『クロノス』最終話ー「君の笑顔」
「うっ…げほっ」
シェスはもう戦う事すら出来ない状態だった。
「やった…みたいだな。……ほら、”全てがいい方に向くとは限らない”だろ?」
「っ…覚えてなさい! 私はまだ諦めた訳じゃないわよ!」
ふらふらとシェスは立ち上がり、風の中に気えた。
「ありがとな、ユスト。お前かいなかったらどうなっていたか…。」
「いえ、全てはジオンさん、あなたが倒したのですから。」
「謙虚だな。」
街で旅の支度をし、笑いながら歩いていると、すっかり元気になったミナが駆け寄って来る。
「ジオーン、さっきのアイスクリーム屋さん寄ってこよ…」
ふと、ユストの事が気になったのだろうか。言葉が途切れている。
「ありがとう、ユストさん。」
ミナはユストに声をかけた。
「お礼を言われるような事は何もしていませんよ。…正直、僕も怖かったですから」
「…怖い? あなたも怖かったの?」
「そうですよ。あんな時に飛び入り参加して、逆にジオンさんたちが更に窮地に陥ったらどうしよう、とか。でも、怖さって乗り越える為にあると思うんですよね。」
「乗り越える為?」
「はい。怖さだけ以外にもそうですが、どんな壁でも、幾年掛かってでも、乗り越えれば何より自分の力になる。僕はそう思っています。」
「…自分の、力…。」
「でも団も抜けたし、何だかスッキリしました。」
そう言い放ったユストは、俺たちの方へ向き直る。
「…あの…」
「?」
俺とミナは、同時に首を傾ける。
「…突然ですが、よかったら僕も旅仲間としてご一緒させて頂けませんか?」
「え」
思わず目が点になった。
「僕、団体抜けて行く宛もないですし。…すみませんが、よかったら。」
ミナの方はというと、
「勿論だよ! 」
ミナが決めたのならそれでいい。
これからも、多くの追ってが現れるだろう。
『クロノス』への道もまだまだ程遠い。
そうだとしても、俺はミナを守る。誓ったんだ。今も、これからも、『クロノス』に辿り着いた後も。
そうして、『クロノス』で魔力制御の訓練をし、追ってが来なくなったら。
全てが終わったら。
ミナが恐怖に怯え泣かなくなったら。
…そうすれば、
きっと安心して、ミナの笑顔を見ていられるだろうから。
見ていたいんだ。君の笑顔を。
「守り抜くよ。必ず。」
決意を再確認する。
独り言のように、俺は呟いた。
*
これにて『クロノス』は完結とさせて頂きます。
この小説を読んで下さった方、いえ、一瞬でも見て下さった方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございました。