第2S片 パイナップルみたいな頭
わりとある例えですけどね。
※noteにも転載しております。
どんなにおとなしそうに見える奴でも、ガラの悪い友達のひとりくらいはいるもんだ。
零寺くんは、ぼくにとって、その「ひとり」だった。ぼくたちのタイプはあきらかにちがうのだが、なぜかウマが合ったのだ。
零寺くんは、頭の横と後ろを剃りあげて、緑に染めた頭頂部の髪を逆立てていた。
そのコワモテは傷だらけなことが多く、きょうもそうとう暴れたのだろう。
「あいつらが悪いんだってば」
零寺くんはいつもそう言う。
だが、今回はむこうに非があるらしい。
「あいつら、おれの頭のこと、パイナップルだなんていうんだぜ」
……いや、パイナップル呼ばわりされたくなければ、そんな髪型してんじゃねえよ。そんな内容のツッコミを、もう少しやんわりとした言い回しで告げたところ、零寺くんはムキになったようにまくしたてる。
「ちがうんだってば!
あいつら、おれの頭を輪切りにしたら。
パイナップルみたいに、まんなか、からっぽだって意味で言いやがったんだ」
おいおい、そうだとしたら、怒るのも無理はないが。
陰口ならともかく、零寺くんに聞こえるところでそんなことを言ったとあれば馬鹿な奴らだ。
もちろん、ほんとは髪型のことを言っただけで。からっぽだなんて、零寺くんの考え過ぎってこともありうるけれど。
どのみち、そいつらは大事なことを見落としていたんだ。
零寺くんの頭が、どんな意味にしろパイナップルっぽいって気づいていたなら、その果実を異名にとるものが、もうひとつあるじゃないか。
彼の頭はそちらとも、じつによく似ているのだ。
手榴弾——ピンを抜いて投げ込まれれば爆発を起こす。
気が短くて、ケンカっぱやい彼のイメージにぴったり。
そんなふうに考えて、吹き出しそうになったが、そこはなんとかガマンした。
いかに爆発物のような頭をした零寺くんでも、ピンを引き抜いてやらなければ、被害は出まい。
だから、ついうっかりでもピンが抜けないように、そこに触れないこと。彼と安全に接するためには、それなりの心構えというものが必要になるのだ。
「ほんと、腹が立つ!
もうちょっと殴っときゃよかった!!」
ぼくはあらためて、このガラの悪い友達に対して「爆発物、取り扱い注意」と、自分に言い聞かせるのだった。




