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物語tips:軍警察
連邦系国における武装警察。
組織図では憲兵隊(軍規と軍事法廷を司る)の下部組織にあたり、重火器犯罪、組織犯罪に対処している。しかし指揮系統では軍より警察に近い。所轄警察の要請に応じて現場判断で出動できる。
ほとんどが連邦軍の特殊部隊出身者で構成されている。個人の戦闘力は正規軍に匹敵するが義体化兵などは稀で、完全義体化兵はいない。これは、軍事規格の戦闘用義体は連邦では流通管理が厳しいため。
「いやー傑作だったな!」シャワールームにレイナの甲高い笑いが響く。「“殺さないで”だってよ。殺すわけないだろうが。ジャーナリストとかいう肩書のくせにサイバーネットに嘘の記事載せてさ。『連邦軍の不穏な軍備拡張』だとかで市民に不安をばらまいてたんだ。たったそれだけ。なのにあのビビりよう」
髪を洗い流しながら笑ったせいで口に水が入る。
「うん、そうだね」
アーヤは左隣のブースで元気がなかった。
「やけに沈んでるじゃん」
「ううん、大丈夫」
キュッっとシャワーの栓を止めてアーヤは個室から出た。
「胸、もうすっかり治ったんだね」
「ああ、そういやもう治ったな。あれから1週間だしトーゼンじゃね?」
「打撲で真っ青になってたんだよ? 普通なら何週間も消えないんだよ」
「別に死ぬようなケガじゃねーし。おめーと違って誰かに見せるわけでもないし」
「処女自慢はカッコ悪いんデスケド」
自分で自分の足を撃った傷口も、探さなきゃわからなくなるぐらい小さくなった。また傷が増えたが、これはこれで、あたしが頑張ってる証拠だった。
「アーヤ、そんな暗い顔してさ。お前、後衛なんだからこういうケガはしないだろ」
「うん、そうだよね。そうなんだけどね。私さ、こういう仕事向いてないかも。あ、ごめん、また変なこと言っちゃって。もう私出るね。シスちんのことお願い」
「あ、おい、ちょっと待てよ」
右隣のブースではシスが体を洗っている。万が一義体に不調が出れば1㎝の水でも溺死するから1人でシャワーは浴びれない、とか言うせいで付き添ったままだ。
「鈍感だねぇ、レイナ」
「んだよ、こういうときだけ声がおばさんっぽくなるよな」
「わたしはおねーさんなの!」
思い出したかのように、声のトーンが少女っぽくなった。
「毎日さ、わたしたち、いろいろ逮捕してるでしょー。血みどろになったのを」
「毎日って程でもないだろが。いまさら殺生が嫌になったって?」
「んーちょっと違うの。ぜんぶひとまとめに捕まえるよね」
「あたしらの仕事はクソどもの捕獲で、詳しいことは後で調べるんだろ」
「ふーん、だれが」
「だれって、警察だろ?」
「ううん。近衛のエージェントが連れてくの。だからこの前、キー・シュー隊長に聞いてみたの。そしたら隊長さんも知らないって」
何が言いたいんだ。
「たぶんね、アーヤは正義の味方になりたいんだと思うの。正義の味方になるって気持ち切り替えて。そしたらずっと弱いものいじめじゃん。だからね、まいってるの」
「いじめじゃねーって。ニシが言ってたろ? テロリスト。ああいう犯罪者をテロリストて言うんだ。殴られたくなきゃそもそも悪いことするなっての」
「ふーん。そうなんだ。わたしはね、戦うよ。楽しいもん。生きてるって感じがするし。でも、やっぱり弱い者いじめはヤだな」
シスは短い脚でてくてく歩いてシャワールームを後にした。
「んだよ、面倒見てやった礼は無いのか」
翌日、レイナは休日だからと1日中惰眠にふけっていたが、夕方にパルが鳴って緊急招集で目が覚めた。仕事は嫌いじゃない。自分が特別だってわかるから。が、こうも緊急の呼び出しが多いとさすがに嫌になる。
