表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋の終わるとき  作者: メリー
4/6

4

「いいんですよ、そんな俺なんか立って迎えなくたって‼︎」

「あははははははは…」


 1番 牧田慎二、一期一会の婚活パーティーで、3度目の邂逅である。



 ********



 再び婚活パーティーに参加するようになって早1ヶ月。週に一度の間隔で参加し、カップリングした(なかよくしている)人は2人。

 だれがいいとかは特にない。誰も彼も会っている時は楽しいが、特に会いたいとは思わない。


 ―――ぜんっぜん、これ!って人がいない‼︎


 別れたばかりだから?

 俊と出会ったのだって、前の彼と別れた1週間後くらいだった。


 俊が忘れられないから?

 この間思い出と決別するため、俊にもらったものを捨てようと思ったら、腹立たしいことに財布しかなかった。


 もう恋したくないから?


 ―――それは、あるかも


 自問自答しながら思い当たった答えに、千咲はため息をついた。

 婚活パーティーに参加するようになってもう5年。途中参加してない時期も多々あるが、5年も婚活をしていればもうそろそろゴールにたどり着いてもいいのではないだろうか。


 よく、結婚はゴールではないというが、千咲にとって結婚は間違いなくゴールだった。

 それは、中学生から高校生になるように、大学生から社会人になるように、ステージが切り替わると言う意味だ。


 中学生の時、いい高校に入って、望む生活ができるように努力した。

 大学生の時、就職に困らないように資格を取り、いい会社で働けるように努力した。


 だから独身の今、結婚できるようにあらゆる努力をするのだ。

 結婚後は、またステージが切り替わって、いい結婚生活、家庭が築けるように努力する。それは、もしかしたら次は母になってステージが変わるかもしれないし、老後また変わるかもしれない。

 一つ一つ、今できる努力をしてステップアップしていく。それが千咲にとっての人生だ。


 なのに、今現在千咲は5年も足踏みしてる状態である。


 ―――これはあれか?もっといい人がいるのでは、とキリがなくなる婚活地獄というやつか?


 平日と週末と、詰め込まれたデートの予定に、千咲は膝の上のスマホを握りしめて憂鬱なため息をついた。

 これ以上は、精神衛生的にも、お財布事情的にもよくない。今日で終わりにする‼︎と決意しての、今回のパーティーである。


「佐藤さんって、このパーティー以外はやってないんですか?マッチングアプリとか」

「あー、街コンとかは行ったことありますけど、今はここのパーティーだけですね。街コン、ちょっと怖くて」

「へえ〜。俺、マッチングアプリもやってるんですけど、前にアプリで写真見た人とパーティーで会ったことあって」

「えっ、そんなことあるんですか?」

「なんかもう写真凄い盛ってて。あるじゃないですか、なんか加工する」

「あー‼︎プリクラみたいな。ありますね、全然別人になっちゃうやつ」

「そうなんですよ。だから実際どんな感じなんだろーって思ってたら、写真のまんまなんですよ‼︎」

「ええっ、そうなんですか⁉︎全然違う話はよくありますけど同じって…すごい」

「そうなんですよ。だからプリクラとかも信じられる時もあるんだなって」

「へえ〜‼︎そうなんですねぇ…」


 ―――もう意味がわからない。


 千咲は口元がひきつるのを感じた。

 牧田は2度目の時(千咲は1度目を覚えていないが)に会ってから、千咲の事も自分の事も話さない。話すことと言えばお互いの婚活事情についてである。

 そのくせ、毎回いいなアピールはしてくる。

 最初は全然タイプじゃないと思ったが、なんかもうこの人でいいんじゃないか、逆に運命なんじゃないかという気がしてきている千咲である。


「じゃ、ありがとうございましたー」

「こちらこそありがとうございました」


 ―――3度目の正直って言うし、今日はもう牧田さんに希望だそうかなー。なんかもう終わりにしたいよ。


 手元のスマホをハンカチにくるんで隠したあと、千咲は次の人を迎えるために顔を上げた。


 ―――んん?


 見たことがある。


 千咲の脳裏に前々回のパーティーの記憶が蘇ってきた。


 ―――2番 柏木圭介。前々回唯一わたしにいいなアピールしなかった男…‼︎


 そのパーティーはいいかな、と、思う相手が2人いた。その内の一人が柏木だった。

 いいなアピールの結果を見て、柏木にカップル希望を出そうと思っていたが、柏木からはアピールがなかったのだ。その日はほかの人たちからは全員アピールをもらえた嘘みたいな日だったのに。


「はじめまして、6番の佐藤です」

「どうも、2番の柏木です」

「柏木さん、前もこのパーティーでお会いしませんでした?」

「え、ほんと?僕ですか?」

「えー、たぶん。なんか見たことあるなって。プロフィールの内容とかも…でも気のせいだったらごめんなさい」

「あ、いや、たぶん会ってるんですよ。結構参加してますし」


 ―――微塵も記憶にないとか…わたしに全然興味なしかよ!失礼な!


 自分のことは完全に棚に上げている千咲である。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