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一族の掟

作者: 河辺 螢
掲載日:2021/10/17

 うちの一族は、十五才になると特別な魔法の使い方を伝授される。

 それまでは、ごくごくちっちゃい人並みの魔法しか使うことができないが、十五才の誕生日に一族全員が集まり、その場で偉大な魔法を得るらしい。

 十五才になるまでは、例え一族の者であっても、それが何かを語られることはない。

 そして、例え配偶者であっても魔法を使うところも見せてはもらえない。

 母も父が魔法を使うところは見たことがない、と言っていた。

 しかし、父も、祖父も、伯母も、皆、人から尊敬される大魔法使いだった。


 うちの一族はみな白髪に近い銀色の髪を腰まで伸ばしていた。これが、魔法を使うための必須条件であるらしく、この髪色に生まれた者は、皆、伸ばすことが求められていた。

 残念なことに、髪を伸ばせなくなると、魔法も使えなくなるらしい。

 伯父は途中から魔法が使えなくなり、残念がりながらも、ちょっとほっとした様子を見せていた。それほどに、我が一族の魔法は「すごい」らしい。


 いよいよ誕生日を迎えた。

 一族の中で白銀の長髪を持つ者が集まる。

 祖父の家の大広間には結界が張られ、例え一族の者であっても、15才に満たない者、同じ髪色を持たない者は入ることができない。

 私もまた、昨日までは入ることができなかった。

 去年までは、普通にごちそうを食べるだけの日だった誕生日が、今年は違う。

 族長である祖父に呼ばれ、前に出る。

「ルツィエよ、今日からおまえも我がノヴァ家の魔法使いの一員となる」

「はい」

 祖父は、いつもの優しいおじいちゃんではなく、威厳があり、緊張でガチガチになっている私にも容赦のない厳しい目を向けた。

「ノヴァの魔法使いは、魔法を人目にさらしてはならぬ。これは掟だ」

「はい」

「掟に背く者は、一族より破門され、遠くの地に追放される」

 追放…。

 そう言えば、ルルラ叔母さんは、ある日突然いなくなった。

 駆け落ち、と言われていたけれど、本当は追放されたのかも知れない。


「ルツィエ、こちらへ」

 祖父から不思議な石のついたペンダントを渡され、魔方陣の上に立たされると、陣が光った。

 私の体に魔法が満ちていくのが判った。

 髪が広がり、空へと引かれていく。

 それまで本で読んだだけの呪文が、頭と心がつながって、取り込まれた魔力になじんでいく。

  私はできる!

 湧き出す自信のまま、呪文を唱えた。

「雨わく雲のわっくわく!」

 すると、にわかに黒い雲が空を覆い、大粒の雨が大地に降り注いだ。そして五分後、雲はゆっくりと消えて、元の青い空が戻ってきた。

 一族の者は、皆にこやかに笑みを浮かべ、私の魔法の成功を喜んでくれた。


 ふと、鏡に映った自分を見て…

「…きゃー!」

 私は歓喜の悲鳴を上げた。

 魔法を使った途端、私の髪は甘いピンク色に変わり、しかも魔力のアンテナとなるよう、頭の上で高く、二つくくりで結ばれていたのだ。

 白に近かった銀の髪は、白髪のようであまり好きじゃなかった。

 なのに何これ、ちょーかわいい!

 今すぐみんなに自慢したい!

 見て見て、ピンクのツインテール!


「…ルツィエ! 我が一族の魔法は、門外不出だ!」

 喜んで友達に自慢しに外に出ようとした私に、祖父の喝が飛んだ。

「おまえ1人の裏切りが、何をもたらすか、判っているのか!」

 祖父だけでない。父も、伯母も、おじさん達も、親戚のお兄さんもお姉さんも、みんなが私を見ている。

「だ、だって…。こんなかわいい髪…」

 祖父は大きく溜め息をついた。

「愚かな…」

「これを見るがいい!」

 そう言うと、父が呪文を唱えた。

「ふるふる雪の雪だるま」

 ひいおばあちゃんも。

「メラメラ炎でバーニング」

 おじさんも。おばさんも。

「ハートをキュンとメッロメロ」

「いたいのいたいの、とーんでけ」

 ムッキムキのお兄さんも、めがねのお姉さんも、真面目ないとこも、ちゃらいにーちゃんも、

 白銀の髪の一族、十八人がそれぞれ小さく魔法を唱えると、そこには、全員ピンクのツインテールの魔法使いが!!

 祖父が、顔を赤らめていた。

「若いもんはいい。だが、おまえだって十年後はかわいいなどと言ってられるか? 二十年後は? わしなど、妻も子も孫もある身で、魔法を唱えるたびにこの有様だ。こんな姿を世間にさらしたら…」

 キラキラと光る、長いピンクのツインテール集団。

 …魔力は確かな一族だが、魔法に関して引きこもっていたのは、それでか。

「魔法を使う時は、決して人に見られてはならぬ。…いいな」

「…はい」

 大好きな父や祖父の名誉のためにも、私は沈黙を守ることを決めた。 



年齢・性別を選ぶ髪型、ツインテール。 ←キーワードだけど、ネタバレなので登録せず。

3日ほど前に、何歳までならツインテールは許されるか、と言う話をしていて、ひらめいた話。


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