下着を換えて制服に着替えようとしたらドアの向こうでノックが聞こえた。
「俺だ。招集の説明は読んだと思うが、今回は戦闘服での招集だ」
「あっ、しまった。わぁかってるって!」
「ふっ、そうか。急げよ。もうすぐ迎えの車が来るとさ」
支給品の戦闘服とブーツを慌てて付ける。拳銃はニシに倣ってホルスターを右の腿に着けた。
マンションの入口へ急いで向かったが、ニシが立っているだけで、横に車が1台滑り込んできた。赤色灯を回して、路面電車用の道路を逆走してきたらしい。
「あれ、アーヤとシスは?」
「シスは待機だそうだ……ほんとにパルのメッセージ読んだのか?」
「急いで来たんだって。女はな、男より時間がかかるんだ」
だめだ、ニシは全く信じていない。
軍のナンバープレートが付いたSUVに乗り込む/運転席には見知った美人がいた。
「げ、ロゼ隊長」
「何をそんなに驚いているのです。パル、本当に読みましたか?」
「あーすみません、急いでいたので」
車はすぐ発進した。夜道で赤い赤色灯がビルの壁面を照らしている。方角からして2桁区の下層都市へ向かっているようだった。
「シスは待機だ、任務の特性上」ニシが代わりに説明してくれた「アーヤは、待機だ。というか配置転換だな。シンタローと一緒に情報処理の仕事を任されている」
「あたしらと一緒じゃないのかよ」
「まあ、適材適所だろう。血を浴びるのは、だれでも耐えられるわけじゃない」
それならそうと言ってくれたらよかったのに。また余計なことをアーヤに言ってしまうところだった。
「とはいえ、俺もまだ任務の詳細は知らない」
「まあふたりともそう緊張しないで」ロゼはいつもと同じく鷹揚に「武器の密輸犯が判明しました。オーランド警察と軍警察が包囲をしています」
ん? あたしらいらなくね?
「じゃあ、俺たちはそのバックアップ」
「ええ。管轄争い、というやつですね。最近近衛兵団が少々、管轄を飛び越えて動いたので軍警察から文句が出ましてね」
「軍警察、たしか憲兵も含む、いわゆる武装警察だったな。連邦の」
「ええ。義体化兵と戦車が無い以外は、軍隊そのものです。よく訓練されていますし、軍と違って法執行機関です。逮捕後の事務処理もなにかとスムーズです彼らは」
「警察署に連れて行くんだろ? じゃ近衛兵はどこに連行するんだ?」
あっ、余計な事聞いたかも。
「傭兵と同じですよ。アジトがいくつかあって、そこに連れて行き、尋問するんです。興味あるなら一緒に行きますか、レイナさん?」
「あ、いえ、遠慮しておきます」
拷問だろ、どうせ。縛った相手を一方的に殴る。そういうのは好きじゃない。
「ところで、どうして隊長じきじきに現場に?」
ニシが話題を変えてくれた。
「たまには運動しないと。歳を取ると太りやすいんです」
クソ笑えない/笑ってはいけない冗談だった。
「例の義体化兵部隊は別の任務に当たらせていて人手不足だ、と」
「それもありますが、半分は事務的なものですね。折衝というやつです。軍警察の関係者にあいさつ周りをするのも指揮官としての職務ですので」
というわりに、ロゼは両脇に巨大な自動拳銃をぶら下げている。
「じゃあたしらは、警察の後ろに立っていればいいんだな」
「ええ。今回は暇な仕事です。帰りに食事、おごってあげます。昼寝を邪魔した詫び、というやつです」
バックミラー越しにロゼと目が合った/頭の上の寝癖を指示している。
2桁区の下層都市では、すでに周囲数ブロックが警察によって封鎖されている。装甲車両で道をふさいで、仕事から帰る市民を追い返している。ロゼの軍の身分証で規制線を通過し現場に到着した。
「レイナさん、一応、防弾ベストを着ていてください。所属を示す意味もあります」
