9-3
「えっ?いつの間に?」
私は素の状態で驚いた。
彼女が身に付けている物は全て伯爵夫人の物だ。その前はザカリー様が用意した装飾品だと聞いた。
(本当は私が用意した物を身に付けて貰いたかったが・・)
「言いましたよね?伯爵家と男爵家で作った物だと。アラン様こちらを身に着けてください」
そう言って渡されたのは普通のイヤーカフだった。
「こちらは伯爵様が身に付けておられた物です。こちらと令嬢が付けているイヤリングは、通信出来るようになっております」
私は手渡されたイヤーカフを耳に付け、深呼吸をしたあと静かに話しかけた。
「シア?シア、聞こえる?」
[・・えっ?]
通じた!!
私の反応に周りの人達も驚いた様子だった。
「シア、そのまま聞いて。答えは一言だけでいいから・・無事、なんだね?」
「ええ」
「君は今一人?」
「いいえ」
「他にもいる?」
「ええ」
そうやって少しづつ情報を得ていった。
とにかくシアとメイドの無事が知れただけで安心した。
その後も怪しまれないように情報を得ていくと二人の居場所と犯人がアッサリとわかり、ザザーライン侯爵家は水面下で二人の救出のため動く。
もしかしたら相手の間者がまだ潜んでいる可能性があるからだ。ザカリー様は救出作戦の全権を侯爵様と第二王子殿下から与えられ指揮を取る。
殿下はこの件を陛下と王太子殿下へ伝えるため王宮へと戻る。そして帰る際に
「君にも迷惑と心配、不安をかけるがザカリーを助けてやって欲しい。そして、そちらの殿下には改めて謝罪をすると伝えてくれ」
そう言いながら肩を軽く叩くと、自身の愛馬に跨り駆けて行った。
私は周りに人がいない事を確認した後語りかけた。
「シア、今は大丈夫?」
「!カイン?ええ、マリンしかいないわ」
無事な声に安心する。
「ケガもしていない?食事はちゃんと食べてる?」
「ええ・・心配しないで。」
後ろから シア!ウソは良くないわ! と声が聞こえてくる。とにかく二人は元気そうで安心した。
その安堵からか思わずクスッと笑ってしまい、小さな声で
「笑わないで・・」
と聞こえてきた。
「今、二人を助け出すためにこちらは動いてる。必ず助けるから絶対無理はしないで。食事も少しでも良いから口にして。それと・・」
シアは黙って私の言葉を待っている。
「必ず助けに行くから待ってて」
シアは涙を堪えているのだろう・・震えるような声でええ、としか言わなかった。
私はシアが閉じ込められているだろう塔を見ながら再度言葉にした。
「必ず助け出す。それまではどうか無事ていて・・」
「・・」
「シア、昔も今も愛してる。君だけをずっと」
「・・グスッ」
「私と一緒に国へ帰ろう。両親も君を待ってる。そして約束通り、僕のお嫁さんになって?」
シアは言葉にしない代わりにグスグスと鼻を鳴らしている。私はそれを了承と捉え最後に言葉を伝える。
「返事は直接シアの口から聞かせてね」
と。
通信を切ったあと私はザカリー様の元へと戻る。
シアを助け出すために・・




