聖女召喚の目的
暫くブレスレットと格闘したが、やっぱり外れなかった。
で、俺が諦めて屋敷の中を歩いていると・・・・
「ふんふんふん~♪」と陽気な鼻歌が聞こえてくる。
その音の先には・・・やっぱりあいつがいた。
「おっ、ミカンじゃん」
「ちょりっす、スバルですか」
ミカンを発見。
彼女は両手に黒い箱を持っていた。
ランドセルぐらいの大きさだ。
「ミカン、何だそれ?」
俺が箱を指差すと。
「これは、その・・・・必要なものです」
答えを濁すミカン。
二カーっと笑って誤魔化す。
「何に必要なんだ?」
「色々ですよー」
「ふんふんふん~♪」っと口笛を吹くミカン。
怪しいが・・・今はそれどころじゃないな。
今大事なのは・・・・
「ミカン、ブレスレットが外れないんだけど」
そうこれだ。
全く外れない。
腕にあるのが気になってしまう。
だがミカンは。
「無理ですよ。それに外す必要もないじゃないですか。何いってるんですか?」
「おかしなこと言わないで下さいよ」っと、きっぱりと言う。
「しかし、つける必要もないだろ」
「でも、無理に外すと、スバル死にますよ」
「はぁーーーーー!!!」
「わぁあああああっ!!」
ミカンがビックリしている。
「どうした?ミカン」
「スバルが大声だしたから、ビックリしたんです」
「はぁー」っと落ち着くミカン。
ほっとひといきついている。
その姿を見ると俺も落ち着く。
「って、このブレスレット外すと俺死ぬの?」
「そうです。神の契約ですから。破ると死にます。でも大丈夫ですよ。外す必要はないんですから」
自信満々にいいきるミカン。
自分のブレスレットを誇らしげに見せる。
「まぁ、確かに積極的に外したいわけじゃないけど・・・なんか爆弾でも体につけられた気分だ」
「暗いこと言わないで下さい。心臓だって同じものですよ。いつか止まるんですから」
「いやー、まぁ、そうだけど・・・・」
「スバル、ファイトです。悩みがあったら、お姉ちゃんに相談してくださいね」
優しげな目線をむけてくるミカン。
「お、おう」
俺は何故かミカンに励まされた。
で、ミカンに聞こうと思っていたことを思い出す。
「ミカン。俺は聖女として何をするんだ?演芸会ってのがあるんだろ?」
「そうでしたね。次の演芸会のために励まないといけません」
「うんうん、それは大事です」と頷くミカン。
「それで、演芸会では何をするんだ?」
「知りません」
「?」
「・・・・・」
俺とミカンは見つめあう。
二人とも完全に「?」状態。
「ミカン、知らないのか?」
「はい。というか、まだ決まっていませんよ。他の聖女も知りません」
「え?」
「演芸会の三日前に内容が伝達されるんです。ですから今は、全般的に能力を高めるのが良いです」
(ほーう。不正防止か何かの対策だろうか)
「それで、能力っていうと、魔法とかか?」
ミカンは「うーん」と考えてから。
「そうですねー、ステータスやスキルを向上させるのが良いでしょう。聖女といえども、地道な努力、レベル上げが大事なんです」
(そのあたりはRPGと同じだな。レベルを上げて物理で殴るか)
「というか、そもそも論なんだが、世界を救うって何をするんだ?」
(魔王でもいるのだろうか?)
「波と戦うんです」
「波?」
「はい。波です」
「数カ月おきに波とよばれる現象がおき、魔物が襲ってくるのです。その魔物を倒します」
(魔物の発生源みたいなものか・・・・)
「へぇー、そうなのか、魔物退治。ということは武力が必要と」
「はい。戦闘です。戦いですよ」
「シュッシュ」っと声を出して、腕を動かすミカン。
シャドーボクシングスタイル。
でも、箱を持っているので上手く動けていない。
だが俺は思った。
「しかし、神様がいれば魔物も楽勝じゃないのか?」
神が魔物に負けるとは思えない。
「神様達には色々事情があるのです。波とは人が戦わなければなりません」
「ほう。まぁ、そうだよな。そうじゃないと、わざわざ異世界召喚しないだろうし」
「そうですよ。スバルはお馬鹿さんですね」
ミカンがニヤニヤと俺を見て笑う。
弟を見る、姉風の笑いだった。
つまり、悪魔の笑いだ。
で、俺は悪魔つながりで思った。
「というか、ミカンって悪魔族っていっていたけど、聖女の俺といていいのか?
悪魔って魔物の仲間じゃないのか?」
「そこに気づくとは、さすがスバル。鋭いですね」
「いや、誰でもきづくだろ・・・・」
「私は特別なんです。悪魔族ですが、良い悪魔なんです。ほらっ、とってもいい人に見えるでしょ?」
チラチラッとウインクしてくるミカン。
(まぁ、悪魔には見えないな。弱そうだし、ちっこいし。小さなシッポも揺れているし)
俺はミカンのしっぽを触ってみた。
「きゃっ!」
ミカンは叫ぶ。
「な、何するんですか?」
赤い顔をして、涙目なミカン。
とっても恥ずかしそうな顔をしている。
「しっぽを触っただけだけど」
「しっぽは触ってはいけません。デリケートな部分なんです」
「そ、そうか・・・わるい」
「次はダメですよ」
ミカンはしっぽを大事そうにサワサワしている。
でも、すぐに気を取り直して俺を見る。
「では、スバルは励む必要があります。
まずはスバルの腕をみましょうか。この魔物を狩ってきてください。近くの森にいます」
ミカンに渡されたのは、一枚の紙。
そこには、『ホワイトラビット』の文字と、場所が書かれている。
「うさぎ狩りか?」
「そうです。中々強いんですよ。よく、冒険者の実力をみるのに使われる魔物です」
(ほうほう、って、あれ?)
「ミカンはこないのか?」
「お姉ちゃんは他にやることがあるのです。でも、子猫を一匹つけますから安心してください。
この子たちも結構強いんですから」
「ねぇー」といって、足元にいた子猫の頭を撫でるミカン。
ポンッ
そして俺はミカンからネコを渡される。
俺の頭の上にのっかるネコ。
「では、頑張ってくださいね。期待してますよ。困ったらお姉ちゃんを呼んでください。
スバルは弟なんですから。お姉ちゃんに甘えて良いんですよ」
俺はお姉ちゃん・・・いや、間違えた。
ミカンと別れた。