宮殿の姫
ミカンにつきそって、黒薔薇の宮殿内を歩いていると・・・
少し開いた扉の隙間に、大きなネコを発見!と思いきや。
ネコのぬいぐるみ、いや、猫のパジャマを着た女の子がいた。
ネコ耳がついているし、しっぽもある。
(なんだあれ?)
ネコぱじゃまの女の子は、こっちをじーっと見ている。
俺と目があうと、ダダダダダアアアアーーっと逃げていく。
(なぜにげる?)
ミカンが俺の方をみる。
「どうしたんですか?立ち止まって?」
「いや、その、何かへんなもの、大きな猫を見て」
「この屋敷にはたくさん猫がいますからね。姫様の部屋もうすぐです」
「お、おう。そうだな」
(まぁ、気にすることはないか。多分、この宮殿にすむ子供だろう)
暫く歩くと部屋に着いた。
「姫様、失礼します」
俺とミカンが入ると・・・中には誰もいない。
部屋の奥に設置されている玉座にも誰もいない。
「ミカン、誰もいないぞ。どういうことだ?」
「多分、お散歩にでているのかもしれませんね」
と思っていると、入ってきた扉からシッポがふりふりでている。
「おい、ミカン、しっぽだ」
ミカンに扉を指差すと・・・
「え、はい。あっ、あれは・・・」
しっぽの主。
ネコパジャマを着た女の子は、ダダダダーっと走ってくる。
「どけどけーい」
っと勢いよく言い放つ。
で。
スタッ チョコン
ネコパジャマを着た女の子が玉座に座る。
そして、ドヤ顔でこちらをみる。
(まさか・・・・)
「わたしが黒薔薇姫であるっ!」
ネコぱじゃまの女の子が姫だった・・・・
(・・・・・・・・・・)
俺は驚いてミカンを見る。
「え、ミカン、あのちんちくりんが姫なのか?」
「ダメですよ、スバル。それをいっては。姫は背が小さいことをきになさっているんです」
ミカンもそこそこ大きな声で「小さい」という。
「おい、今、ちんちくりんといったか。わたしをちんちくりんといったか?わたしはちっちゃくない」
「ほら、怒っちゃいました」
やれやれという顔をするミカン。
(いや、ミカンが怒らしたようなもんだろ)
「しかし、あの子ちっちゃいだろ。本当に姫か?」
「むむっ、わたしはこれでも神だぞ、すっごく偉いんだぞ、すーぱー偉いんだぞ」
つるぺたな胸をはる黒薔薇姫。
猫耳が動いている。
(猫耳はパジャマじゃないのかもしれないな)
(いやいや、そんなこと考えてる場足じゃないか)
「そうか。まぁ、よろしくな」
とりあえず姫様に挨拶しとく。
「お、おう。まぁよい。はげめよ」
(何にだ?)
だが、チラチラとこちらを見る黒薔薇姫。
(一体どうしたんだ?)
「ミカン、姫がこっちをチラ見してるんだが」
「はい。多分、久しぶりの異世界人で緊張しているんです。私たちの宮殿は、いつも聖女様をとれなかったですから」
(まぁ、こんだけぼろい屋敷と、王城での対応でなんとなく察していたが・・・やはりダメな場所だったか)
「スバル、姫様に話しかけてあげてください」
「えっ、俺が?」
ミカンを見返すと、彼女はニコニコしている。
笑顔のプレシャーをかけられる。
「そうです。スバルには不思議な魅力があります、自然と女性をひきつけてしまうのかもしれません」
(そんなものないように思うが・・・)
「おい、こそこそ話すな。わたしにも聞こえるようにしろ、わたしもお話し聞きたいぞ」
黒薔薇姫が寂しそうに告げる。
「スバル、お願いします。それと、これをしてください」
耳元でミカンが俺に告げる。
それは「?」なことだった。
「わかった。でも、ミカン、一応姫は神なんだろ。そんなことしていいのか?」
「大丈夫です。それが姫様への謁見です」
自信満々の瞳のミカン。
「まぁ、ミカンがいうなら」
俺は黒薔薇姫に近寄る。
「な、なんだ、どうした?なんで近寄ってくる?なんにゃ?」
ビビル黒薔薇姫。
語尾がネコってる。
だが俺はおかまいなしに手を伸ばし。
「おい、なんにゃ?なにするにゃ?」
黒薔薇姫の頭を撫でるのだった。
ナデナデ。
「ふにゃー」
和む黒薔薇姫。
ミカン曰く、姫様の頭を撫でるのが、黒薔薇の宮殿に入った者の宣誓の挨拶らしい。
俺は黒薔薇姫をなでなでするが。
「ふにゃ、にゃにゃー、って、何をする?何するニャー?」
気持ちよさそうにしながらも、ちょっと怒る黒薔薇姫。
(あれ、怒ったぞ、この子)
ミカンを見返すと、えへへへっと笑っている。
どうやらはめられたらしい。
「わたしは神だぞ、えらいんだぞ、頭をなでるなー」
「気持ちよさそうにしていただろ」
黒薔薇姫はきゅっと唇を噛む。
「それは、気持ちよかったからだっ!。って、ちがーう!」
ピンと猫耳をはる。
ヒコヒコ動く。
(なんだろう?)
(やっぱりこの猫耳、パジャマじゃないのかもしれないな)
「まぁいい、せっかくの聖女だ。この宮殿に入ることを許そう。次の演芸会まで励むと良い」
黒薔薇姫は気になる単語を告げた。
「演芸会?」
「んん?どうした、きいておらんのか?」
不思議そうな顔をする黒薔薇姫。
「何も?確か王城の、あの元気なじいさんもいっていた気がするけど」
俺がミカンを見返すと、彼女は話し出す。
「演芸会とは、聖女候補の実力を確認する会です。定期的に開かれます。
それにじいさんではなく、あの方は賢者様です。この国ではとっても偉い方なのですよ」
(そうか、あの爺さんは賢者なのか。まぁ、異世界召喚できるぐらいだしな)
「人間にしては偉い方だな。わたしの方がえらいが。なんせ神だからな」
えっへんと胸をはる黒薔薇姫。
見栄っ張りなのかもしれない。
というか、神なら本当に偉いのかも。
今いち威厳がないけど。
「とにかく、励むといい、最初の実技は何かしらんが、ミカンが教えてくれるだろう。
我が宮殿に栄光を取り戻すのだー。復興の日は近いぞ」
「はい、黒薔薇姫様」
ミカンが元気よく挨拶する。
俺も一応。
「そうですね」
っと頷いておいた。
―――これが、姫との出会いだった
なんと、姫は猫耳さんだったー