第二章 前 船の中で
「あの・・ベラスター卿ちょっと・・」
「?」
ブルガイド王国からバレイド国へ向かう船の中。
残り数日でバレイド国へ着くと思われる夜、婚約者のアリシア・ゲート伯爵令嬢付きのメイドでブルガイド王国の貴族で、数日間お世話になったザザーライン侯爵家の諜報一家であるワルトール男爵令嬢のマリンが、事もあろうか俺の部屋へとやって来た。
「マリン、どうかしたのか?」
俺は部屋へ入れず、廊下へと出た。
「あの・・シア様の事でお願いが・・」
「シアがどうした?!」
シアは親同士が決めた婚約者だが、相思相愛の仲で今回の件が全て片付いたら結婚式を挙げる予定になっている。(俺の中で!)
「実は先ほど眠れないからと二人でバーへ行ったのですが・・そこで・・」
とりあえずシアの元へと駆けつける事にした俺は、マリンから聞いた話を頭の中で思い出す。
この船の旅もあと何日か分からないし、せっかくだから二人で思い出作りにバーへ行ってみよう!と足を運んだ。
いつもは俺と護衛二人、合わせて五人で行っているのでたまには二人で!と向かったらしい。
始めは美味しいツマミと軽めのお酒で良い気分だったが、近くで飲んでいた他の客の
「明後日にはバレイドに到着だ!」
の言葉を聞いてから、シアの様子がおかしくなったと・・
マリンに言われ船の甲板に向かうと、シアは両肩を抱えるよう縮こまっていた。
「シアどうしたの?こんな所で夜風に当たっていたら風邪をひくよ?」
俺は部屋から持ってきたカーディガンをシアの肩へかける。シアは俺の方をチラッと見たがそのまままた真っ暗な海を見続けた。
(何があったかわからないけど、今は少し付き合うか・・)
そう思いシアの肩を抱くと自分の方へと引き寄せた。すると震えながら
「明後日にはバレイド国へ到着すると聞いたの・・」
「・・」
「あちらの国を出る時は嬉しかったの。自分の、両親がいる国へ帰れるんだって・・。でもね、実際に近づくにつれ・・怖いの・・。伯父家族に会うと思ったら・・怖くなって・・」
「シア・・」
いくら俺が守ると言っても、この国を出るまでの数年間はあの家族に虐げられて来たんだ。そう簡単に気持ちが切り替えられる訳無いよな・・
そう思ったら逆に簡単に考えていた自分が恥ずかしくなった。シアの立場になれば怖くなるのも当たり前だと・・
俺はシアを抱きしめると、安心させるように話始めた。
「シア聞いてくれる?シアの今の気持ち、正直俺にはわからない。でも、怖くなるシアの気持ちはわかるから・・そんな時は一人で抱え込まないで欲しいな」
「でも・・」
「僕は二度とシアを手放さないし、後悔もしたく無いんだ・・。だからね、不安になった時は何も話さなくても良いから俺の所に来て欲しいです!」
「・・え?」
俺は笑いながら
「さっきシアを案じてマリンが俺の部屋を訪ねて来たんだけど・・シアだと思って喜んだんだ・・」
「!いっ、いいの?カインのお邪魔にならない?」
「邪魔なんてならない。来てくれたら嬉しい」
俺の言葉を聞いて安心したのか、俺にもたれるような形で眠ってしまったシアを横抱きに抱えると、
「さすがですね!シアの婚約者を名乗るだけありますわ!」
「俺は唯一の婚約者だから当然だ!」
どこかで見ていたのだろうマリンと護衛が影から出て来た。気配も無くその場から現れるとは・・ザカリー様もすごいメイドをシアに付けたものだな。と、感心してしまった。
「で?どうなさるおつもりですか?」
「?部屋へ運ぶよ?」
「どちらの?」
「・・・もちろん・・君たちの」
マリンはスキップしながら俺の前を歩いている。
俺は・・半分納得出来ないがまだ婚約中の身、仕方が無いと諦めた。
明日の夜は船での最後の晩餐になるだろう。
国へ着けばお互い忙しくなり、ゆっくり食事を楽しむ時間も無くなるだろうからな・・
「明日の夜は最後の晩餐だから、皆少しお洒落して集まろう」
シアをベッドへ寝かせ部屋から出る時、マリンと護衛にそう伝えた。シアにはマリンがいるから大丈夫だろう。
そう、国へ着けば片付けなくてはならない事が山ほどある。それを一つずつ片付けていく。
大変な事になるだろう。
もしかしたら王宮内も二つに分かれてしまうかも知れない・・
でも片付け無ければ前ゲート伯爵夫妻の死の原因が明らかに出来ない・・
「シアを連れて来るには早かったかな?」
それは俺が出来なかった・・
守ると決めたんだ、今度こそ俺が・・
今書いている話が完結しましたらこちらの話の続きを書こうと思ってます。
正直少し間が空いてしまったので、修正しつつ書いていきます!!




