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3-2

 バルトさんが扉をノックすると、部屋の中から 入れ! と声がする。

 私はバルトさんの後ろに付いて部屋の中へと入ると、ソファーに腰を下ろしながら招待客の名簿を見ていた。


「ザカリー様、シアをお連れしました」

「ああ」


 ザカリー様は切りのよい所まで目を通すと名簿をテーブルの上に置いた。


「君がシアか?」

「あっ!はい、そうです」


 昼間、庭で聞いた声よりも低い声で名前を聞かれる。


「いろいろと聞きたいことがあるが・・取り敢えず今回のパーティー客が全員帰るまでの間、俺の専属とする。これは決定事項だ」

「・・・えっ?!それって!えっ?」


 一瞬何を言われたかわからなかった私は、ザカリー様とバルトさんの顔を交互に見た。


 話は以上だ!明日の朝からこの部屋へ来い。


 そう言い終わると私はバルトさんに促され廊下へと出た。


(あの女嫌いのザカリー様が?身の回りの世話も侍女長か、従僕しか付かせないザカリー様が??)


 頭がパニックになっていると、バルトさんが自分の執事室へ誘ってくれた。


「熱いですよ」


 そう言って出されたのは香高い紅茶。

 私はカップを手に取るとまず香を楽しんだ後、紅茶を口にした。


「おいしい・・です」

「お口に合ったようで良かったです」


 向かいの席に腰掛けた。


「シアさんは・・元貴族令嬢、だったのですね」

「何のこと・・でしょうか」


 私は誤魔化したつもりだったがバルトさんの目に嘘は通用しなかった。

 私は一つ息を吐くと


「騙すつもりは無かったのです。」

「ええ、貴女の言葉遣いや姿勢、紅茶を飲む姿は貴族の・・高位貴族の教育を受けた者にしか出来ません」


 そう言いながら自身で淹れた紅茶を飲む。


「ザカリー様もお気付きになられたようですね。それと、昼間に何かありましたか?ああ、理由は言わなくて結構です。ザカリー様が貴女を付けたのもおそらくそれが理由でしょうから」

「・・・」

「いつか、聞かせてもらえますか?」


 バルトさんは優しい目で私を見つめる。

 私は黙ってコクンと頷くと、優しく微笑んでくれた。


「明日から数日間ですがザカリー様をお願いしますね。出来たら令嬢達から守って頂けると助かりますが・・」

「私には・・荷が重いかと・・」


 紅茶を飲み干すと部屋から出る。

 私はフーッと溜息をつくと自室へと帰った。部屋へ戻ると同室のマリンだけでなく厨房のキャルとアリアもいた。


「バルトさん、何の話だったの?」


 三人に詰め寄られた私は、明日から数日間の間だけザカリー様専属になると伝えた。

 三人の反応は・・想像通りだった。


(何か今日は色々あり過ぎて頭が混乱してるわ)


 カインの事を忘れた訳ではない。

 なぜこの国にいるのか?

 執務官とは・・?

 確かに王宮へ出仕してはいたけれど・・カインは私と結婚したらゲート伯爵家に婿入りする事になっていた。


(私がいないこの一年でいったい何が起きたの?)


 頭が悶々としながらも、明日からの事を考えると眠れなかった・・

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