15
連合から連邦へ抜ける検問所はひどく混んでいた。
ミニバンは肉巻き包みのごとく人を詰め込んで旅行鞄は屋根の上に積み上げている。運び屋のバンの窓からは子供が不安そうに外を見ている。車列は反対車線にまであふれている。それでも砂漠を超えても連邦領域へ侵ろうという輩はいなかった。
連合側の検問所を抜けるのはそう難しくない。そして10分ほど非武装地帯が続き、連邦へ入る検問所がゲートを構えている。
検問所を守る兵士は長大なライフルを構え、ヒト々の方を見ている。手にしているのは対テウヘル用の大型ライフルで、普段は腐った犬面を撃ちぬいているであろう兵士たちは嫌な顔ひとつせず、偽造旅券で追い返される難民たちを監視塔から見下ろしている。砂漠に一歩でも入ろうものなら大口径弾で撃ち抜かれる。
もっとも難民たちも砂漠へ出ればテウヘルに食い殺されるので下手な真似はしなかった。
渋滞の真ん中で、レイナはバイクを降りて後ろにいるバギーの仲間たちに会った。
「ちくしょうが、ぜんぜん進まないじゃないか」
「だよねー。こうも日差しが強いと真っ黒に日焼けしちゃう」
アーヤのサングラスがぎらりと太陽光を跳ね返したのでレイナは目を細めた。黒い曲面に銀髪のボサ頭が映っている。
「いつもナニカ塗ってんじゃん」
「日焼け止め。チョー高級品の」
「じゃあ大丈夫じゃんか」
日焼け、といえばシスの肌もこんがり焦げた色をしている。薄茶色の肌に金髪がよく映える。完全義体の肌なので日焼けなど気にせず、ニシの膝の上でぐっすり寝ている。
「限度があるのよ」
アーヤがポーチを開くと、ごろごろとスプレーやらチューブ入りクリームが姿を現した。レイナならショットガンシェルを詰めるミリタリー・ポーチだったが、アーヤにとってはお便利ポーチだった。
そのうちのひとつを手に取ると、顔に向けてスプレーを噴霧した。ほのかに香りが漂う。
「女みたいなニオイだな」
「女でしょ、私たち。それともタマ付いてたっけ、レイナ」
いちいち余計な一言いいやがって。
「言い方がだんだんニシに似てきたな」
「——俺は上品な兵士だ。んなこと言わない」
なんだ、聞いてたのか。てっきり——
「レイナ、俺がシスを膝にのせて鼻伸ばしてた、とか思ったろ」
「惜しい。伸ばしてるのは別んとこと思ってたぜ」
よく映える目つきでニシに睨まれたが、まあいい。いい暇つぶしだ。
「えへへ、レイナちんの場合、ニシ君と話すとアレがアレになるでしょ」
「うっせえ、尻軽女」
そんな初心じゃねぇ、あたしは。賢いニシでもガールズトークについていけていない。いいことだ。
珍しく車列が1台分進んだので、レイナは前駆二輪を押した。イグニッション・キーだけを回すと反重力機構に通電して青く光り浮かび上がる。ほんの軽い力だけで進んだ。節電のためすぐキーは切った。
「ちくしょう、まだかよ。どーなってんだ」
「今、都市防衛隊に連絡しています。静かに待っていてください」
レイナの銀髪が跳ねて天を向いた。足音無しにロゼが背後に立っていた。
「や、了解」
装甲トラックのほうは、青い光が灯って半重力機関が動いている。それを押しているのはネネだった。目が黄色に光っている。周囲の目をよそに、トラックを押して動かし終わるとぐぐっと背伸びした。
「軽い運動ってか? というかブレーメンの力は機密じゃ」
それに対してロゼの返事はなかった。
「下卑た会話は兵士仲間で楽しむ十八番ですが、ほどほどにしましょうね」
「すんません」
ロゼに対して“身体的ジョーク”なんて100と思いつくが、やはり怖くて言えない。
レイナはまたバギーに戻ってフレームにもたれかかった。
「あららレイナちんが戻ってきた。私のことが恋しかったのかな」