たしかに、背中には大きく近衛兵団の記章が入っている。
ロゼは慣れた手つきで装備を整えると、先に軍警察の指揮所へ行ってしまった。レイナが防弾ベストを着るのに手間取っている間、ニシはハードケースからライフルを取り出してサプレッサーを取り付けている。
「ライフル、使ってみるか?」
「いや、いいって。それ自分でカスタムしたんだろ?」
「そう。レシーバーは全部特注品に変えてある。排莢ミスが10%減った。バレルは0.3インチ長くしてグリップもオーダーメイドに換えた。ゴム製でやや小さめにしているからグローブをしたまましっかりホールドできる。レーザーポインタ用のバッテリーは銃床に収めてスイッチはバレル左側。頬当ての部分は強化樹脂に変えてあるから砂漠の熱で頬がヤケドしなくて済む。全体的にマットブラックの塗装をしたから光を反射せず被発見率を下げている」
くどくどと銃マニアが説明している。
「あたしも暇があったらさ、ライフルを貸与してもらえるのに。こうも仕事が忙しいとそんな暇ない」
拳銃と、そして借りたままの電撃警棒をタクティカル・ベストに挿した。
「だったら個人防衛火器かサブマシンガンがいい。軽いし持ち運びにも困らない。生身のヒト相手ならそこそこ役立つ。俺はMP7を使っていたが、ゲリラ相手ぐらいなら使えなくもなかった。唯一大陸に似たようなの、あったけか」
銃の話になるとニシは饒舌になるのがおもしろい。
「ま、よろしく頼むぜ、相棒」
2人は装備を整えて、ロゼの後ろで勇ましく立った。
軍警察の指揮所は通信アンテナを備えたバスだった。入口は後ろにある。そこでロゼと初老の軍警察の指揮官が対峙している/なごやかな仲間の会話とは思えない。
「ここは俺達のシマだ!」
警察も、あんがいギャングどもと変わんないな。
「私たちの諜報部隊からの報告では、爆薬の輸送も確認されています」
「女がズケズケと口挟むんじゃねぇ!」
今時珍しい差別発言を一番言ってはいけない女に言っているぜ、あの野郎。とはいえ、銀髪のせいでそういう女扱いはされた試しがないので少し羨ましいが。
ロゼは表情を変えなかったが、目の横に青筋が浮くのをふたりは見逃さなかった。
「偵察ロボットをお貸ししましょうか?」
「そういうおせかっかいをやめろと言っているんだ! ほら見えるかあの文字? 爆発物処理班だ。万が一に備えて待機している。あんたらには無理だろう」
「ええ、そうですわね。敵をふっとばす方の専門ですから、私たちは。ですが武器の密輸はすべての犯罪の根源です。販売ルートを含め、情報共有に参りました」
「ふん、ごくろうさんなこって。なら仕事は終わったろ。黙って見てろ」
背中を向けて、2言3言かなり差別的な物言いが聞こえた気がしたがロゼは取り合わなかった。
「さて、今回の任務は、今言ったとおりです。武器の販売網を叩けば私たちの仕事も──」
突然の盛大な爆発音でそれ以上の命令が遮られた。
さっき軍警察の特殊部隊が突入したかと思ったら、ビルの中階層が丸ごと吹き飛んだ。一瞬だけ強烈な光が夜用の人工灯が照らす下層都市を照らした。
レイナは反射的に伏せていたが、不死身のニシと死ぬつもりのないロゼは立ったままだった。
「この臭い。コンポジション・フォーだな」
「爆破訓練が懐かしいですわね」
「とはいえ、素人仕事だ。可塑性爆薬をこんなに大量に使うなんて意味がない」
「そうですわね。燃料を運ぶ人手が足りなかった、とかでしょう」
「ああ、それなら腑に落ちる」
こいつらなんで落ち着いているんだ——向こう側では警官隊が大騒ぎしている。離れて止まっていた救急車が駆けよるが、中に入った部隊は生きてないだろう。
「ブービートラップ。例えば武器のコンテナと思って開けたら、ドカン」
