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Act,03―入学式Part,1―

ピンクの桜の花びらがハラハラと舞い散る。


全校生徒と新入生のふけいが集まった体育館はいつもよりも厳かな空気が流れている。

新入生のなんともいえない、緊張感、それを見て観察し、楽しそうに居る彼等とは裏腹、何も起こらないだろうかと願う先生、そして新入生と同様なんともいえない、我が子の旅立ちを見送る婦継の人たち。


どれをとって見ても、新しい物に対しての興味が凄くあった。


その中で、あの糞理事長はまたもやふざけていたが。


#さぁって、新入生の諸君、ハローン!!!#


新入生、先生ともども、呆れた。

あの理事長には誰もが口をポカンと空ける。自分にとってはどうせこんなものだろうと思っていたから何にも思わなかったが、こいつはこういう奴だ。そう、自分の父親は馬鹿である。呆れて小さくため息をついていると、ふと横目にあの城嶋 空という編入生の顔が映った。


「……ありゃ、爆笑?」


小さく呟いたその言葉に彼が気付くわけがなかったが、彼は自分の少し後ろで爆笑していた。腹を抱えて前かがみに、肩を震わせていた。一応、厳正な場だから、声さえは出していないが、間違いなく笑っていた。


ふぅん……一応、笑うんだ。

なんか、優等生で精神力強いから、冷徹の冷血の、くだらない男かと思っていたのに、ちょっと違うみたいだ。


写真で見るより、少しあどけないようにも思えた。


第一印象、陽気な奴、そう思った。



#さて、次は新入生代表の挨拶だよ、よろしくぅ!!#


そういわれた瞬間、彼は、ピクリと笑うのをやめた。

切り替えが早いんだろうけど、さすがに横の人が驚いている。彼は、背筋をピンと伸ばした状態で、前を見据えた。進行役の司会が、彼の名を呼ぶ。


#新入生代表。高校一年生芸能科 城嶋 空#


一気に、高校一年生の芸能科の在校生共が騒がしくなった。在校生、それは中等部からの持ち上がりの人たちである。そう、あのナルシスト集団だ。そりゃ、芸能科の編入生で尚且つ新入生代表とくると、驚くのもわかる気がする。それに、あの容貌。誰もが見惚れるには間違いなかった。


#拝啓、本日はお日柄もよく――#


彼らしい、というのだろうか? 爆笑していた彼とは本当裏腹な、優等生“ぶった”彼が喋り始めた。本当どこにでもあるような、その挨拶に、先ほどまでの和やかな空気は一変、厳正な空気へと変わった。……役者だな、と思った。素直に、こいつは役者志望だ、と思った。


凄い変わりように、凄い集中力。

私なら先ほどの物を引きずって理事長をにらみながらやってしまいそうなところを。彼は

理事長を見ても笑わないし最初から最後までハキハキと全てをこなした。


凄い、という感嘆の一言だった。


戻ってきた彼も、一切顔の表情を崩すことはなかった。反対に、不気味で、けれど興味がわいた。



彼に近づいて、どんな人なのか、見てみたい、と。


理事長の意向によりここの入学式は比較的短い(はず)のだ。


終わったあと、戻る新入生に列は守られておらず、勝手に自分の教室まで行く。その話しかけるチャンスを私は早速使おうとした。

だが、どれだけ絶対通らねばならない階段の下に彼は現れない。何故だ?

何かが可笑しい。

もしかして……。もしかして、すでに奴等が彼に手を出した?


ありえる。


この頃、急速にイジメの頻度もきつさも増しているらしいから初日から、というのも充分ありえるじゃないか。そんな大事な事を見落としていたなんて。


私は急いで体育館の方向へと戻った。もちろん、体育館から出てくる母親達や、先輩達にも当たったけれどおかまいなしに、一目散に向かったのは、体育館裏だった。


いきなり出て、というのも少し気が引けたから、影からこそっと見てみると、やはり、そこには城嶋空を囲んだ在校生の姿。ざっと、1対10くらいである。何をしているんだか、初日から。

 思わず出たため息。彼等がそれに気付くはずもなく(未だ体育館も、その出入り口も人がいて、うるさいままなのだ。)私はその様子を伺った。もちろん、あんな10人相手は女の私だからこそきつい。それでこそバレてしまうとイロイロと大変である。


それはそうと、城嶋は、何ら喋りもせず、何ら動きも見せず、奴等と張り合う気もないのかずっと下を向いて微動だにしなかった。何をしているのだろう? 周りがうるさくて、何を言っているのかさえ解らなかったが、周りの男10人が、あーだこーだ変なこじ付けをしているのは確か。何も言わない彼をもてはやしているのも確かだった。


だが、少し動きがあった。


「なっ!! てんめぇっ!!!」


確かにそういったと思う。在校生の一人が手を思いっきり振り上げた。

そして、行き着く先は、芸能人が大事とする……、商売道具の顔だ。

私は思わず目を瞑る。

そして聞こえてきた乾いたパン、という音を聞いた。絶対にぶたれてしまったな、と思ったのだが、そうではなかった。彼の顔には何一つとして傷はなく、その上次の瞬間からそこは1対10の喧嘩が始まっていたのだ。

 一応、空手等はやっていたから出て参戦しようかと思ったが、その必要性は0に等しかった。彼は、急所という急所を全ての馬鹿に食らわした上、気絶させていく。……それも服を着ていたら見えないところばかりを。まぁ、ある人は本当の男の急所を打たれた奴も居て、本当にご愁傷様としか言いようがなかった。


「くっそっ!!」


一番強いッぽい奴が、手を振り上げたが、そいつもノックダウン。

 すげぇ。その一言で、近づこうとしたのだが。


……え、何故か知らない、彼までノックダウン。それもひとりでに、倒れてしまった。

最後に倒れた奴の上に重なるようにして倒れたから、もちろんその下に居た奴は余計、傷を負ったわけで、彼にしたらいいクッション代わりになった。


って、いや、何故。


っていうか、何で、気絶?


急いで近づいてみると、彼はその場で寝てしまっているではないか。


何ちゅう奴だ。戦いの後でその場で寝るとは……。っていうか、きっとここに居たら、またこの人リンチに合うよな、と思った私は、その場から彼を引きずり出して、引きずって持っていくことにした。

やはり、また、人通りの多いところを通らねばならなかったので、先生への報告はすぐにでき、ある先生が担任に伝えておいてくれるということで、私がわざわざ色んなところへ回る手間が省けてくれた。少し体育館からは遠い保健室へ向かうがやはり運んでいるのは男で、それなりに重かった。


白い白い、保健室は、体育館とは正反対の位置にあった。


そこをあけて、必死にベッドまで運び、彼をドンと寝かす。その衝撃でも起きない彼は、多分、寝不足か何かだったのだろう。


「あの、せんせ……い……は?」

「お、早速来たか、おチビちゃんよ」

「……なんでココに居るんですか?」

「さぁ? ま、お久しぶり」



そこに居るのは、私の古い古い知り合いだったことは、また別のお話――。










――入学式 Part,1――終了

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