ちんこ投げ セカンドシーズン
「先生!私の可愛い息子は助かりますか!?」
「残念ですが息子さんのガンはステージ4です。
またガンが全身に転移していて手術ではガンは取り除けません。
若いとガンの成長も早いのです。
放射線治療にも抗がん剤治療にも耐える体力はないでしょう。
おおよそですが、あと二週間の命というところです。
「・・・そんな・・・息子はもう助からないんですか?」
「助かる方法は一つだけあります。
・・・ただ、治療された息子さんはすでに以前の息子さんではありません。
それでもかまいませんか?」
「どんな方法でも受け入れます!
命あっての物種です!
先生!治療を開始して下さい!」
「そうあせらないでください。
今は治療説明が義務化しています。
あなたが拒絶してもご家族には必ず説明しなくてはいけない事になっています」
「・・・取り乱して申し訳ありませんでした。
では先生、治療の説明をお願いします」
「・・・いえ、謝る必要はありません。
『息子が助かるなら』と必死になる気持ちは理解しているつもりです。
この治療法が発見される前、『もう助かりません、最後くらい好きな物を食べさせてあげてください』と何度言っても、何の根拠もない民間食事療法に縋り付くご家族を何組も見てきました。
・・・前置きはこのくらいにしましょうか。
この治療方法が発見されたのはつい先月です。
この治療方法はまだ確立していません。
・・・というのもこの治療に使用される技術『ちんこ投げ』自体が最近までロストテクノロジーだったのです。
御存じの通り、ちんこを投げられた人は約15歳に体が変化します。
近年の研究で戻るのは見た目だけではなく、中身つまり内臓も15歳に戻る事が確認されました。
つまり治療方法がない内臓疾患にはちんこを投げ、内臓を15歳当時にリフレッシュすれば内臓疾患は完治するのです、もちろん息子さんが患っているガンも同様です。
当病院の看護師の女性は全員『ちんこ投げ』をマスターしています。
五名ほど『ちんこ投げのプロになりたい』と看護師を辞職した女性もいますが、この世界のどこにも『ちんこ投げのプロ』などは存在しないので、そのうちに目を醒まして戻ってくるでしょう。
・・・ただ、問題がないわけではありません。
『ちんこ投げ』は保険適用外なのです。
先進医療が高いのは『保険が効かないから』なのです。
『ちんこ投げ』も同様に、まだ医療行為として認められていません。
ですので実費を払っていただく事になります」
「・・・い、いくらくらいかかるんですか?」
「3000くらいはかかると思っていて下さい」
「3000万円ですか・・・かまいません。息子が助かるなら自宅を売ります!」
「いえ、3000円です。
ちんこ投げるのにそんなに金が必要になる訳ないじゃないですか。
病院で会計の時3000円取られたら『うわっ今日は高かったな』と思うじゃないですか。
それくらいの覚悟は必要という事です。
そして・・・ちんこを投げられた息子さんは二度と男性には戻れません。
それでも良いですか?」
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「じい、今日のスケジュールを聞かせてくださる?」
「はい、お嬢様・・・今日はこの後、8時からお花、その後、10時からはお琴、昼食後、13時からは日本舞踊、その後、15時からは御茶、最後は17時からちんこ投げ、となっております」
「さ、最後何て言ったの?
聞き間違えかしら?」
「最後は17時からちんこ投げの授業でございます。
聞き間違えを疑うのも致し方ございません。
『ちんこ投げ』が乙女の嗜みとして花嫁修業の一環と言われ出してから、それほど時が経っている訳ではありません。
ですが『ちんこ投げ』は平安時代から平安貴族の女性達の間で行われてきた由緒正しき行事でございます。
決していかがわしい物ではございません。」
「『ちんこ投げ』の事は私も聞き及んでいます。
ですがこの時代、ちんこ投げは人道上の理由で中々行えない、と聞いております。
一度ちんこを投げられた者は二度と男には戻れないと聞きました。
ちんこを投げられる事を希望する男も少数ではあるものの存在すると言います。
特に治療行為に『ちんこ投げ』を利用するものなどは少なくはないと聞きました。
しかし今日現在『ちんこ投げ』を行う者は訓練を受けた熟練者と言われています。
果して私に『ちんこ投げ』をさせてくれる殿方がいるのでしょうか?