「それは無いでしょう。軍警察といえど特殊部隊です。その手の訓練は受けています」
「となると、遠隔操作だな。どこかで犯人がこちらを見ている」
レイナもつられて周りを見たが、すぐに諦めた。野次馬はわんさか詰めかけているし周り全部が、上層都市を支える柱を兼ねた巨大なビルだ。窓も無数にあるし監視カメラもある。見つけるのは無理だ。
『やほー。お困り?』
シスからの通信がパルから鳴った。
『なんだか楽しそうなことになってるのに、わたしだけ仲間外れなのズルい。勝手に入るからね』
「ええ、いいでしょう」ロゼは同意して「こちらが見えているということは、今は本部の電算室ですか」
『ううん、家から。サイバーネットのディープダイブ用通信回線、工事したから家からオーランド全部のネットに侵れるよ』
「そうですか。では何か掴んだんですか?」
『そだよ』
言うより先に3人のパルがピカピカ光った。アニメ調にデフォルメされたシスが立体映像で簡易地図を指さしている。
『えっとね、爆発の0.0002秒前に不審な通信があったの。プロキシを通してるから普通は感知できないけどわたしなら突破できるの』
つまり爆破野郎はここにいるのか。そしてここからかなり近い。徒歩数分で行ける。
「軍警察がこの区画へ来たのは武器取引の通信を逆探知したからです。罠に飛び込んだと思っていましたが——」
「それを逆手にとって、本拠地から少しずらした位置を吹き飛ばした、というわけか。部下を失えば軍警察も捜査に慎重にならざるを得ない。その間に武器を売りさばいてしまえば、勝ちだ」
なるほどね、それが犯罪者哲学というわけか。
「よし、じゃあさっさと敵の根城をつぶしてしまおうぜ」
『じゃあわたしは監視カメラ映像に浸入するね。敵さんもカメラをハッキングしているかもしれないから録画映像を差し込んであげないと』
ロゼが笑った。いつもの作った鉄仮面の笑顔じゃない、本当に笑った。巨大な自動拳銃をホルスターから抜くと底にやたら長い弾倉を叩きこんだ。
「わくわくしますね。レイナさん」
ほんの少しだけ、これから餌食になる敵に同情してしまった。
ルートはシスが全部策定した。ビルとビルの間の死角を通り抜ける。頭上の監視カメラもすべてシスの権限下にあり、偽の映像をループ再生していた。
『オーランド設計局から設計図を取ってきたよ! 改築されてなければこの通りのはず。出入口はこことこことこことここ。でも映像で見る限り塞がれてるね。こことここの2カ所だけ』
「ではチームを分けましょう。私はレイナさんと行きます。ニシさんは1人でも大丈夫そうですね」
げーマジかよ/反論なんてできるわけもない。
パルを近距離通信モードに変え、イヤホンマイクを耳に挿した。
入口は2カ所ある。ビルの裏手の職員用出入口。もうひとつは道路側/正面に面しているが2階から侵入できる。本来の入り口はボロボロの横断幕に「改装中立ち入り禁止」の文字があり、ごみの散乱具合から、ホームレスがたむろしたせいで閉鎖された、といった感じか。
ロゼのハンドサインでニシが裏手に周り、ロゼは正面へ/レイナも正面へ回る。
訓練と同じ手順でロゼが両手で踏み台を作る/レイナが足をかける=2人の脚力と腕力を合わせて飛び上がる。レイナはちょうど庇によじ登ることができた。
続いてロゼが垂直に飛び、レイナがその手をつかむ/脚力で引っ張り上げ、あとはロゼが自力でよじ登った。
「よくできました」
ロゼに頭を撫でられた。
廃ビルの中は、ホームレスが運び込んだマットレスや段ボールが廊下のあちこちにあった。どれも薄汚れていてカビている。かつてフララーンじゃ全部の路地がこうだったが、一見華やかなオーランドも皮を剥げば同じヒトの街だ。
