第3S片 真☆百人一首
かるた、やりました。
※noteにも転載しております。
「なあ、百人一首っておかしくないか?」
おかしなことを言い出すのは、いつもおまえのほうだよと思いながらも。それでもちゃんと話を聞いてやるおれは、ずいぶんとお人好しだ。
「だってさあ、ほら、あれ。
二人三脚ってあるだろ?」
おれの気も知らずに。その「おかしな話」とやらは、もう始まっているらしい。
「ふたりで、三本足だから二人三脚じゃんか。
そしたらさ」
——そしたら?
「百人一首って、おかしいんだよ。
百人で、ひとりひとつずつなわけだから、百人百首じゃなきゃ!
百人一首だったら、百人でひとつしかつくれないんだぜ?
ひとり一文字も、出せないぞ」
……たしかにそうかもしれない。
おかしな指摘ではあるものの。こいつの言うことにはめずらしいことに、ツッコミとしてはわりとまともだ。
「あれって、何文字だっけ?
五七五七七——31文字?
そしたら69人は、ひと文字も出さないで、予選で消えるなあ」
おい、文芸だぞ、文芸。
なんだよ、予選って?
そんなひと文字リレーでできた一句を、百人がかりの力作だなんて、誇らしくのちの世に残せるかってんだ。
だが、考えてもみたら。
上の句に下の句を、その下の句に新たな上の句をと、交互につけていく連歌だったり。詩の本質は、言葉遊びにあるのかもしれない。
いや、だとしても。
百人のなかに選ばれながら、ひと文字を採用されることなく、作者のリストにだけ名前を連ねる69人。その気まずさを思うと、おれはなんとも言えない気分になった。
ほんと、こいつはおかしな話だ。