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ちんこ投げ  作者: 海星
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プロローグ

 私はしがないコンビニの雇われ店長だ。


 何故雇われ店長などをやっているのか?と言われても


 「他に何も能がないから」としか言いようがない。


 今日も今日とて労働に励む。


 ただ私がやれる事には限界がある。


 労働は時に「人手」を必要とする。


 私がいくら働く以外に何も能がなくとも、24時間連続で働き続ける事は出来ないし、24時間働いたとしても、それでも人手が不足する時もある。


 私はオーナーの許可を得て新しいアルバイトを雇う事とした。


 フリーターはコンビニ運営の強い味方だ。


 だがバイトをしていないフリーターなど言い方はよろしくないが「良い歳をこいた無職」だ。


 私はバイト面接で、そのフリーターの人となりを判断しなくてはならない。


 「あなたはフリーターなようだが何か他にやっている事でもあるのですか?」


 こんな良さそうな娘さんにも必ずしないといけない質問だ。


 遊ぶお金が銀行口座に振り込まれた途端、突然何の連絡もなく来なくなるフリーターもいないではないのだ。


 「私は夢に向かって活動をしています。


 しかし、夢は今のところ金にはならないし、腹は膨れません。


 フリーターとして副業をして日銭得ているのです。


 軽蔑しますか?」娘さんは言った。


 「いいえ、私は夢破れてコンビニの雇われ店長をしています。


 なので、夢を追いかけてフリーターをしている人をまぶしく、羨ましく思って応援しています。


 軽蔑などとんでもない。


 夢を応援し、そのスケジュールを優先させるつもりですよ。


 シフトも最大限、考慮するつもりです。


 一つだけ失礼を承知で聞かせて頂きたい。


 あなたの追いかけている夢とは何ですか?


 バンドマンでメジャーデビューを目指しているのですか?


 物書きを目指しているのですか?」私は娘さんに聞いた。


 ほぼ採用は確定していたが、採用前に彼女の「夢」を聞いておく必要があった。


 「どの程度彼女の夢にバイトシフト等で配慮する必要があるのか?」などを知っておく必要があるからだ。


 「私の夢は・・・あまり世間では市民権を得ていないのですが・・・『ちんこ投げ』です」娘さんは恥ずかしそうに言った。


 「え?何て?」私は聞き返してしまった。


 確かに夢に貴賎はない。


 だが私は『ちんこ投げ』という言葉の響きで、変な物と判断してしまったのだ。


 娘さんは私の態度を見て憤慨したようだ。


 「言葉の響きで判断しないでいただきたい」と言うように娘さんは「『百聞は一見に如かず』と申します。


 是非、あなたに『ちんこ投げ』を見て経験していただきたいのですが・・・」と言った。


 私は「あぁ、気分を害させてしまった。


 私にはその『ちんこ投げ』とやらを見て聞いて経験する義務がある」と思った。


 「是非、私にその『ちんこ投げ』とやらを経験させていただけまいか?


 何分不勉強の身、ご容赦いただきたい」私は娘さんの機嫌を取るように言った。


 「では今から『ちんこ投げ』を行います」やりなれているのか中々堂々としたものだ。


 娘さんは「ハァ!」という掛声と共に私のぺニスを千切ると窓から外に投げた。


 痛みはほとんどない。


 注射の時のチクリとしたような痛みのみだ。


 後で聞いた話だが、熟練者の『ちんこ投げ』には全く痛みはないらしい。


 熟練者は人混みの中でその場にいる男性全てのちんこを全く痛みを感じさせないどころかちんこを投げられた事を気付かせずに千切っては投げ、千切っては投げ・・・出来るらしい。