『ビル全体からパルの反応がしない。きっと敵はただのギャングじゃないから気を付けて』
シスの遠隔操作でパルが消灯した。
3階へ進むがニシの姿はなかった。
『こちらニシ。搬入用シャッターに大型の荷物を運びこんだ跡がある。重く大きい。だが本当に武器なのか? 箱の大きさがばらばらのようだ』
クソどきどきする/楽しい。
ロゼのハンドサイン/ブービートラップに注意。廊下にピアノ線が張ってあるが幸い、つながっているのは地雷ではなく空き缶をぶら下げた簡易的な警報装置だった。レイナがそれを乗り越えようとしたらロゼがさらに引き留める=指を挿した先に電球を割った破片が散らばっている。
おっかねぇ。敵は相当に手練れかもしれない。
ロゼが巨大な自動拳銃×2を構える/レイナも拳銃を構え、電撃警棒のバックルを外した。
粗大ごみが詰め込まれた部屋は除外/次の部屋は空/その次は床が抜けている。
次の部屋はドアが壊れて半分開いている。その横でロゼの耳が動いた。動かせた。
ハンドサイン=銃は無し。
なるほど、敵に知られないよう銃は無し、と。面白い。
レイナはを電撃警棒構えてロゼの合図を待つ。
辛抱合戦=敵が根負けして出てきた。ロゼがどつきジュード―技で投げ飛ばす。レイナも一気に突入。慌ててライフルのコッキングレバーが引けないバカの脳天を殴り飛ばす/電撃無し。
目の端で次の標的を見ていた=拳銃野郎の拳銃を足で下から蹴り飛ばす/電撃警棒を胸に突き当て低電圧を流して無力化。
もう1人の敵は——側頭部にロゼがナイフを突き刺して息の根を止めた。
「よくできました、レイナさん」
「ちょ、頭をなでるのは無しだ」
「そうですか」
まだ息のある敵はタイラップで後ろ手に拘束した。
「こちらロゼ、交戦、敵4、無力化1」
『了解。当たりだったな』
妙にニシも嬉しそうだった。
「敵の情報、聞きださないんすか」
「時間もないですし、正直にお話ししてくれる保証はありませんから」
ふたたび2人は拳銃を構えて上の階へ進んだ。4階は全部密輸犯の倉庫になっていたがどれも銃器以外の装備品だった。防弾ベスト、ライフル用スリング、そして義体用の人工血液が冷蔵庫にあった。
「すごいなこれ。フアラーンで銃の闇マーケットがあったけど、多分そこより品ぞろえがいいぜ」
「工場の出荷品の一部、ですねこれ。製造工場のシリアルナンバーがそのままだなんて」
「最近、武器、たくさん作ってるっしょ。そのせいで管理が緩いんじゃね」
「ふふ、ええ、そうですね」
おしゃべりは短めに切り上げられた。
『こちらニシ。敵発見。5階だ。ワンフロア全部が武器倉庫になってる。敵は見える範囲で6名。警戒態勢にあるようだがまだ気づかれていない。明かりは投光器だけ。静かにやれると思うが』
「派手に行きましょう」
ロゼは両手の大型拳銃を、互いの遊底を引っ掛けてスライドさせた——なるほど、そうするのか。
パルの敵味方表示を頼りに、ニシに合流できた。ドアの向こうではヒトの気配と話し声が聞こえる。警察へ奇襲に成功したことと、それに反論しているような、そんな雰囲気だった。
鍵はかかっていない。突入はレイナがドアノブを握り、ニシ、ロゼの順で控えた。ロゼがニシの肩に触れ、ニシはレイナの肩に触れた。
やるっきゃない。やってやる!
ドアノブが周ると同時にニシが蹴ってドアを開け正面にいた2人をあっという間に撃ち殺した。ロゼも姿勢を低く侵入しレイナが続いた。
武器を収めた木箱が積みあがっていて視界が悪い。しかし天井近くまであるので上から奇襲されることはなさそう。ニシは右手の壁沿いに進みロゼは左へ向かう。
独特なロゼの大型拳銃の咆哮が聞こえる。ほぼひとつらなりの単射で敵の体が吹き飛ぶ。レイナは地面に転がる死体を乗り越えて進んだ。——これあたし、いらなくね?