熟練者にちんこを投げられた者は痛みを感じるどころか、投げられた事にすら気付かない・・・などと言います。
私にちんこを投げられた者は地獄のような痛みを感じるでしょう」
「確かにお嬢様にちんこ投げはいささかはようございます。
ですが『習うより慣れろ』などと昔から言いますし、実践あるのみでございます。
お嬢様は『ちんこを投げさせてくれる者がいないのではないか?』と心配したようですが、決してそんな事はございません。
我々が融資している中小企業の中には債務の返済が滞り、経営が破綻している企業も悲しいかな少なくはない現場でございます。
そういった経営者を以前であれば地下へ送り込み借金返済のためすくない賃金で働かせていたのですが、近頃では借金を棒引するかわりに『ちんこ投げ』に応じる中小企業の経営者が増えてきました。
この不況が続き、経営破綻する中小企業がある限り、お嬢様が投げるちんこに困る事はございますまい。
現に今日もこの屋敷にちんこをお嬢様に投げられる予定の元経営者が二百名以上スタンバイしています。
今日は初日なのでありませんが、投げたちんこを花のかわりにいける令嬢も多いとの事です」
「生け花ならぬ、生けちんこね。
少し興味が湧いてきたわ」
「そう言われると思いまして今日は生けるちんこを沢山用意させていただきました。
御堪能いただければ幸いです」
「流石はじいね。
じゃあ生けちんこを楽しみましょうか!」
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「シグナルピンク!」
「同じくシグナルピンク!」
「同じくシグナルピンク!」
「三人揃って『信号戦隊シグナルスリー』!」
「・・・やっぱり信号は赤、青、黄の三色なんじゃないかしら?」
「昔はその三色だったんだししょうがないんじゃない?三人揃ってちんこ投げられちゃったんだから。
『戦隊モノで女はピンク』この鉄則だけは破れないんだし三人ともピンクなのはしかたないわよ」
「・・・それより元シグナルレッド、なんであなたそんな『オネエ言葉』なのかしら?」
「うるさいわね、元シグナルブルー。
戦隊モノの女性隊員は女性らしさが求められるのよ。
ともすれば、ステレオタイプの女性らしさが求められる事も多いワケ。
女性隊員になってしまったんだから『女性らしさ』を演出するのは当たり前じゃない。
その手の演出は必要不可欠よ?
演出と言えば元シグナルイエロー、あなた昔から全く演出する気ないわね。
主題歌の『赤い太陽。青い大海。黄色いバナナ』って歌詞を聞いて「これで良いんじゃない?」って言った時から思ってたのよ。
何よ『黄色いバナナ』って!」
「ちゃんと考えてるわよ!
黄色いモノなんてバナナとおしっこ以外に何か思いつく?
ビールも黄色いけど、子供向けで歌詞にビールはないでしょ?
それにおしっこもありえない。
PTAから苦情の嵐だわ。
キリンも黄色いけど一色じゃないし、黄色一色ならバナナ一択でしょ?」
「黄色いモノなんて色々あるじゃない!
サフランライスとか・・・
ターメリックライスとか・・・」
「なんなのよ?その不思議なライス縛りは!?
それに元シグナルレッド!
あなたイメージとファンサービスを大切にしすぎなのよ!
あなたが『三人の大ファンです!ちんこを投げさせてください!』なんてファンに言われて了承しなきゃ、こんな状況にはなってないのよ?」
「人気商売なんだからファンサービスは当たり前じゃない!
それより『三人ともピンクで見分けがつかない』というクレームに対処しなきゃ。
今日から私達は『サーモンピンク』『ショッキングピンク』『シルバーピンク』よ!」
「なんで元レッドだけメタリックなのよ!?一人だけ目立ってずるいわよ!?」
「元ブルーなんて良いじゃない。
私なんて『サーモンピンク』よ?
なんかいやらしい響きがあるわ!」
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「聖者は男性でもなれます。
クレリック然り、司祭然りです。
しかし、回復職は女性のみのジョブです。
彼女達は『聖女』と呼ばれ、回復職には修道院で修業をおさめた者のみがなれる、そう思われてきたのです。
その常識は異世界より転移してきた少女に伝えられた『チンコナゲ』という技術により、否定されます。
彼女はクレリックの中年男性のちんこを投げました。
いえ、彼の除霊技術は見事だったんですよ?
ただ、彼の活躍の場面は本当に限定的でした。
霊などは墓、しかも呪われた墓でなければいなかったのです。
ほとんどの場面で彼は『中年太りの邪魔なオッサン』でした。
仲間には『役に立たないクセに人一倍食って太りやがって・・・』そう思われてました。
我々のパーティの戦闘を見た異世界から転移してきた少女はクレリックの男のちんこを投げたのです。
そこに大した意味はなかったそうです。
『パーティの主要メンバーのちんこを投げたら、他のメンバーからタコ殴りにされる』と思い、一番役に立っていなかったクレリックのちんこを投げたそうです。
ぶっちゃけ我々はクレリックが死のうが生きようが別にどうでも良かったのです。
いえ、我々の精神衛生上、死んでいて欲しかったのです。
彼女が投げたクレリックのちんこをたまたまそこに居合わせた『地獄の番犬』と言われているヘルハウンドが口でキャッチして、そのままムシャムシャとヘルハウンドがちんこを食べる光景を我々は呆然と見送りました。
ちんこを投げられたクレリックは中年太りのオヤジから少女に我々の目の前で見た目が変化しました。
少女は必死で自分のちんこのあった場所あたりに魔法をかけていました。
その魔法が『修道院で修業を積んだ女性しか発動出来ない』とかつて言われていた回復魔法だったんです。
それ以来、『回復職が必要なら男性の聖者を仲間にしてちんこを投げれば良い』と言われるようになります。
我々冒険者にとって彼女こそが救世主だったのかも知れません」
ここは冒険者の街。
街の中心にちんこを投げる彼女の銅像が立てられている。
その銅像に向かって沢山の冒険者が今日も手を合わせ祈っている。
その後、彼女の行方はようとして知れない。
確かに彼女、否、『チンコナゲの君』はここにいたのだ。