投げキッスするアーヤの額をたたいてやった。
「暇なんだよ。お前は良いよな」
アーヤはパルを起動したままだった。視差を利用した立体映像は、横からじゃわからないが連絡相手はどのみちシリコン陰茎野郎だろう。
「ここ、シーウネの電波が使えるからさ。サイバーネットにつなげて映画でも見てたら」
「あたしら仕事中だろ」
「ニシ君が警戒していてくれるし」
「お前な」
「俺は一向にかまわない」ニシは地平線を見たままレイナと目を合わそうとしない「アーヤはずっと運転してくれている。今ぐらい休んでもいいだろう」
「運転、代わってもらってもね、私は銃が下手だしちょうどいいのかなって。シスちん、膝の上に抱えるのも重いしさ」
へぇ、そんなもんかね。
ロゼは装甲トラックの運転席で軍用無線を手放そうとしない。一方でネネは垂直方向に飛び上がると、トラックの上で体操を始めた。
「婆ちゃん、自由だねぇ。おっ、ニシ見てみろよ。パンツが見えるぜ」
「その手には乗らない」
「マジだって。ストッキング越しに、あれは黒だ」
「レイナ、ブレーメンの目は鳥のように、耳はフクロウのように感覚がするどい」
「だから?」
「こんな話してたら、指パチンされるってことだ」
ぐ、うっかりしていた。
「んにゃ、違うね。ニシが見たら婆ちゃんは喜ぶ。だからあたしはおとがめなし」
「なんだそれ? 人に見せびらかす趣味なんてネネにはないだろう」
アーヤも同調した。
「そうよ。シャワー終わってパンツ1枚でうろつきまわるレイナと一緒にしないで」
「だーれが露出狂だって?」
「そこまでは言ってない」
シャワーの後の、すがすがしい涼しさを無駄にしたくない。それだけだ。それにパンツは履いている。それぐらいの“お行儀のよさ”は分かっている。ニシに裸を見られても、最初こそどぎまきしたが奴が無反応すぎるのでもはや乳を揺らして歩いても気にならなくなった。
「シスだって素っ裸で歩くだろ」
「シスちんはいいの」
「なんでだよ。機械だからか」
「あーうん、たしかに。でもねレイナちん、知ってる? 男の人って作り物の女体でも興奮して大きくなるんだってさ。人形にアレ突っ込んで遊ぶんだって」
「はぁ、マジかよ。変態だな」
2人してニシを見たので、
「俺を見るな、俺を」
「でも否定しないんでしょ」
アーヤがスケベ顔で訊いた。
「そういう男がいるのは、否定しない。だが俺はそうじゃない」
「でも変じゃない? こんなに美女ぞろいなのに、ちんちん大きくなったの見たことない」
「……見てるのか?」
「あーいやいや、見てるっているか言葉の綾っていうか。そう、視界に入っているだけ。なんてね、あはは」
嘘が下手すぎるだろ、てめー。
「そうだな」
バカ話なのに、ニシは真顔で考え始めた。
「俺は、クソ神のせいで生き物かどうかも怪しい。寓像のことだ。生き物のように、相手を見つけ、欲のまま、短絡的な快楽を享受する。あるいは、人生目標? そんなのも俺にとってはおこがましい。家族や子供や孫や親戚や」
「考えすぎじゃね?」なぜかわからないがそんな言葉が思いついた「チンコあんだろ? インポ野郎ならシャーナイけどよ、そうじゃないんならそんな難しく考えるなって。あれだ、神は〇〇するななんて言ってないんだろ。だったら普通でいいんじゃね。やりたいように生きる」
ニシほど賢くないのでどうもうまく言えない。
ニシは、振り返った。ほんの少しだけ、わずかに見たことない笑みだった。
「そうか、ありがとうレイナ」
ナニに対しての「ありがとう」かいまいちパッとしない。
反対車線では検査で追い返された難民たちの車列がずらずらと続いている。そのせいか待機中の車列も一気に前へ出た。バイクを押してレイナが戻ってくると、バギーの2人が通信機の点滅を見ていた。
