


「は?」


次の瞬間、ドラゴンの巨体が眩い光に包まれた。


光が収束していき、やがて一人の人影が浮かび上がる。


「……主様あるじさま?」


そこに立っていたのは、フリルたっぷりのゴスロリ服に身を包んだ、銀髪赤眼の美少女だった。


「え、あ、はい?」


美少女はとことこと俺に歩み寄ると、いきなりその場に跪き、俺の手の甲にキスをした。


「素晴らしい……。この私を屈服させるとは。貴方様こそが、私が待ち望んだ真の王ですわ」


「……はい?」


状況が飲み込めない俺の横で、安物ドローンカメラがその一部始終を配信し続けていた。


ふとスマホを見ると、コメント欄が滝のような速度で流れていた。


『え?』

『ドラゴンどこいった?』

『今の演出なに? CG?』

『てかその子誰!? めっちゃ可愛いんだけど!』

『同接500人突破』

『同接1000人突破』


「えー、現在の同接は……せ、1000人!? よっしゃ増えた! ……って、え? これ何? 現実?」


俺の配信者人生が、バグり始めた瞬間だった。



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【登場人物】

- 佐藤 カイト: 主人公。底辺配信者。


- ロゼ: ヒロイン。S級モンスター『終焉を喰らうもの』が変身した姿。


【場所】

- 初心者の墓場: Eランクダンジョン。カイトが配信を行っていた場所。


- 奈落のアビス・フロア: ダンジョンの未踏破最深層。S級モンスターが生息する危険地帯。


【アイテム・用語】

- 安物ドローンカメラ: ドン・キホーテで購入した980円のカメラ。異常な耐久性を持つ。


- 動物愛護: カイトの初期スキル。本来は動物に好かれる程度の効果。


- 絶対支配ルーラー: 『動物愛護』がバグって変質したスキル。対象を強制的に服従させる。

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