第二話ー「誓い」
ーーーー何もかもを出来る訳がない。
だから俺は、
「ねぇジオン、空ってどうしてあんなに蒼いのかな?」
ーーー決めたんだ。
たった1つだけーー
世界中から狙われている、この無垢な少女を守り抜くと。
ーー俺の名前はジオン。
守りたいその少女は、屈託無い笑顔で空を仰いでいる。
「ジーオーンっ、聞いてる~?」
「あ…悪いミナ、何の話だっけ?」
「空の話!」
ーーーこうして見ると、世間知らずな事以外は無邪気な普通の少女なのだが、
ミナは万物をも左右すると言われる程の魔力を持っている。
それ故、オーソドックスだが、世界を我が物にしたいという人間やら何やらで、多くの人間に目を付けられている。
更に厄介な事に、ミナには持っている力に気づいてすらおらず、魔力の制御すら出来ない。
だからこそ、『クロノス』への旅をしている。
ー『クロノス』
それは全ての魔力の集合体で、あらゆる魔力を吸収しつつ存在し、世界の均衡を保っているという場所。俺たちの旅の終着点だ。
目的はミナに魔力の制御を出来るようにするため。
制御鍛練時に溢れ出る魔力は、『クロノス』に吸収される。
ーー守り抜いてみせる。
今も、これからも、クロノスへ辿り着けた後も。
「ジオン、食事にしようよ!」
「ああ、そうだな。」
ーー人並み外れた静かな河川敷。
ミナはサンドイッチをほうばりながら、景色を眺めていた。
「綺麗…。」
感受性豊かなミナはともかく、俺まで感動してしまう程の蒼い空や、太陽を反射して輝いている川。
眩しいな、なんて思って目を細めたその時、
「ジオン、次どこいく?」
「あ、そうだったな。」
単純に、『クロノス』は西にある。
暫く平穏だったが、いつまた敵に会うかわからない。
早いうちに移動しておくに越した事はない。
「西かな。」
クロノスに近づけば、敵も増える。
しかし、こっちもゆっくりしている場合ではない。
「はーい!」
ミナの声が高々に響く。
ーこれはまだ、旅の途中にしかすぎない。