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一四人目  作者: 天月黎祠
2/2

二周り

かごめかごめ

籠の中の鳥は

いついつ出やる

夜明けの晩に

鶴と亀が滑った

後ろの正面だあれ?


 「…かーごめかーごめ…」

辺りにかごめ唄が響きはじめ、かごめかごめが始まった。

「かーごのなーかのとーりーはー」

「いーついーつでーやーるー」

「よーあーけーのばーんーにー」

「つーるとかーめがすーべったー」

「うしろのしょーめん」

「だーあれ?」

 唄が終わった。だが、どうすればいいのか、分からない。このまま誰かの名前を口にすべきなのか。だが、口にして、もし、実際に何かあったら。何かあってしまったら。それなら、何も言わずに、黙っていた方が良いのか?いや。それも何かある気がしてならない。Aだけでない。皆、その事を思案しているようだった。そして誰もが、静かに、だが確かに、少しずつ、恐怖に蝕まれていた。誰もが、この身の保障の無い遊びをしてしまったことを、後悔していた。

 暫く、沈黙は続いていた。だが、

「H」

重く、だが鋭く張り詰めた空気に、その一言は響いた。輪の中に居たAの、乾いた口から、精一杯の、掠れた声から発せられた名は、「H」だった。

 言ってしまった。この時、Aは後悔と罪悪感を覚え、身動きができなかった。いや、正確には、身動きを取りたくなかった。後ろに居るのが誰なのか、振り向き、確かめることなど、とてもできなかった。「言ってしまった!」「答えてしまった!」「何かあるのかもしれないのに!」「皆に何かあるのも知れないのに!」「Hに何かあるのかもしれないのに!」「俺に何かあるのかもしれないのに!!」Aの声にならない、声にできない叫びであった。

 Aだけでない。誰もが、言ってしまった、と、思っていたであろう。誰も何も言わない。そんな静かな時間が流れてゆく。いや。時間すら、全てが停止したかの様な空間。ただそれだけの世界が、そこにはあった。

 誰かの名を口にすれば何かありそうで、かと言って、誰の名も口にしなければそれも何かありそうで。その様な状態だからこそ、皆、Aの行為が、そして言葉が、異様な程に気になったのだ。

 しかし、暫く、皆、様子を伺っていたが、何事も無かった。だが。一つの恐怖の終わりと共に、また新たな恐怖が浮かび上がってくる。すなわち、Aの答に答えるか、否か。

 心の奥底から、さらに、滲み出てくる恐怖。再び、恐怖に蝕まれてゆく。おそらく、誰もが精神的疲労を感じているであろう。

 その時であった。

「は…」

それは微かな声であった。しかし、確かに皆に聞こえた。全員の意識が、声の方へと向けられる。

「はず…れ…」

Iであった。

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