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メガネと狩り


夕食後。

ソフェでくつろぎながら。

俺はミカンに今日の狩りのことを話していた。


「今日は、ゴブリンも狩ったんだ」

「そうなんですか。スバルは着実にレベルアップしていますね」


「そうかも。それにほら、ハンマーも拾った」


アイテムボックスからゴブリンハンマーを取り出す。


「なんだか…大きいですね」


(確かに、2mのゴブリン用だ)


(背が130cm程しかないミカンにとっては大きいだろう)


「ミカン、欲しかったらあげるぞ」

「スバル。失礼しちゃいます」


「?」

「私がこれを何に使うんですか?ハンマーもって何をするんですか?」


「うーん…特に使い道がないな。でも、重石とかに使えるんじゃないか?洗濯物を飛ばさないようにする石とか」

「そうですねー。スバル、ちょっと貸してください」


「ほらっ。ミカン、ちょっと重いぞ」

「はい。心配しなくても大丈夫ですよ」


ミカンがハンマーを受け取る。

普通に片手で持っている。


(そういえば、ミカンは意外に力が強かったからな)


(悪魔族だから、ステータスが高いのかもしれない)


ハンマーをふるミカン。


「いいですねー。指になじみます。何かに使えるかもしれません」

「そうか。なら、ミカンにあげるよ」


「スバル。いいんですか?」

「あぁ。使えないんなら、売ってきてもいいよ」


「ありがとうございます」


ミカンは腰のアイテムボックスにハンマーをしまった。



「そうだ。ミカン、それで話があったんだ」

「何ですか?」


「施設拡充の件だ。ptが1000を超えたから、どうしようかと思って。何を追加するか」

「そうですか…迷いますね」


「1000ptなら、花壇と寝室を追加できる。それに風呂の拡大で、サウナとか温水プールもあったな」

「うーん。ちょっと今すぐは決められませんね。子猫達にも聞いてみて、明日の夜、もう一度話あいましょう」


「そうだな。それがいいかもしれない。拡充できるリストは紙に書いてきたから」


俺はptで追加できる施設リストをミカンに渡す。


「はい。スバル、ありがとうございます。皆に聞いてみます」

「でも、そういえば…施設拡充の件、黒薔薇姫に聞かなくてもいいのか?一応、姫様の力でこの宮殿を維持してるんだし」


(実はちょっと気になっていたのだ)


「姫様は…大丈夫ですよ。聖女の施設拡充については、姫様は口を出してはいけないことになっているんです」


「そうか…一応神だからな。あまり人に干渉してはいけないのか?」

「そんなところです」


(よかった。問題ないようだな)


「じゃあ、ミカン、子猫達にもこの件よろしくー」

「はい。今から聞きますね」



するとミカンは立ち上がり、子猫達が遊んでいる場所に向かう。


「皆~お話があります」

「ニャーニャーニャー」 (何にゃー?)

「ニャーニャーニャー」 (どうしたにゃ?)

「ニャーニャーニャー」 (ご飯にゃー)


ゾロゾロ集ってくる子猫達。


「皆さん。よく聞いてください。スバルが施設を追加するのですが、何がいいかの希望を取りたいと思います」


「ニャーニャーニャー」 (そうにゃー)

「ニャーニャーニャー」 (お風呂にゃー)

「ニャーニャーニャー」 (お風呂は前に追加したにゃー)


「この紙をここに貼っておくので、皆、見てくださいね」


ミカンは今のメッセージボードに紙を張る。


「ニャーニャーニャー」 (分かったにゃー)

「ニャーニャーニャー」 (何があるか期待にゃー)


ゾクゾクと子猫達が集り、紙を見始めた。

「あーだ、こーだ」色々話している。


というか、子猫が集ってモコモコしている。


(何に一番票が集るか、少し気になるな)


そう思いつつ、俺はお茶を飲んだのだった。







その夜


まずは姫様の部屋に向かった。

姫様の部屋の前にある郵便受け?ぽい箱に、ネット通販で買った猫缶をいれるのだ。

姫様に物を送る時は、この箱に入れるのが一般的だ。

何でも姫様は忙しいらしく、顔を合わせる暇はないらしい。


(施設の維持で色々やっているらしいが…具体的には何をやっているんだろう?)


