11-5
「モーガン、お前が取引をしていたのはバレイド国のその伯爵か?」
カインの話を聞いた後オーランド殿下がモーガン様へ声を掛けた。モーガン様は殿下の顔を見ると
「相手が誰なのかは・・私は知りません。ただ日にち指定の手紙が鳥に寄って運ばれて来るのです。私はその日に馬車を用意してその場で待つだけです。あとは・・」
チラッとハンナの方へ視線を向ける。
ハンナはモーガン様を見ると全てを諦めたように語り始めた。
「奥様が亡くなった後、ある男が旦那様に話があるから仲介して欲しい。と近付いて来ました。その男はこうも言っておりました。奥様の様な方を助けたい。その為にブルガイド国で力になってくれる貴族を探している!と・・」
ハンナはバージニア侯爵夫人に仕えており、家族以上の気持ちで支えていた。
奥様の事を持ち出され正常な判断が出来なくなったのだろう。ある意味ハンナも利用されたのだと思う。
そして・・それはモーガン様も同じだったはず・・
「悪い事をしているという気持ちはありませんでした。困っている貴族のために貧しい平民が身体を張って助ける。素晴らしい事だと思いましたよ」
「わたしも・・今思えば妻が亡くなってからの私は何が正しくて、何が間違いなのか分からなくなっていたんだと思う。だが、その男の言葉が何も間違っていない、正義なのだと・・」
オーランド殿下は もう良い。 と言い、カインのに続きを促した。
カインはもう抵抗する事を諦めたモーガン様を横目に話始める。
「バート伯爵夫妻は伯爵領へ潜入しました。隣国へ帰る途中に馬車の車軸が壊れ立ち往生したと言って」
両親は若い女性を攫いブルガイド国へ売り飛ばしているであろう伯爵家へ入り込み、その証拠を掴んだ。
その証拠を持って王宮へ報告に来たが、何らかのトラブルがあり国王様へ証拠を渡す前に命を狙われたのだと・・カインは言った。
騎士団は事故と片付けたが、やはり腑に落ちない点が多過ぎたため秘密裏に調査を進めた。
「バート伯爵家に帰るのに、何故あの道を通ったのか。あの道は馬車で通るには不向きな道だ。そして、二人の遺体はあったのに御者の姿が無かった。もし亡くなっていれば遺体があるはずなのに・・」
そして極め付けが母のネックレスだけが奪われていた事。
イヤリングも指輪もしていたのに、盗まれたのがネックレスだけだった事がずっと引っ掛かっていたと。
そしてそのネックレスが最近、オークションの目玉商品として出品された・・
「きっと夫人が身に付けていた装飾品が鍵なのでは?と・・そしてその鍵がシアにあるのではと・・」
一斉に私の方を全員が見る。
私は慌てて頭を横に振り
「わっ、私は何も聞いておりません!もし聞いていればとっくにお話しております!」
別に悪い事をした訳では無いのに、何故かあせって否定する。
「誰もシアを疑ってなんかいないよ」
笑いながらカインは言った。そして
「フィリップさん、何か知っているのではありませんか?」
と、疑問を投げかけた。
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