2話「心の鉛」
俺の心はどんどん沈んで考えすぎないようにしても
考えてしまう、音楽を聴いてもゲームをしてもなにを
しても観ても聴いても、奏斗と春原さんの2人の想像を
してしまう…俺は悔しさや嫉妬で自分が嫌いになりそう
だったがふと時間を見ると次の授業が始まりそうだった
涙が出そうな自分の情けない顔を「パンッ」と叩くと
なんとか耐えて教室に戻った。
そして放課後
「奏斗ー!帰ろうぜー」
「…おう、帰ろう」
一瞬だけ昼休みの出来事が脳裏をよぎる
そして正門の前に春原さんがいた、友達を待ってるのだろうか、すると奏斗が話しかけに行った
「春原さん誰か待ってるー?」
「うん、友達が忘れ物をしちゃったらしくてね」
「そうなんだ!もし良ければこれからどっか遊びに行かない?」
「雪くんも一緒に行くの?」
そう春原さんが俺に聞くと奏斗が断れと目で訴えかけてくる
「…ごめんよ、俺はこれからしないといけないことがあるんだ」
心臓ら辺がキュウ…と締め付けられたような感じがした
「そうなんだ、なら私もいいやっ!」
「えっ」
奏斗が思わず漏らした声、たまたま聞こえた春原が答える
「あっ、変な意味じゃなくて人数多い方が楽しいしまた今度でいいかなって思っただけだからね!」
「そ、そうか、それじゃあまた遊びに誘うからな」
奏斗が少しだけ焦った口調でそういうと春原さんの友達が丁度戻ってきて2人は一緒に帰って行った
「雪ィ…男2人で悲しく帰るかあ」
「そ、そうだな」
少しだけ安心した自分がどこかにいた
そして帰宅、俺は一人っ子で家は父と母共に夜遅くまで働いているので家には俺1人だけだった、しんと静まり返った家は今日の出来事を思い出させるかのように思えた、赤い夕陽が窓から差し込み部屋全体が真っ赤に塗られていた、そして時間の流れが早く夕陽が沈むと暗くなり部屋が闇に飲まれると同時にまた胸が締め付けられ、雪の心の中にある鉛が重くなり沈んでゆく、思わず涙を流してしまい栓が外れたかのように涙が出て来て止まらない、自分のベッドに寝転がり枕に顔をうずくめながら泣きじゃくった。
そしていつの間にか寝ていた雪は深夜に目が覚めた
月明かりに照らされていた部屋はどこか優しさを感じ
胸の痛みがやわらぎ、鉛が溶けてゆく…。
そして朝7時起床
「何も食べてないからお腹空いた…」2階から降りてリビングに行くとラップに包まれたご飯が置いてあり、雪はそれを胃に流し込むように食べた。
────行ってきます
いつもの教室にいつものやかましさ、いつにも増して周りの声がどこか鬱陶しく感じていた、奏斗は少しだけ落ち込んでいる様子だ、昨日のことが少し気がかりなのだろう、そんなことを考えていると後ろから肩をトントンとされ振り返ると春原さんがいた。
「雪くん」
「春原さん?どうしたの?」
「私…不器用だからさ…直接的で申し訳ないけど…私雪くんと仲良くなりたいからさ…メアドとか教えてくれない…?」
俺は急に心が弾んだ、昨日の胸の締め付けられたような感覚が嘘のようになり、心の中にあった重い鉛が柔らかくなり、だんだんと溶けていった。
「いいよ、それじゃあこれ、俺のメアド」
「ありがとうっ!また連絡するね!」
心臓がバクバクしている、好きな人と話すというのはこんな感じなのかと思った、緊張で上手く話せずタジタジになってしまっていた自分を思い返すと穴があったら入りたいぐらい恥ずかしかった。
そして嬉しさや、胸の高鳴りで今日の授業は集中出来ずに終わってしまった、心の鉛は現実の鉛と同じで柔らかく、溶けやすく、そして毒性がある。




