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平山明神山殺人事件  作者: iris Gabe
出題編
1/10

1.ダブルデート

登場人物


高遠たかとお 竜一りゅういち    平山明神山に登山した四人組の一人

佐久間さくま 阿智夢あとむ  同じく、四人組の一人

飯田いいだ 千代子ちよこ   同じく、四人組の一人

小和田こわだ 桜子さくらこ   同じく、四人組の一人


早瀬はやせ 瞬太しゅんた    設楽町消防団員

大田切おおたぎり はじめ    通りすがりの登山者


千田ちだ まもる     警部補

沢渡さわたり 善彦よしひこ    巡査部長

如月きさらぎ 恭助きょうすけ    素人探偵




目次


1.ダブルデート   6.第三の容疑者

2.ナイフリッジ   7.参考人の供述

3.滑落死亡事故   8.操作陣営会議

4.第一の容疑者   9.読者への挑戦  

5.第二の容疑者  10.推論の果てに


「そういう事なら、まあ、平山明神が一番だろうな……」

 得意げに声を張り上げたのが、高遠竜一たかとおりゅういちだ。知的な感じがする眼鏡をかけた、端正な顔立ちの青年だが、引き締まった細身の身体はそれなりに筋肉質で、まだ六月の初旬なのに、日に焼けた顔面は小麦色の光沢を放っていた。

「平山明神?」

 佐久間さくま阿智夢あとむが問い返す。こちらは、ぶ厚い胸板で、全身を強靭な筋肉のよろいで固めた大男であるが、インテリっぽい高遠に対して、佐久間は、いかにもガサツで勝手気ままな性格の持ち主のように思われた。

「ああ、平山明神山ひらやまみょうじんやまさ」

 すかさず高遠が答える。

「高さは?」

「千メートルくらいかな?」

「たったそれだけかよ? かなり低い山じゃんか……」

 ぶっきらぼうな反応に、子供をあやすような応対で高遠が答える。

「愛知県の最高峰は、長野県との境にある茶臼山ちゃうすやまで、その標高は1416メートル。いい換えれば、愛知県で登山をすれば、どの山だってせいぜい千メートル程度しかないってことさ」

「おいおい、マジかよ。となりの岐阜県や長野県まで行けば、本格的な山なんかいくらでもあるんだぜ。わざわざ愛知のマイナーな山に登ったところで、しょうもないだけだろうが?」

 佐久間がバッサリと切り捨てる。

「それなら訊ねるが、本格的な山とは?」

 いたずらっぽい眼差しを、高遠が佐久間へ送る。

御岳おんたけ乗鞍のりくら、それに駒ケ岳こまがたけ……」

 佐久間がめんどうくさそうに答える。

「ふふふっ、低山をなめちゃいけないよ。駐車場が完備された三千メートル級の百名山より、ひとけのない寂れた里山の方が、登山の難易度が高いことだってあるんだからね」

「そんなに危険な山なのか? その平山明神山って」

 佐久間の表情にもちらっと動揺の様子がうかがえた。

「ああ、それなりのスリルと達成感を保証してくれる山だよ」

 自信ありげに高遠が断言した。

「私も行かなきゃいけないのかしら?」

 横でずっと黙っていた飯田いいだ千代子ちよこが、いよいよ心配になったのか、口をはさんできた。彼女は、佐久間阿智夢と今年になってから付き合い始めた女子大生である。少しふっくらとした丸顔に、お世辞にも運動が得意そうには見えない青白い肌をしている。決して派手な美人とはいえないが、よく見てみれば、多くの世の男性を惹き付けそうな清楚な雰囲気もあまた感じられた。

「もちろんさ」

 高遠は軽くうなずいた。

「私は登山をしたことがないし、そんな危険な山だったら、そもそも登ること自体が無理なんじゃないかしら」

 飯田が困ったように肩をすぼめた。

「そんなことはないよ。気を付けるべきところを、気を付けていれば、平山明神は別段危険な山ではないんだ。まあ、夏の真っ盛りになると山蛭が大量発生するから、その季節には行かない方が身のためだけどね」

 高遠は、くすくす笑いながら、続けた。

「平山明神山の登山ルートは、上級者が満足するコースと、初心者でも楽しめるコースの両方があるんだ。飯田さんが参加するのなら、大神田おおかだルートにすればいい。それなら、ちょっとしたハイキングコースだから、遭難する可能性はまずないよ。とはいっても、頂上近辺の絶景となると、それは見事なものさ。とにかく、あの辺の山は岩場が多くて、そこらじゅうに切り立った断崖が点在しているのだからね。

 次の週末はどうだい。そうだ、その時は僕の彼女も連れていこう。二組のカップルでダブルデートと洒落込もうじゃないか……」



挿絵(By みてみん)


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