 窓から投げられた私のペニスは外を走っていた赤帽の幌のついた軽トラの荷台の段ボール箱に収まったようだ。


 段ボールには『根室昆布』と書かれており、段ボールに書かれている情報を信じるなら私のペニスは日本の最東端を目指す事になったようだ。


 いや北方四島がロシアから返還されれば、ペニスの向かう場所は最東端ではなくなるのだ。


 北方四島は日本固有の領土です。


 公共広告機構です。


──────────────────────


 時は平成の世よりもう少し先の話である。


 男尊女卑の思考が更に強まっていた。


 理由は色々ある。


 イスラムの台頭、少子化・貧困化が社会問題となり一部の富裕層にハーレムを認めた事が男尊女卑の思想に拍車をかけた、などの説もあるが全てはタイミングであろう。


 そのような思想の持ち主が権力者となり、その思考を後押しするような社会的背景が重なり、民意がその思考に盲従した・・・それだけの話だ。


 しかし第二次大戦前後のような「女性は家で家事のみをして子供を産み育てていれば良い」という発想にはならなかった。


 何せ少子化、労働力不足の時代である。


 女性が働かないという事はつまりマニュファクチャーの放棄であり、産業革命以前の世の中に逆戻りしてしまうという事だ。


 では何にそんなに色濃く男尊女卑の傾向が出ているのか?というと・・・。


 軍事である。


 兵器の全てが女性使用が前提の造りとなり、男性が使用しようとしても全く起動しないように設計されているのだ。


 元を正せば「男性の攻撃性を憂い、男性に武器を持たせないようにする」という発想から産まれた『武器女性専用化計画』ではあるが、軍人に男がいないのではなく女性に攻撃の司令を下すのが男性であれば、男性の攻撃性を女性が替りに実行しているにすぎず、逆に男性は自分が攻撃に加わらなくて良いので男性の立てた作戦は更に攻撃性を増した。


 そして血で血を洗う『第三次世界大戦』が始まった。


 男性は安全な場所から、女性達の戦いを傍観していただけである。


 ただ男性にとって問題もあった。


 深刻な女性不足である。


 本来野性動物でもハーレムというのは、少数のオスと多数のメスで成立する。


 それはゾウでもライオンでもゴリラでも同じだ。


 肉食動物、草食動物、雑食動物は関係なく生物の摂理なのだ。


 当たり前である。


 畑があり、種の数が確保出来るのであれば問題なく収穫は行えるように、種だけ沢山あっても、畑がないんでは収穫は見込めないのだ。


 日本古来でも大奥というハーレムはあり女性は沢山いても、男性は少数というのは云わば決りのようなものである。


 だが第三次大戦で女性の数は減り、男性の数だけは多いという状況は男性のダブつきを助長させるものであった。


 しかも戦時下の人口不足を解消するための『富国強兵策』『産めよ育てよ』という思想に女性は不可欠であった。


 そこで立案された極秘作戦が『女性製造計画』である。


 『女性を製造する』と言っても別に女性のクローンを作ろうと言う訳ではない。


 正確には『女性クローン化計画』は失敗したのだ。


 クローンの産む子供は男性のみ、つまり次の代に繋がらないのだ。


 そこで日本古来の娯楽『ちんこ投げ』が注目されたのだ。


 日本で一番最初に『ちんこ投げ』を行ったのは清少納言だと言われている。


 『ちんここそもののあはれ』と清少納言が言ったとか言わないとか・・・。


 そのような事はどうでも良い。


 ちんこを投げられた男性は余生を女性として過ごさざるを得ない。


 尼寺に入り、余生でちんこの詩を作ったり、ちんこの絵を描いて過ごすのが通常と言われていた。


 『言われていた』と言うのは『ちんこ投げ』は現在行われていない、云わば『ロストテクノロジー』なのである。


 私は国の命を受けて、かつてちんこを投げられた者が行き着く尼寺『陳投寺』を訪れた。


 『陳投寺』は仏舎利(釈迦の遺骨)をもらい損ねたという事だ。


 『陳投寺』の開祖である『陳効』は仏舎利を貰える事になった時に「是非釈迦のちんこの骨が欲しい」と言ったそうな。


 だが「釈迦のちんこには骨はなかった」と言われ、それで仏舎利の獲得を断念したという。


 「あれだけ固くなるのに骨が無い訳がない」陳効は泣きながら抗議したという。


 陳効の涙がたまり、それが長野県にある諏訪湖になったという言い伝えもあるが「まあ嘘だろう」という見方が近年では強い。


 「ここが陳投寺か・・・」私は門をくぐった。


 「ここは尼寺です。


 ちんこのある者は決して門をくぐってはいけません!」


 女性住職とおぼしき尼が私のちんこを目の前に広がる諏訪湖に向かって投げた。


 今、諏訪湖では外来種の繁殖が問題になっている。


 湖に投げ込まれた私のちんこをブラックバスが素早くパクっと食べるとそのまま湖の底に消えていった。


 「ふぅ、これでよし」女性住職は汗を拭うと言った。


 「ようこそ陳投寺へ」女性住職は私へ向き直り言った。


_________________________________________________________________________________________


 


 オリンピックの正式種目に剣道が選ばれない理由を知っているだろうか?


 剣術は細分化されすぎていて、どの協会を頂点として見て良いかわからないからだ。


 協会が二つある場合などは、今現在正式種目に選ばれている競技でも協会が別れている国に参加資格はない。


 過去にテコンドー協会が二つに別れていたため、メダリストですら日本人に参加資格がなかった事もあった。


 では何故『ちんこ投げ』はオリンピックの正式種目にならないのか?