と思いつつも。


その後、俺は銅像の間に行く。

ミカンにも約束の猫缶を渡すためだ。

2日に1回渡すと約束したから。


夜の黒薔薇宮殿の中を移動する。

お化け屋敷みたいに暗い上、所々しゃれにならない落とし穴があるので注意だ。


(穴に落ちたら、数日は戻って凝れないって話だからな)


(魔物もいるらしいし)


俺は慎重に宮殿の中を歩いた。




夜の23時。

銅像の間。

子猫達に見つかるとアレなので、ミカン像の陰に隠れて待っていると。


コツコツ コツコツ


(おっ、誰か部屋に入ってきた)


俺が入り口を見ると…人影が…

あのちっこい、シルエットは…


「スバル、きましたよ。どこですかー?」


ミカンだった。

小声で呟いている。


俺は銅像の陰から出る。


「よう。ミカン。来たなっ」

「うぉおおおおーーーー!、ス、スバルッ!」


硬直するミカン。


「どうした?そんなに驚いて」

「スバル、脅かさないで下さい、いきなり出てこないで下さい。ビックリしました」


「ふぅー」と息を整えているミカン。


「悪いなミカン。次からはゆっくり出るよ」

「お願いしますね」


じゃあ、約束の…ねこ」

「待ってください。スバル」


俺の口を手で塞ぎ、キョロキョロ辺りを見回すミカン。


「何してるんだ?」

「誰もいないか…確認します」


「いや…多分、誰もいないと思うけど。この銅像の間に来てから、誰も来てないので」

「念のためです。子猫達が隠れんぼしているのかもしれません」


そういうと、ミカンが部屋の中を捜索し始めた。

俺も協力した。



暫くして…


「誰もいませんね」

「そうだな。俺も探したがいなかった」


「安全ですね。ではスバル、宜しくお願いします」

「おう」


俺はアイテムボックスから猫缶を出す。


「ミカン、どうぞ」

「はい。ありがとうございます」


恭しく猫缶を受け取るミカン。

大事そうに猫缶を受け取る。


「スバル~~~。とうとう私も貰ってしまいましたよ、この缶をっ~」

「ミカンが欲しがったからな。でも、皆には内緒な」


「分かっていますよ~。スバル~」

「そうか、よかった」


ミカンはウキウキしながらアイテムボックスに猫缶をしまう。


「ここで食べないのか?」

「はい。後でじっくり食べます。ここは銅像の間ですし、食事の場所ではありません」

「そうだな」


すると…


「あっーーー」


ミカンが叫び。


チョコチョコ~~


小刻みに走り、一つの銅像の前に止まる。

ミカン像の前だ。


「スバル。もう銅像を直してくれたんですね」

「気づいたか…あぁ、イメージどおりだといいけど」


「うんうん。よくできています。凄いです。ここもー、ここも直ってます。もしかして、1-3、全てやってくれたんですか?」

「時間があったからな」


「さすがスバルです。グッジョブです」


ビシッと親指を立てるミカン。


「よかったよ。ミカンが喜んでくれて」


(本当に)


「私としては、別にそこまでやらなくても良かったのですが…スバル…、私、嬉しいです」


銅像を見て「ほぉ~~」っと感嘆しているミカン。

ペタペタ銅像を触ったりしている。


(見惚れているようだな)



そして暫く銅像を見つめてから、こちらを振り返るミカン。

俺に近づいてきて…


「スバル、お手を失礼します」

「何だ?」


ミカンが俺の手を握る。

両手で。


「スバル、ありがとうございます」

「おう」


俺の手を、モコモコ揉みながらお礼を述べるミカン。


「良かったです。最近はスバルに甘えすぎかもしれませんね」

「別にいいよ。ミカンも色々やっているだろうし」


(色々宮殿のことをやっているからな)


「えへへっ…そうですかね」

「多分そうだよ」


「多分?」


微妙な顔をするミカン。


(おっと、何か言葉がひっかかったかもしれない)


