第11話 護衛依頼はじまりの鐘
今回はギルド《ひだまり》の大きな転換点。ギルドランクが「G」から「F」へと昇格し、初めての護衛依頼に挑みます。
再登場する商業ギルドの見習い・ポルカ、そして豪快な新キャラ「ゴラン親方」。
さらに道中で出会う不思議なライオンの子「レオ」──物語の未来を揺さぶる存在が現れます。
笑いあり、戦いあり、そして少し不思議な余韻あり。
どうぞお楽しみください。
第11話 護衛依頼はじまりの鐘
「《ひだまり》の皆さん、おめでとうございます!」
ギルド協会の受付嬢が明るく告げ、手元の証明書を差し出した。
そこには、しっかりと押された昇格の刻印。
「これで《ひだまり》は──ランクFです!」
「やったあああ!」
リンが両手をぶんぶん振り回し、子どものように飛び跳ねた。
「ようやく……Fか」
ザックは腕を組みながらも、口元にわずかな笑み。
「え、えっと……わたし、ほんとに役に立ててたんでしょうか……」
メイはおずおずと笑い、小さな拍手をしてみせた。
「間違いなく、みんなで勝ち取った成果だ」
カエデは頷き、証明書を受け取った。
その瞬間──視界の端に不思議な光が走り、文字が浮かび上がる。
【固有スキル:鑑定】
「……は?」
思わず呟いたカエデに、リンが首を傾げる。
「カエデ? 急に固まっちゃってどうしたの?」
「いや……新しいスキルが出た。【鑑定】って書いてある」
「鑑定!? それって宝石の値段とか、魔物の正体とか見抜けるやつちゃう?」
ザックが目を細める。
「すごい! なんか商人っぽい! カエデにぴったり!」
リンがはしゃぐ。
「けど、まだ使い方も分からないし……」
カエデは苦笑した。胸の中で、小さな鐘が鳴ったような気がする。
「まいどおおきに〜! 主役は遅れて登場するんや!」
バンッ! ギルドの扉が派手に開き、元気すぎる声が響いた。
入ってきたのは、あの商業ギルドの見習い・ポルカ。
「ポルカ!」
リンが目を丸くする。
「また騒がしいのが来たな……」
ザックが額を押さえる。
「お、お久しぶりです……」
メイが小声で会釈。
「護衛の件、ついに本決まりやで!」
胸を張って言うポルカの後ろから、どっしりとした体格の男が現れた。
「俺がゴランだ。商業ギルド所属の行商人でな。村に行商を始めることにした。《ひだまり》に護衛を頼みたい」
「ご、ゴラン親方……!」
ポルカが後ろで腕を組み、ドヤ顔。
「これでわいも一人前や!」
「どこがや! お前はまだ荷物持ち一つ満足に運べんやろ!」
ゴランのツッコミが炸裂し、ギルド内が笑いに包まれる。
こうして《ひだまり》は、ゴラン親方とポルカを伴い村への護衛に出発した。
「カエデ、護衛って何すればいいの?」
歩きながらリンが尋ねる。
「簡単に言えば、商人を無事に目的地まで送り届けることだ。つまり──リスク管理だな」
「また出た、経営用語!」
リンが笑い、ザックが「確かに的は射てる」と頷く。
道中は順調だった。
……だが、森を抜ける頃、茂みの影から黒装束の男たちが現れる。
「金目のものを置いていけ!」
「盗賊か……!」
ザックが剣を抜く。
「きゃっ!」
メイが身を竦めたが、すぐに杖を構えた。
「来るぞ!」
カエデが叫ぶと同時に、戦いが始まった。
「せいやっ!」
ザックが前に出て盗賊の刃を弾き飛ばす。
「リン、ゴラン親方を守って!」
「任せて!」
リンは村娘のような軽やかさで親方とポルカの前に立ち、笑顔で盗賊を威嚇する。
「わ、わたしも……! 【ウインドカッター】!」
メイの放った風の刃が盗賊の腕をかすめ、呻き声をあげさせた。
「ナイスだ、メイ!」
リンが振り返って笑う。
「……ほ、本当に?」
メイの頬がほんのり赤くなる。
戦況を見渡しながら、カエデは声を飛ばす。
「隊列を崩すな! 一人に集中せず、相手を分散させろ!」
仲間が的確に動くことで、盗賊たちは次第に押され、最後には蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
戦いが終わり、盗賊の荷を調べると、小さな檻が見つかった。
中には、痩せ細ったライオンの子がうずくまっていた。
「うわぁ……かわいそう」
リンが顔を曇らせる。
「助けてやらなきゃな」
ザックが剣で檻を壊すと、子ライオンはふらつきながらもカエデの足元にすり寄った。
「こいつ、懐いたな」
ゴランが目を細める。
「でも……村にそのまま連れて行ったら、魔物だって嫌がる人が出るかも」
カエデが提案すると、ゴランも頷く。
「店の中で保護しよう。人目を避けりゃ文句は言われまい」
「……んん、にゃぁ……」
ライオンの子は小さく鳴き、カエデの足元で眠り込んだ。
なぜか、その姿に胸がざわつく。
やがて村に到着すると、村人たちは驚きと喜びで迎えた。
「ほんとに商人を連れてきたのか!」
「すごい……見たことない品ばかりだ!」
広場に即席の市が立ち、村人たちが珍しい品を買い求める。
子供たちは菓子や玩具に目を輝かせ、母親たちは布地や調味料を両手に抱える。
「……これこそ、村と街をつなぐブルーオーシャン戦略だ」
カエデは腕を組み、思わず口に出した。
「カエデ、また難しいこと言ってる!」
リンが笑いながら突っ込む。
その夜、村ではささやかな宴が開かれた。
焚き火を囲んで笑い声と歌声が響く。
「これでわいの株も上がるで〜!」
ポルカが杯を掲げて叫ぶ。
「お前の株はまだ原価割れや!」
ゴランの鋭いツッコミに、場は爆笑。
リンは歌い、メイはおずおずと手拍子を添える。ザックも珍しく微笑んでいた。
カエデの日記
『村に商人が来た。
これがきっと、新しい一歩になる。
護衛依頼……これが俺たちの鐘の音だ。』
窓際では、ライオンの子がすやすやと眠っている。
「……まだ眠ったまんまだな。明日また様子を見に行こう。
親がいるなら返してあげないと」
カエデは小さく呟き、日記を閉じた。
──物語はまだ、始まったばかり。
TIPS
ギルドランク
G → F → E → D → C → B → A → S→?
冒険者は依頼の達成度で昇格する。《ひだまり》は今回、GからFへ。
ギルドランク G → F必要GP累計 200GP 主な条件 登録冒険者数3名以上かつ4件以上の依頼クリア後Fに昇格(F後は中級依頼受注可)
護衛依頼
商人や旅人を無事に目的地へ届ける依頼。戦闘だけでなく、危機管理能力が問われる。
ゴラン親方
豪快で威勢のいい商人。ポルカの師匠的存在で、容赦なくツッコミを入れる。
ライオンの子
盗賊から救出された子ライオン。正体は次話以降の重要な伏線。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
第11話は《ひだまり》初の護衛依頼回。ポルカの再登場にゴラン親方の登場、そして物語の未来を左右する「レオ」との出会いが描かれました。
笑いあり、戦いあり、ちょっとした不思議もあり──ギルド物語らしい一話になったと思います。
次回「忘れた頃にやってくる」では、レオの秘密が徐々に明かされます。
どうぞお楽しみに!




