表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/16

Act,10―頭脳戦 後半―

――もし、人を生き返らせるコトが

      出来る術があるのならば、

        人はどんな事でもするのだろう――



俺が、何でもしようとした時と同じように。



「なぁ、親父ー、事務所どうしよう?」

「事務所ー? 有名なところに入っとけよー、そうじゃないと後々有名にならねぇぞ?」


いつもみたく電話ごしに笑っている父親の顔が浮かんだ。

まぁ、それも一理あるが――


「けどさー、弱小事務所で一人でっかくなるのが俺の夢ー」

「なんだそれ」


クスクス笑っている相手。


「絶対でかい事務所だぞ?」

「えー弱小がいいなぁ……」

「……でっかいのだぞ?」

「……弱小ったら、弱小」

「……でっかいの、おおきいの、わかった?」

「弱小弱小弱小。弱小がいい!!!」

「大きいのだ、でっかいのだ、有名なところだっ!!!!」


俺は、父親に似て、少々頑固なのかもしれない。自分の決めたことは最後まで通す派なのだ。だから故、言い合いになって、父親と、事務所入りの喧嘩をしたのだが……、結局決めた人はこの人だった。


「こらっ、空ー? 一応大きい事務所にしておこう? 入れる所があるのなら、絶対大きい方がいいよ? 後々バックアップがなかったら大変だろうし……ね?」

「うー……母さん、やっぱり弱小だめ?」

「両親からしたら、危ない世界に出すんだもの、マシなところに入れておきたいのよ」


そういって電話越しに俺の事を思うあの人の笑顔が浮かぶ。


「はぁ……わかったよー……」

「ごめんね、空? わかってるのよ? アナタがやりたいことはわかってるんだけど、私たちが安心できる所に置いておきたい気持ち、少し汲んで欲しいの」


わかってる――


アナタは、貴方……は。

俺を手放したくないんだものね、俺を、ずっと、手の中に、とどめて、おきたいもの――



わかってる。


逃げたくて、東京まで来たけど、また逃げ切れないのか、そう思うしかなくて。

その気持ちを汲んでいた父親が、また電話の最後に、俺に、“ごめん”を言った。








これが、持田さんに会う、一日二日前の出来事だった――









もちろん、入る事務所は、ASCだと大体は目星をつけていたし、ここの生徒なら大抵入らせてもらえるのだが……、俺の周りを調べ始めた人がいる=俺は怪しい空気がぷんぷんなわけで。


だから弱小事務所がよかったなぁなんて所もあったんだけど、しょうがない。



とことん、付き合おうと思う。



持田さんが来た、5日後。

また、彼はやって来た。


いや、何度かは来ていたが、そのつど来て言うことは一つ。


「わかりません」


それだけだった。そして何の他愛もない話をするだけして、彼はいつも出て行っていた。

そして、今日もそうだと思っていたのだ。


――コンコン


「……タイミングいい人だなぁー」


那智が出て行ったすぐ後だ。いや、タイミングがいいんじゃない。どうせ、全て盗聴器で聞き取っていたのであろう。俺は、窓を開けて、持田さんを出迎えた。


「よく、怪しまれずにここにいれましたねー」

「那智様の護衛だと思われれば何の問題もありません」

「……はいはい」


この人、結構持っている手段は全て使う派、か?

いや、まだ残してるかな?


「他にも、木陰に隠れるとか息を潜めるとか、どれだけでも手段はあります」


あら、聞く前に言っちゃったな、この人。

少し目を見開いた様子でいる俺に、笑うのかと思えば持田さんは表情を相変わらず変えないままで、また定位置に座った。


「ここまで調べたので、見てもらえますか? そして、一つ、質問をさせてください」

「うーん、答えられる範囲内でねー」


いつもの調子で言いながら、俺はその渡された資料をベッドの上で閲覧開始。


俺のありとあらゆる一日の行動から、俺の偽個人情報がたくさん載っていた。

そして、その偽個人情報の横にはいくつもの赤線が引かれており、その偽情報に対するつけくわえが行ってあった。


大体はあっている。


「俺の住所が、嘘だって、どうやって知ったの?」

「行きました」

「へぇ……、じゃぁ俺の両親の名前が嘘だって事は?」

「それも、確かめに行ってきました」


そう、俺がこの学校に提出した情報は、偽情報ばかりだった。

いや、偽、といったら嘘になるのかもしれない。また、違う。


俺は笑った。

俺の勝ちだ。全てが偽だとしかわかっていないんだから。

このときは、そう確信した。そう、そのとおり、俺の読みは間違っていることになってしまう。


「俺の正しい情報は一つでも得れた?」

「……全く、といってはうそになりますが、その偽情報に変わるものは何もなかった。だけど、一つだけ確かなことがある」


少しだけ、顔をゆがめた。何を確かめるという?