「いや、嘘だよ、多分じゃなくて本当にそうだよ」

「私も嘘ですよっ。どっちでもいいですよっ。じゃあスバル、この部屋を後にしましょうか。皆に見つかると大変です」


「そうだな。夜も遅いし」

「寝室に行きましょう。眠たくなってきちゃいました。瞼が重いです」

「だな。ここで寝ると風ひくし」

「はい、大理石は冷たいんです」


こうして、俺とミカンは銅像の間を後にした。


1回目の猫缶譲渡が終わったのだった。







次の日。

今日も俺は狩りだ。


朝食を食べてから。

宮殿の玄関で。


「ミカン、行ってくる」

「いってらっしゃい。夕食作って待ってますねー」


「ニャーニャーニャー」 (あたしも行くニャー)


ピョコンと子猫のアコが俺の頭の上に乗る。

狩りのパートナーで、アコの定位置だ。


「よし、アコ、行くか」

「ニャーニャーニャー」 (今日もいっぱい狩るニャー)


俺はアコと魔物の森に向かった。




すると森の入り口で…


メガネにあった。

緑薔薇の聖女だ。


「スバルじゃないか」

「よう、メガネ」


「違う。御神だ」

「そうだったな。どうしたんだ?こんな所で?迷ったのか?」


「魔物を狩り来たんだ。スバルも同じだろ?」

「そうだな。でも、御神をこの森で見たことはなかったと思うけど」


「僕はここにはあまり来ないからね」

「そうなのか。確かに見ないな。それで…一人か?」


「ロンリーボーイさ。宮殿の者がついてこようとしたけど、今日は久しぶりに一人で来たんだ。スバルは子猫とかい?」

「あぁ、子猫のアコだ」


「ニャーニャーニャー」(アコにゃー)


アコが右の前足を上げて挨拶する。

俺の額から右足が離れたので分かった。


「そ、そうか。スバルは動物に好かれるんだな」


ちょっと引き気味のスバル、

お茶会で、黄薔薇の猫聖女、ミクにひっかかれたのを思い出したのかもしれない。


「大丈夫。アコはひっかかないぞ」

「そう願いたい」


御神は俺から距離を取っている。


(信じてないな…軽く猫恐怖症になったのかもしれない)


「それで御神は何を狩るんだ?」

「僕は弱そうな魔物から狩るよ。安全第一だからね」


「そうか。てっことは、ホワイトラビットとかか?」

「その辺りかな」


俺は御神の服装を見る。

特に剣とか武器を持っていないようだ。

俺も同じだが。


「御神も魔法で倒すのか?」

「勿論」


御神が腕を動かすと風が巻き起こる。

突風が一瞬吹いた。


(なんだ今の?魔法か?)


(多分、そうだな)


「御神、一緒に狩をするか?」

「うん。どうだろうね。演芸会まではあまり手の内を知られたくないけど…少しぐらいならいいか」


(聖女としては仲間だけど、演芸会?では技を競い合うようだから…)


(一応ライバルともいえる。宮殿同士で競い合ってるようだし)


(なら、俺の能力も知られない方がいいかもしれないが…狩りで使っているビー球ファイヤーぐらいなら問題ないだろう)


「そうか。よかった。じゃあ、一緒に狩るか」

「協力しよう」


俺は御神と一緒に歩き出した。




「ニャーニャーニャー」(あっちに、ホワイトラビットにゃー)

「分かった。アコ、ナイスだ」


「スバル、猫はなんていってるんだ?」

「アコが魔物を居場所をしらせてくれるんだ」


「それは凄いな。動物の勘って奴かな」

「そうかもしれない」


俺達がアコの指示に従って移動すると。


(いたいた、ホワイトラビットだ)


「御神、いたぞっ、あそこだ」

「分かった。ここは僕が狩ろう」


ホワイトラビットまでは20m程。


「この距離でいいのか?」

「大丈夫。僕はこの距離でも十分だよ」


御神が右手をホワイトラビットに向けると。


バサッ バサッ


一瞬突風が吹く。


すると。


バシュ


ホワイトラビットがコマ切れになった。


(今のは…風の刃か?)


「ニャーニャーニャー」(風魔法、風の刃、『かまいたち』ニャー)


(アコは知っていたのか)


「御神は風魔法が使えるのか?」

「そこそこね。スバルも知ってると思うけど、各宮殿の得意魔法だよ。緑薔薇の宮殿は、風魔法が得意だから」


(へぇー、宮殿ごとに得意魔法がねー)


(そんなものが…)


アコを見ると。


「ニャーニャーニャー」(うちの宮殿にも得意魔法があるにゃー)

「そうなのか?因みになんなんだ?」

「ニャーニャーニャー」(黒魔術にゃー)


(ま、まじでか…確かに黒薔薇だけど…)


(ヤバそうな魔法だな)


「ニャーニャーニャー」(ミカンが凄く上手いにゃー)

「へぇー、ミカンがねー」


(魔法が使えたのか…)


(でも悪魔族だから不思議でもないか)


(黒魔術が似合うのかもしれないな…)


(いや、かわいい系のミカンには合わないか…)



「スバル、僕は獲物を回収するけど…配分はどうする?」

「今回のは、全部御神でいいよ。各自狩ったモノを得ることにしよう」

「了解」


御神は狩ったホワイトラビットを、アイテムボックスに回収した。



そして。


「じゃあ、次も行くか」

「僕としては、スバルの狩りの姿も見たいかな」

「任せとけ。すぐに見られる」


「ニャーニャーニャー」(あっちに魔物の気配ニャー)



俺達がアコの指示に従って進むと。


「いたな。ホワイトラビット」

「スバルがやるか?」


「俺に任せろ」


俺は右手をホワイトラビットに向けて。


「ビー球ファイヤー」


ボワッ


炎の塊が飛んでいき、燃えるラビット。


(よし、やった)


鑑定で素早く確認すると


======================

【種族】ホワイトラビット

【界】魔物 

【レベル】4 

【状態】死亡

======================


(ちゃんと死んでいるな)


横の御神を見ると、ちょっと驚いているようだ。


(どうしたんだ?)


(ビー球ファイヤーは、それ程威力はないと思うが…)


「ス、スバル…炎魔法を使うのか?意外だ」

「そうなのか?」


「黒薔薇が得意なのは、炎魔法ではないと聞いていたけど」


(あぁ、そういうことか)


(俺が黒魔術を使うと思ったのだろう)


「そうだけど…まぁ、あれだよ。なんとなく炎魔法をね。便利だし。料理とか」


「な、なんとなくか…」


御神は俺を注意深く見る。


(しまったかな)


「まぁ、そういうこともあるかもしれない」

「そうだな」


(御神は驚きつつも、受け入れたようだ)


俺は若干動揺している御神から離れ、ホワイトラビットをアイテムボックスにいれた。




そして。


「じゃあ、どんどん狩るか」

「そうしよう」


俺と御神は狩を続けた。


御神の風魔法は狩りには便利だった。

獲物を汚さずにしとめられるので、毛皮や肉を傷つけないのだ。

狩った獲物を売りやすいと思う。


(まぁ、俺は全て生贄用に狩っているので問題はないが…)


(何か違う狩り方法を考えた方がいいかもしれないな)


(もしかしたら、獲物を売ることもあるかもしれないので)




夕方。


「じゃあ、御神、おつかれー」

「スバル。今日は中々よくとれたよ。僕としては満足だ」


「そうか、いつもより多いのか?」

「多いね。魔物を探すのに苦労するけど、今日スバル達といれば、次々に魔物に出会えたから」


「アコのおかげだな」

「ニャーニャーニャー」 (大したことないにゃー)


「それじゃ、スバル。僕はいくよ」

「おう、じゃあな、御神」


俺は御神と別れ、黒薔薇の宮殿に帰った。


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【2/5】続きのエッセイです↓
現代は恋人がいない人が多いですが…恋人はいた方がいい

 

【2/2】エッセイ短編です↓
恋人がいない人は、これをちょっと見て欲しい

 

【1/6】短編が好評?だったので、連載開始です↓
【連載版】生産職の俺は彼女を寝取られたので、パーティーを抜けて自立することにした

 

新連載です~ (数話で完結予定です)↓
3日後、婚約破棄されます。

 

同時連載中です↓(タイトルあれですが、実は少年漫画っぽい話です)
妊娠した私を婚約破棄するって、気は確かですか?【ヒグマ格闘編(石狩鍋) 】

 

とまっていましたが、連載再開です~↓
チートスキル「美容整形」持ちの俺は、目立ちたくないのにハーレムに
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