「救難信号?」
「ん、共通周波数で。距離はえっと——」
新しい軍用無線に乗り換えたおかげでおおよその方角と距離がわかる。
「——15分かな。あの丘を越えたあたり」
太陽の輝く方向を見てみた。ここは非武装地帯——ニシに言わせれば国境らしいが、どの勢力も軍隊を置かないお約束になっている。つまりはびこるテウヘルで密輸屋どもを封じ込めようという昔ながらのやり方だ。
「ちょっくら助けに行くか」
レイナはぐっと背伸びした。ケガが治ったばかりの両足で足踏みをする。
「ちょ、マジで?」
「どうせロゼが軍に話付けて優先的に通してもらえるっしょ。それまでの暇つぶし。たかがテウヘルだ。連邦に入ったら平和すぎて暇だろうしよ。思いっきり銃ぶっぱなそうぜ」
「もう、レイナはトリガーハッピーだなぁ。でもロゼ隊長はどう言うかなぁ」
わかった、ロゼに話付ければいいんだろう。
レイナがトラックに詰め寄ると、ロゼが窓を開けて出迎えた。
「隊長、難民からの救援要請です」
しかしロゼは表情を変えない。美女の鉄仮面ほど恐ろしいものはない。
「車列の護衛はどうするのです」
おまえら2人が最強だろう、と言いかけたが。
「あたしと、そうだなシス2人だけでなんとかできる」
再びの鉄仮面だった。その後ろでネネの声が聞こえた気がした。
「いいでしょう。ですが、その難民を助けても彼らは連邦に入れる保証はないのですよ」
「よく言うだろ、隊長。『命あっての物種』って。ブレーメンのことわざだっけか」
「違います」
おっかねぇ。
「ですが、いいでしょう。行ってきてください」
ヨッシャ——レイナはガッツポーズをして戻るとぺしぺしとシスの頭をたたいた。
「仕事だぜ、起きな」
すると機械的にシスの目が開いたのでレイナはたじろいだ。
「いっぱい撃てる?」
「テウヘルだらけ」
「うん、行く!」
スイッチ・オフからオン。機械仕掛けの少女はライフルをひっつかむとレイナのバイクの後席へ飛び乗った。
前駆二輪で丘を越えると、現場はすぐ見えた。お決まり通り緑の発煙筒を焚いている。そのそばにうごめくのはテウヘルだった。
「さて、シスの狙撃地点は」
「ここでいい」
「でもよ、テウヘルに襲われるかもだぜ」
「大丈夫。立射する。テウヘルが来たら逃げられる」
シスの機械兎の耳がぐるりと一周する。
レイナは前駆二輪を滑走させて難民の車列に向かった。バスが3台で、うち1台のエンジンルームを開いているあたり、修理中に襲われたんだろ。
テウヘルのうち1匹がレイナに気づいて顔を向ける/とたんに散弾を浴びて首から上が引き裂かれた。
レイナはバイクを飛び降りて2匹目の心臓を背中から撃ち抜いた。
空薬莢を排出/狙撃弾が2匹を同時に倒す。
テウヘルの巨体が鋭い爪を掲げても、レイナは淡々と/つまらなそうにシェルを詰める。
射撃&射撃=排莢。バスまでの道のりができた。
横から襲い掛かられる気配=鞘から抜いたマチェーテを振りぬく。左腕と頭がまとめて跳ねる。
もう反対側のテウヘルは足で押しのけて首に刃をたたきつける。感覚を失って歩くテウヘルは、他のテウヘルを巻き込んで倒れた。
この隙にシェルを詰める。遠くの丘からは超音速の弾丸が煙を引いて青い空を横切るのが見える=いい連携だ。テウヘルの群れがあらぬ方向を向く。
「軍の助けか!」
バスの窓から禿げ頭がひょっこり顔を出した。軍用の三三式ライフルを後生大事に握っている。
「いや、名うての傭兵」
んだよその微妙そうな顔は。銀髪がそんなに嫌ってか。
さらに射撃×2。テウヘルはだいぶ減ってきた。地面からもがいて出てきたテウヘルは、レイナが銀髪の力をもって首を蹴り飛ばす/傷が少し痛い。
