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窓の外は暗くなっているが、ザザーライン侯爵家は松明を焚いているせいがとても明るかった。なぜ自分が狙われたのか・・その理由が分からずただボーッと外を眺めるしか出来ない事が悲しかった。
「シア・・様?少しは召し上がらないと・・」
遠慮がちに声を掛けてきたマリンは、テーブルに置かれた食器を持って立っていた。
ここに閉じ込められて早二日。未だバージニア侯爵とは合わせてもらっていないが、こうして日に三度食事は運ばれている。
ここに閉じ込められてから気付いた事。
ここは塔の天辺だが下に降りる階段が付いており、その階段を降りると水廻りが完備されていた。
お手洗いに洗面所。お風呂も完備された部屋だった。ただ、下の階には扉は無く本当に水廻りだけのスペースとなっていた。
当然窓も換気程度の物しか取り付けられていなかった。
「そうね、食べて力を付けておかなきゃね!それとマリン?今の私はただのシアよ」
マリンの手から食器を受け取るとサンドウィッチと果物を口に入れた。
食事を済ませマリンと二人、窓の外を眺める。
「ここは入口が塔の天辺しか無いのよね」
「?そうですね」
「窓も人が通れるか通れないかの大きさの物が三つ」
「シア?」
「食事係が日に三度、食事を持って来てくれて・・朝は・・その、洗濯物を持っていってくれるし」
「そうですね」
「私たちは元気よね!」
マリンは私が急に独り言なのか、話かけているのかわからない事を言い出した事に驚いた様子だった。
私は 今までの事を忘れない為よ!とマリンに伝えた。
次の日の昼前、ここへ連れて来たメイドが現れた。
「本日の昼食会にお館様がゲート伯爵令嬢をご招待されました。ああ、そちら様はそのままこちらでお待ちください。お館様はこちらのご令嬢しか呼んでおりませんので」
言い終わると私だけを誘導する。マリンも付いて来ようとしていたが騎士に止められてしまい手も足も出なかった。
「お願いだから彼女に手荒な事はしないで」
「おとなしくしてくだされば、こちらも手荒なマネは致しませんよ」
「・・マリンはここで待っててね。少し、離れるだけだから」
「だと良いですけどねー」
「シア!!」
私が部屋から出るとマリンを押さえていた騎士も部屋から出てくる。
ガチャッッ!!
重たい鍵の音がした後、私は彼女の後ろに付いて階段を降りた。
マリンが扉を叩いているのかな?ドンドンとニブイ音が響いている。
「どこまで行くの?」
「もう少しですよ」
彼女は振り向きもせず答えた。
どれくらい降りたのかも分からない。周りが薄暗いせいかも知れないが、感覚が鈍くなる。
ようやく地上に降りたと思った瞬間、
「ウッ」
後ろから首の後ろを叩かれ・・そのまま意識を失った。