敵に囲まれるロゼ/敵4。
大型拳銃を左右に交差/対人センサーが感知=同時に引き金を絞る。
次=左の敵を倒し、右の拳銃で投光器を破壊。暗闇の中で敵は闇雲に乱射/ロゼの眼光が暗闇に光る。
両腕を撃ち抜き無力化/敵を盾に陰に潜む敵×2を倒す/盾を放り捨てて盾の脳天に一撃を食らわせる。床一面に脳髄が放射線状に飛び散る。
「おっかねぇ」
横=見えた。事務所か何かの小部屋から1人が走って逃げる/とっくに銃を構えている。
拳銃の連射。猛射。そのうちの何発かが足に当たってすっころんだ。
「おうおう、痛がる演技、上手いな。だがよ、撃たれた瞬間は痛くないんだぜ」
自分で撃ったんだからよく知っている。
「くそ、まて撃つな。降参だ!」
40か50歳手前の男が泣きながら漏らしながら鮮血の流れる足を抑えている。この前もちょうどこんな場面で腕からカマキリの鎌が飛び出したクソアマとやりあったせいで気が抜けない。
「念のため、手足全部を撃ってやろうか」
「ひぃっ!」
しかし横から手が伸びて止めた。
「幸い、生身のようですわね。武器商人さん」
「違う、俺は武器商人じゃない」
あーあ、これは面倒だ。拷問コースだ。
「生け捕りか。よくやったレイナ」ニシも駆けつけて足のケガの手当てを始めた「あっちの敵も一掃した。降伏勧告をしたんだけどな」
「したけど?」
「連邦軍、そうとう恨みをかってるみたいだ。つまり、そういうこと。怒りは死をもってのみ鎮めることができる」
んだそれ、トーキョーの格言か?
「武器商人じゃない」痛みで気を失いかけている「虚無の災害が、あちこちに。みなに武器が必要だ。でも連邦軍は武器を倉庫にたんまり抱えているのにひとつも配ろうとしない」
恨み節。あるいはこの男の戦う理由。
ニシが手錠をかけている間も抵抗を示さなかった。クソッタレ。今ならアーヤの言っていることがほんの少しだけわかる。
ロゼが貨物の上に載っていたバールを手に取る。軍用の物資は合板に釘を打って止めている。それを無理やりこじ開けた。
緩衝材に包まれていたのはライフルだった。しかし博物館レベルで古風だった。ボルトアクション式で挿弾子を差し込むタイプの。量産のためにストックやらは木材から強化合成樹脂に変わっている。古風だが口径が大きいので腐獣2,3匹は貫通して倒せる。
「こっちは急造品のサブマシンガンだ。子どもでも扱える」
ニシが別の木箱を開けた。こちらはやや乱雑に、鉄パイプのような小銃が詰め込まれている。
「本当に腐獣対策に? でもなんでまた、ここオーランドだぜ」
答えを知りたかったが、当人はすでに失神していた。
「何とか解決できてよかったですね」
レイナが古風なライフルを手に取っている間、ロゼはさっきの男が出てきた事務室を見ていた。男のパルと書類を抱えている/レイナに見られないように隠した。
「お、お疲れさまでした」
「私は本部に連絡してきます。この規模だと我々の手には余るので」
やっぱり=ロゼは押収した証拠をレイナに見せないよう防弾ベストの内側にねじ込んでいる。
「どーしたボーっとして」
「こら! 急に頭なでるな。あれか? 銀髪フェチかてめー」
「かもな」
おいクソ、そこは否定するところだろう。
「任務はうまくいったんだ。喜んだらどうだ、レイナ?」
「うん、そうなんだけどさ」
変な仕事だった。ほんとにこいつら、悪人だったのか。もしかしたらあたしたち、とんでもない間違いをしてるんじゃないか。
物語tips:ロゼの拳銃術
ロゼは特殊改造した大型自動拳銃とブレーメン古式柔術を応用した近接格闘術を操る。ニシが言うにはこれは"ガン・カタ"で、レイナはこちらのほうが語呂が好きらしい。
大型自動拳銃は対人センサーが組み込まれており標的を捉えた瞬間に振動する。味方のパルがある場合は振動しない。マガジンは起き上がりこぼしの要領で自立する。銃の薬室は2発装填できるようになっており、マガジンを交換中にももう1発撃てる。