俺の情報をここから取り出すことなんて出来ないのに。

そう、思ったが、彼がつついてきたのは、まるで重箱の隅の方にあったもので、その偽の情報などとは全く関係のない、とも言い切れるところのものだった。


「……それは?」

「貴方の  」


それを聞いた瞬間、俺は顔を無表情にしていることが出来なかった。

思わず顔をこわばらせてしまった。それも彼は、“確か”だと言った。


「……どうやって、調べた? 監視カメラでもつけたか?」

「勘、です」



そのとき始めて、持田さんに負けて、持田さんは始めて、笑った。

それは、勝ち誇った顔で。


「帰れ」

「逃げるんですか? まだ、質問していませんよ?」

「じゃぁ、すればいい」


俺は、その場を立ち上がった。


笑った顔を見てみたいなとは思ったが、こんな形で見られるとは。ただむかついた。負けた自分に。


「何故、そこまで偽装するんです?」

「……あんたには関係ない」


俺は、彼をにらんだ。むかついた。勘で当ててきたこいつが酷くむかついた。

今まで一人たりとも、勘などでは当てさせなかったのに。


「そこまでして、何を隠したい? そこまでして、何を――」

「――うるさいっ!!!!」


始めて、東京にきて怒った瞬間だった。

何もかもが、パニック状態だったのだ。彼に、わかられた、ということだけが。


「出て行け」

「……そうします。また、明日、来ます」

「来るな」


そういって、彼が出て行った後に、窓を大きな音を立てて閉めた。

そして、初めて、ここに来て、悔し涙を流した。



「貴方の  」



その言葉が脳裏に焼きついて、その言葉だけで俺の体があそこまで反応するとも思わなかったのが確かだった。


自分がひたすら隠し続けてきたことだ。


いや、隠し続けた?


違う。


もう、隠すなどしていなかった。


むしろ、逆の自分が本当の自分だとも思い始めていたのだ。


間違っていない。


俺の道は間違っていないはず。


人からみれば、大きく間違っているのかもしれない。


だけど、間違っていないはずなんだ。


そう、俺はっ――




俺は……ただ、ただ。


小さい頃からの約束を守り続けているだけ。


親父との。あいつとの。約束を守り続けているだけなんだ。



俺は、何も悪くない。



俺の、道は間違っていない。



何故、偽装するのか。



それは、約束を、守り続けるためだ――















案の定、彼は、また翌日やって来た。


また、分厚い資料を持って。



「泣き止みましたか、空さん」

「うるせぇ。黙れ、この変態」

「何故そうなるんです」


もう、この人は無表情のスタンスを崩していた。俺に、笑ってコロコロと表情を変える優しいお兄さんとなっていた。むかつく、人の素性がばれてそんなに態度がかわるのか、そういいたかったが、何も言わなかった。なんか、もうボロが出てきそうだったからだ。


「今日は何」

「……最初の意味、解りました」

「そう」

「貴方のお父さんが私に電話をくれたんです」

「そう」

「そして、理事長には言うな、とおっしゃりました」

「……そう」

「何故か、解りますか?」

「……理事長が焦るから、俺を、恐れるから、だろ?」

「そうです」


俺がベッドの上で丸くなりながら返していると、持田さんは、始めて定位置から腰をうごかして、俺に近づいてきた。


「ただ、貴方の性別、そして両親がいない、住所がない設定で、理事長に提出しろ、という命令が下りましたよ、お父さんから」

「……親父……ね。親父の後ろには他のものがあるから」

「多分、そこからの言葉でしょうね」


そういうと、彼はふっと、俺の頭の方へ手を近づけた。


「大丈夫ですよ、俺は口が堅いです」

「……優しくするな」


手を払いのけて、彼をにらんだ。彼が、俺の頭を撫でようとしたのだ。

俺はベッドに倒れこみ、彼のいない方向へと寝転んだ。


この頭に触れていいのは、きまって、あいつだけだったんだから。

あんたに、触れさすようなことはしない。

それに、それは、下心にしかみえなかった。


「俺は、あんたみたいな人、嫌いだ」

「そうですか」


しゅん、とした顔。

この前までの顔は、きっと仕事上の無表情を決めてかかっていた。だが、俺を子供だと思ってなめてかかっているのか、何かしらない、俺が拒否したことに対して、本当にさびしそうにするものだから、この人は何を思っているんだ、と首を傾げる。


この前までは笑いもしなかったのに。


「では、また失礼します。明日辺り、呼び出しになりますから、そのときはよろしくお願いしますね」


何となく、まだ、もう少し引っかかるところがあった。

思わず、起き上がった。


「……なぁ」

「何です?」

「何で勘でわかる」


それをただ、聞きたかっただけなのかもしれない。

けど、手を伸ばして彼の背広のすそを引っ張っていた。


「……話していた感覚、ではわかりません。けど部屋、仕草、体の線、そして……決定打は、那智さんに対する接し方です」

「那智……に?」

「あの方が女の子って事はしっていらっしゃいますよね?」

「あぁ」

「だからです」


そうとだけ言うと、彼は、笑った。


那智に対して、そんなに違っていたか?

俺は、何を間違っていたんだろう?頑張って、いたのに。


「……那智さん、っていう存在だからだと思いますよ?」

「那智、だから?」

「はい」


そういわれて、答えはすぐ出た。


俺は、ため息をついて、ベッドに寝転がる。彼は定位置に戻って、また座った。

帰るんじゃなかったのか、といいたかったが、ま、よしとしよう。


何となく、もう一度他愛のない話をしようと思った。


「なぁ、持田さん、彼女いんのー?」

「プライベートのお話はいたしません」

「人のプライバシーはどしどし入ってきたくせに」



この人は、何のために、ここに配属されたのかしらない


何のめぐり合わせで、俺を調べるに至ったのかなんてしらない。




だけど、何となく、知られたのがこの人でよかった、と始めて思えた瞬間だった。









そして、今日、理事長室に至る。


右頬をさすりながら、俺は、ため息をつくと、持田さんをにらむ。


「この、うそつき変態」

「すいません」



申し訳なさろうな顔を見てみたくて、少し、いじめたくて言ったまでの言葉。


こうなることぐらいは予想していたから、ニッと内心笑ってから、那智を見据える。



「……さて、君の話を聞こうか? 那智」








――頭脳戦 後半――終了


久しぶりの更新、すいません(滝汗)



頭脳船じゃないいいいいいっ!!!


少し訂正した章があるので、そちらも見ていただければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