シスの狙撃弾を最後にテウヘルは腐った黒い汁をまき散らして倒れた。骸の山は砂漠の風に吹かれ、すでに干からび始めていた。
レイナが前駆二輪を取って戻ってくるとバスから乗客が膝を震わしながら出てきた。子供から爺までいるが護衛は退役軍人らしい禿げ爺1人だけだった。
「こんなところから連邦に入ろうだなんて自殺行為だっての」
バスの修理はまだ終わってないらしい。男3人がかりで、冷却水を足したり電気の配線を引っ張り出したりしている。
「夜中に野盗に襲われてね。それで道をそれてしまった」
禿げ爺が教えてくれたが、都市防衛隊はそのいいわけじゃ納得しないだろう。
「ともあれ、間に合ってよかったぜ」
「なんとお礼をしたらいいか」
「気にすんなって。あたしは銀髪で名うての傭兵だ。たかがテウヘルごとき朝飯前だって」
レイナはお行儀よくショットガンの弾を抜いて弾帯におさめた。しかし禿げ爺は目を白黒している。
「傭兵なのに報酬はいらない?」
あーしまった。
「あれだ、趣味、つうか。そう、運動だ! この先さ、検問で大渋滞なわけ。だから暇で暇で。腰と足を伸ばすため」
「そのためにテウヘル退治?」
「慣れてんの、あたしたちは。以上。連邦に入れるかどうかは、知らん。多分無理だな。ひとつ手前の町の顔役でも当たってくんな」
「それなら、問題ない」ん、どういうことだ「君、軍の者じゃないのかね? ちらりと見えた拳銃は軍用のものだった」
「軍人を殺して盗んだかもしれないぜ、傭兵はそういう生き物だ」
だめだ口先だけの嘘が通じない。
「このバスにはね、科学者とその家族が乗っている。“司書”たちが連邦に帰るため書類を整えてくれた。帰るのは、ま自力だがね」
ああ、なるほど。つーことは回帰主義の皇様が嫌がるような天才たちというわか。
「バスの修理が済んだらすぐハイウェイに向かう、ありがとう、名うての傭兵」
「へっ、いいって」
レイナはそれだけを言い残すと丘の上へシスを回収して渋滞ばかりの車列に戻った。
「レイナ、なんか変わったね」
「何が。あたしはいつもと同じだった」
「えへっ、話が聞こえてた。報酬を断ったんでしょ。前までのレイナだったら、テウヘル1匹残してさ、窓の外に立てて『助けてほしけりゃ金が先だ』って」
「まあ、そうだけどよ」
「へへ、いい子いい子」
シスは小さい手でレイナの跳ね散らかしている銀髪を撫でた。
仲間たちの元へ戻るとすぐ出発とあいなった。
連邦第2師団の都市防衛隊の車両がレイナの前を走っている。シーウネの都市防衛隊の兵たちで、軽装甲高機動車にでかでかと識別番号が四方に書いてある。
警備ゲートを停車することなく越えた。その先は陣地が構築されて可変戦闘車までが砲口を殺到する難民たちに向けている。
ハイウェイに乗ると1時間もしないうちにシーウネ市内に着いた。よくある連邦の街だった。静かで整理が行き届いている。郊外の工場地帯を抜けると記憶に残らないほどありきたりなオフィス街だった。
「……いやまて、静かすぎじゃね」
経路はロゼの運転する装甲トラックが先行するので、レイナは最後尾で街をのんびり眺めていた。警察は装甲車の横に立ってライフルを装備しているし、やけに都市防衛隊の軍用車とすれ違う。たまに見かける市民たちも背中を丸めて早足で通り過ぎていく。
「戒厳令、これが」
今朝のブリーフィングでロゼが言っていた。シーウネは難民の流入で治安が不安定にならないよう、戒厳令を敷いている。全員が納得顔でうなずくせいであたしは言葉の意味を質問できなかった。
車列は連邦ビルの前に停車した。素人がデザインしたみたいな、真四角柱で全面がミラーガラスで覆ってある、空と同じ色のビルだった。今日は曇り気味な空なのでまだらな灰色をしている。