 『ちんこ投げ』に協会は存在しない。


 そもそも『ちんこ投げ』はスポーツじゃない。


 『ちんこ投げ』とスポーツとの関係はなくはない。


 茨城県のスポーツ公園に『ちんこ投げのメッカ』と呼ばれる場所がある。


 何も知らずにスポーツ公園を訪れた男性はほぼ100%ちんこを投げられる。


 スポーツ公園にある人口池に向かってちんこを投げる事になっているようだ。


 池に浮かんでいる物を目をこらして良く見ると、それはちんこである。


 人口池にはブラックバスやブルーギルなど問題になっている外来種は繁殖していないが、本来琵琶湖の固定品種である国内外来種であるヘラブナや、近年外来種と認められたコイが数多く見受けられ、3メートルを超えるコイが数百匹いるのを見ると悪食で知られるコイはちんこをエサにして成長している事、ちんこには栄養分が豊富である事がわかる。


 『ちんこ投げ』は『オーバースロー』『サイドスロー』『アンダースロー』の三通りがあると言われていたが、私のちんこを投げた尼の投球ならぬ『投ちんこフォーム』を見ると、スリークウォーター気味の『投ちんこフォーム』だったので『投ちんこフォームは気分次第』なのだろう。


 よくある質問に「投げられたちんこが再びくっつく事はあるのか?」というものがある。


 くっ付く訳がない。


 投げられた者は徐々に女体化する。


 だがそれは徐々に女になる訳ではない。


 ちんこを投げられた時点ですでに女にはなっているのだ。


 女子児童は徐々に体に丸みを帯び、成人女性らしい肉体に変貌する。


 男性でも女性ホルモンを注射する事である程度丸みを帯びた女性らしい体を手に入れようと思う性同一性障害者などもいる。


 つまりちんこを投げられた時点で女性なのだ。


 女性ホルモンが体に行き渡る事で、女性としての違和感が徐々に減っていくだけの事なのだ。


 女性の体にちんこを移植しても男には決してなれない。


 それ以前に女性の体にちんこは移植出来ない。


 つまり私は男には戻れないという事だ。


____________________________________________________________________________________________


 少子化に歯止めをかけるために注目された「ちんこ投げ」であるが、どうやって「ちんこ投げ」が市民権を得るか国連で議論が交わされた。


 議論の段階で出た案に『「ちんこ投げ」のスポーツ化』があった。


 陸上競技の中に『槍投げ』『砲丸投げ』『円盤投げ』『ハンマー投げ』『ちんこ投げ』・・・『投てき5種』という事で陸上競技の中にこっそり混ぜ込んだのである。


 しかし問題が発生した。


 深刻な参加競技者不足である。


 「男子ちんこ投げ」に至っては参加競技者数0である。


 後に「男子はちんこ投げは出来ない」という事が判明する。


 女子も参加競技者は3名である。


 つまり参加した時点で銅メダル、世界三位は確定である。


 それ以上の問題も発生した。


 「ちんこを投げられても良い」という男が一人もいなかったのである。


 元々娯楽である「ちんこ投げ」に決まったルールなどはないが、陸上競技化するにあたって明確化されたルールには「二名のちんこ投げの競技者が交互にちんこを投げ、6勝した者の勝ち。5勝で並んだ場合にはサドンデス形式で延長戦を行う」とある。


 つまり3人総当たりで競うなら、延長を考えなくても20人はちんこを投げられて良い者が必要になってくる。


 そもそも『ちんこ投げ』とは何を競う競技なのか?


 投げられたちんこの飛距離なのか?


 投ちんこフォームの美しさなのか?


 ちんこを千切る時に痛みを感じさせない技術なのか?


 競技委員長の「もう全員優勝で良いじゃん」という鶴の一声により、『第一回女子ちんこ投げ』は三名同時優勝という事で幕を閉じた。


 そして第二回は決して行われなかった。


_____________________________________________


 大切に可愛がられた人形には魂が宿るという。


 人形のような無機物でさえ魂が宿るのだ。


 有機物であるちんこに魂が宿らない理由はない。


 なので前出である『陳投寺』では『ちんこ供養』が行われている。


 嘘か誠かは定かではないが「ちんこが意思を持って喋ったり動いたりする」というケースも報告されている。


 「我が人に見られるなどというのは具合が悪い。


 おい、元主人。


 お主の口の中に隠れさせてもらえまいか?」意思を持ったちんこはこのように言ったらしい。


 元主人がどのように対処したかは不明だ。


 だが、私に付いていたちんこが意思を持って動いたり喋ったりする事は決してないだろう。


 大切に可愛がっていた人形が意思を持つのだ。


 私はちんこをそれほど可愛がっていない。


 可愛がるどころかけっこうスパルタ気味であった。


 時に激しくしごき上げたものだ。


 それどころかちんこに一度たりとも良い思いをさせていないし、一度も本来の使い方を放尿以外でしていない。


 恨みでちんこが化けて出る事はあっても、可愛がられたちんこが動き出す心配をする必要は一切ない。


 それ以前に私のちんこはブラックバスの胃の中だ。 

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