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Lostopia  作者: 飛世子
1/1

1.【孤独な冒険者】

様々な冒険者達が蔓延るこの世界(バベル)には、異能力(スキル)と呼ばれる神のような力を持って生まれる者がいる。


決して科学では証明できない力を持った者。


この世界では皆、彼らをこう呼んでいる。


"異能力者(スキラ―)"





”ハァハァ……君たち三人に……私から最後の命令を下す……。

これからは……誰よりも自由に生きなさい……そして――”


「シャルド中佐……シャルド中佐ーっ!」


バッ!


そう叫びながら俺――ノア・イーサン――は宿屋のベッドの上で上半身を勢いよく起こした。

額からジワリと流れる嫌な汗。


また、あの時の夢……。


時計を見ると朝の8時。

少しの息切れを我慢しつつも額に流れる汗を手で拭い、俺はベッドから出た。





色んなお店が朝早くから立ち並び、沢山の人で賑わう西の人間が治める国”レイリカ”

そして、この国の中心に大きく建てられた立派な建物――”冒険者ギルド”

俺は今、そこに向かっている。


俺は現在25歳。

10年前までは某国で軍に所属し、前衛として頑張っていたが、とある事がキッカケで今は軍から身を引いている。

そして今は、自由気ままに旅をしながら冒険者をやっている者だ。


俺には夢や目標というものはないが、モットーと言えるものが一つある。

それは”自由に生きること”

ただ、これだけだ。





冒険者ギルド ~受付~


早速、扉を開けてギルドの中へと入った俺はいつもいる彼女を見つけると

「Hey Yo!コルちゃん!」

と、大きな声で挨拶をした。


「あ、ノアさん!おはようございます!」

「そこはHey Yo!と返してくれてもいいんだぜ?」

「ダ、ダメですよ~。これでも私、このギルドのちゃんとした職員なんですから」

「面倒くさいな職員て。まあでも、コルちゃんは可愛いから許す」

「なんですか許すって!そ、それに、そんなこと言われても別に、う、嬉しくなんかありませんからね!」


赤面しつつも俺にそう返事を返したのはこのギルドの美人受付嬢”コル”

コルはエルフのため、見た目は20代だが実際は150歳だ。

そんなコルは白くて美しい長い髪を一度、片手で靡かせながら青い瞳でノアを見つめた。


「でも、ノアさんにしては今日は朝早いですね」

「そうだな~、今日はたまたま早く起きれた」

「そうなんですね~。では、今日はどういった依頼をお受けに?」

「う~んとそうだな~、報酬が良くて楽なものはない?」

「むむむ~……そんなおいしい依頼あるわけ……あっ」

「どうした?」

「これなんてどうです?」


そう言うとコルは大量の依頼紙の中から1枚の依頼紙を取り出すとそのままそれを俺に手渡した。


”レオルの森に現れるゴブリンの退治 報酬は金貨2枚 ”


手渡された依頼紙をじっくりと拝見する俺に向かって

「非公式の依頼なんですがどうですか?」

と、言葉を付け足すコル。


ギルドにはギルドが定めた公式依頼と、一般市民が要請する非公式依頼の二つがる。

公式依頼の場合は依頼を達成するとギルドから直接、報酬金が手渡される。

しかし、非公式依頼の場合、依頼を達成しても報酬金を支払うのは依頼主である為、ギルドからは支払われない。


そういうことも含めて考えたがやっぱりどうも、これは……


「明らかに釣り的な内容の依頼――」

「ノアさんなら大丈夫です!」

「いや、だからこれ明らかに――」

「大丈夫です!」

「ちょ――」

「大丈夫です!」


大丈夫の一点張りを決め込むコル。

一体、何が大丈夫なのだろうか……。


「ハァ」とため息を流しつつも俺はもう一度、手に持つ依頼紙をじっくりと見る。


ゴブリン退治で金貨2枚とか絶対にありえない。

普通は銅貨50枚でも上等と言える内容の依頼だ。

もしかして、俺が知らない間にゴブリンインフレでも起きたのか?

いやいや、あんなEランクモンスターに限ってそんなわけない。

けどまあ、別になんでもいいや。


「わかった、この依頼を引き受けよう」

「さすがノアさん!」

「まったく……俺にこの依頼を任せたいのには何か特別な理由があるんだろ?」

「テヘへ、バレちゃいました?」


そりゃそうだ。

誰だって、あんなに大丈夫の一点張りをされたら何かあると思うのが普通だろ。


「で、なんなんだ?」

「いえ……実は最近その依頼を受けた冒険者が数名行方不明なんですよ」

「なるほどね……それで俺にその原因を突き止めろ、と?」

「はい」

「ハァ……なんで俺なんだよ」

「私、ノアさんの素性は知りませんが……でも、ノアさんならきっと大丈夫かなと――」

「デートだ」

「え?」

「この依頼が終わったら俺とデートしろ」

「あ、はい……って、えぇぇぇぇっ!?」

「じゃあ、よろしく」


ダルそうにそう返事を返すと俺はギルドを後にした。





その後、少ししてレイリカに隣接するレオルの森へとやってきた。

だが、どこを探索してもゴブリンらしき姿が見当たらない。

もっと言えばスライムさえも見かけない。


ハァ……やっぱ釣りの依頼か。

しょ~もな。


俺がそう考えていた時。

不意に後ろから複数の男性の声が聞こえてきた。


「Bro!またあの依頼に引っかかったバカが来たぜ!へへへ!」

「おいおい、本当に冒険者ってのはバカばっかだな」

「おい、聞こえてんだろ。俺たちの方を見ろよ冒険者さん」


その言葉を聞き律儀に振り返る俺。


盗賊と思わしき汚い格好をした男が三人……

なるほど、コイツら……釣りを利用した冒険者襲いか。


「おい、お前」

「なんだ?」

「今、持ってるもん全部俺たちによこせ」

「嫌だと言ったら?」

「嫌だと言えねえようにしてやるよ、へへ」


盗賊ってのはなんで笑い方さえも汚いんだろうか。

コイツらの親御さんたちは「へへへ」という不気味な笑い方に注意はしなかったのだろうか……。

まあ、そんなことはさておき。

 

「おい」

「ああ?」

「今までこうやって冒険者達を襲っていたのか?」

「ああ、そうだ」

「なら、襲った後はどうしてる?解放してやるのか?」

「ああ?殺したに決まってるだろ、へへへ」

「そうか、じゃあ……」


殺られる前に殺るまでだ。


そう思った俺は背中に背負う太刀を勢いよく抜くと盗賊三人組へと一気に距離を詰める。

「「「なっ!?」」」と声を漏らす盗賊一同。

しかし、残念ながらもう遅い。

俺はスパッと一振りで盗賊三人の首を地面へと落とした。


コイツらに殺された冒険者達よ、安らかに……

と、少しの黙祷の後。

俺は「フゥ……」とため息を吐きながら、刀身に付いた血を無心で振り払う。


よし、これで無事解決だな。

これで俺はコルちゃんとデートが出来るわけだ。

金貨二枚は手に入らないがデートの結果次第ではコルちゃんが……デュフフ。

と、変態的な妄想を膨らませながら俺はギルドへと戻っていった

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