ロゼとネネが連邦政府ビルに入っている間、残り4人でトラックの周囲を警備した。レイナは手を上着の背中に回して拳銃をいつでも抜ける姿勢だったが大きくあくびをした。
連邦ビルの敷地には民間警備員がいるし、憲兵だっている。あたしらが銃を抜くことなんてあるわけがない。
連邦ビルの中央には銅像が立っていた。緑青が浮いている。古いんだろうか。兵士が、兵士を抱きかかえている。そういう像だ。いかにも軍事施設らしい趣味をしている。
「これは第1次テウヘル戦役のときのものだ」
ニシが立っている。右斜め後ろ/ちょうどいい塩梅で回し蹴りが決まる位置だ。
「ふうん」
「それだけ? せっかく話のタネを持ってきてやったのに」
「あたしだって字ぐらい読める」銅像の下には碑文がある「なになに、この街を守るため散っていた名もなき兵士たちへ」
わからん。
「1000年前の第1次テウヘル戦役。連邦軍には多くの強化兵がいた」
「強化兵、たしか人工兵士だっけ?」
「そう。炯素の肉体に遺伝子を転写して作った兵士だ。生後3年程度で十分戦える兵士が育つ。炯素人間……旧人類の知識を使って作られたから、当然戦後に工場が破棄されるわけだが、それ以上に当時の皇は強化兵の末路に心を痛めてたそうだ。ヒトと同じ心があるのに、圧縮知育で戦いに恐怖を覚えないよう洗脳されている。その上、寿命は長くない」
「ふうん」
「戦争の終盤、このシーウネは首都オーランドを守る絶対防衛線が敷かれて第2師団の精鋭が集結していた。反撃の準備を整えている間に、隙を突かれた。大陸西部に広く布陣していたテウヘル軍は、一挙にシーウネへ集結、ここの防衛部隊を蹴散らして全軍をもってオーランドへ攻め入ろうとしていた」
「へー、やるじゃん」
「補給線が伸び切っている以上、テウヘル側もそれ以上の継戦は不可能だった。だから短期決戦に持ち込んだ。ま、兵士の命を考慮しないのなら定石だな。その後は、このあいだネネが語った通りだ。数千のテウヘル機甲部隊はネネの寓像で撃破、時間を稼いでいる間に中距離弾道ミサイルで浸食弾頭を大陸の反対側まで飛ばした。現代に続く禍根の原因」
「へへ、面白い昔話だった」
「あれ、興味なし?」
「大昔のことだし。つかニシ、よく勉強したな。でも勉強だけじゃないって感じ。ネネ婆ちゃんに教えてもらったとか」
「それもある。が、それ以前から知っていた。ニケの爺さんからいろいろと聞かされたから」
「ああ、よく話に出てくるブレーメンの爺さん」
「この像のモチーフだよ。抱え上げられているのは爺さんの思い人。戦死した強化兵。皇の遺伝的妹。この像を作るにあたり心境は複雑だったらしいが、皇の思いもあって反対はしなかったとか」
「ん、ちょっとまてよ、おまえ、トーキョーとかいう遠いところから神に連れてこられたんだろ? なんでブレーメンの爺と話ができるんだよ。辻褄が合わねーって」
「やっぱり気になる?」
「あったりめーだろ」
「そうか、話しておくべきか」
くそ、なんでそうじっと見つめてくるんだ。つい顔をそらしてしまった。照れてるわけじゃない、あれだ、こいつの背中で太陽がぎらついていたせいだ。
「だが、レイナ、君に信じてもらえるかどうかわからない」
「信じるかどうかは、話を聞いてから考える」
ニシはレイナに顔をぐっと近づける。レイナもほんのわずかにたじろいだが、唇をまっすぐ結んだまま睨み返す。
しかし、ニシはふっと切れたように踵を返した。
「ロゼさんたちがビルから出てきた。すぐ出発だ」
「ちょ、待てよ。話の続きは」
「少し考えをまとめさせてくれ。こういうのには慣れていないんだ」




