休日
次の日。
俺が居間に行くと。
「スバル、おはようございます」
「ミカン、おはよう」
「ご飯、できてますよ」
「そうか」
俺は机の上のスクランブルエッグを食べる。
子猫達も朝食中。
朝は弱いのか、ウトウトしながらご飯だ。
「スバル、今日はゆっくり休むと良いですよ。昨日お茶会でしたからね」
「そうだな。今日は狩りに行かず、宮殿でのんびりするよ」
(久しぶりに銅像でも作ろうかな……)
ご飯を食べながら思った。
朝食後。
「ほれほれ」
「ニャーニャーニャー」 (くすぐったいにゃー)
「ここか?」
「ニャーニャーニャー」 (気持ちいにゃー)
「ここのようだな」
「ニャーニャーニャー」 (にゃっ)
居間で小猫達と戯れてから、俺は…思う。
(そろそろ何かしようかな)
(まずは…久しぶりに銅像でも見に行くか)
俺は銅像の間に向かった。
銅像の間。
大理石の像が並んでいる。
(うーん。凄いな)
(昨日王城にいったけど、そこより断然この部屋のほうが凄い…)
(光輝いてる…)
「ニャーニャーニャー」 (スバルにゃー)
(あっ、)
子猫が銅像の後ろに隠れていた。
「どうした?」
「ニャーニャーニャー」 (実は、ちょっと銅像を変更して欲しいにゃ)
「どんな感じに?」
「ニャーニャーニャー」 (こんな感じニャ、実は、ミカンに絵を描いてもらったニャ)
紙を見せる子猫。
台座の文様を変えて欲しいようだ。
「分かった。すぐやるよ」
「ニャーニャーニャー」 (いいにゃー?)
「大丈夫。すぐ終わるから。でも秘密な」
(他の子猫達に知られると、お願いされそうだからな)
「ニャーニャーニャー」 (誰にもいわないにゃー)
「よし」
俺は子猫像の台座に触れる。
そして紙の模様を思い浮かべ、イメージする。
土魔法を行使する。
ズーーーーーン
ボコボコボコボコ
台座を変更した。
「どうだ?」
「ニャーニャーニャー」 (もうちょっと、こっちはフワッとした感じニャ)
「そうか…分かった」
フワっとか…こんな感じかな。
ズーーーーーン
ボコボコボコボコ
「こんな感じか?」
「ニャーニャーニャー」 (そうにゃー。これでいいにゃ)
「よかった」
一回の修正でOK.
(なんだろう…何度も修正したので、子猫達の感覚がつかめてきたのかもしれないな)
「ニャーニャーニャー」 (ありがとにゃー)
「簡単だからいいよ」
子猫は嬉しかったのか、元気に走り回って部屋を出て行った。
(さてと、次に行こうかな)
俺が次に向かったのは、黒薔薇の間。
マナが溢れ、綺麗な水が流れているからか、あの部屋は異常に落ち着くのだ。
聖地というか、日本でいうと神社的な空間なのかもしれない。
神聖な感じがし、心が澄んでくる。
俺が黒薔薇の間に入ると…
(おっ、子猫達も来ていたようだ)
子猫達は水場でくつろいでいる。
毛づくろいしたり、黒薔薇の根元で眠っている。
で。俺は…
(えーと…あったあった)
良い感じの場所を見つけて横になる。
絶好の昼寝スポットだ。
そこで黒薔薇や子猫達を見ながら休む。
(だが…)
(あれだな…)
(俺の蕾。黒薔薇に咲いている蕾、微妙に大きくなっているようにも思える)
(少し成長したのかもしれない)
(ということは、俺は聖女に近づいているのかもしれないな)
俺は全身脱力しながら、黒薔薇の間で癒された。
暫く寝ていると。
ツンツン
(んん?何だ?)
(頬に感触がある)
俺が目を開けると…ミカンがいた。
すっごく近い距離。
鼻がぶつかりそうな程、近い。
「スバル、こんにちはです」
「お、おう。こんにちは。ってミカン、顔近い、近いからっ」
「えへへっ、すみません。スバルの寝顔をよく見ようと思ったんです」
笑みを浮かべるミカン。
恥ずかしそうにしながら、ちょっと距離を取る。
「でもスバル、よく眠れていたようですね。いっぱいツンツンしたのに、中々起きませんでした」
「そ、そうか…熟睡していたのかもしれない」
(本当。かなり深く眠っていた)
(頭がスッキリしている)
(この部屋の効果かもしれない)
でも、頬には違和感。
俺が自分の頬を触ると…
(確かに…ほほにツンツンされたあとがある)
(それに…いつの間にか、俺の体に上着がかけられていた)
(これは…ミカンの服だろう)
(布団代わりにかけてくれたのかもしれない)
「ミカン、服、ありがとな」
「いいですよ。私も横で休んでいましたから」
「そうか、確かに寝てた顔してるな」
「そうですか?」
自分の顔を触るミカン。
「大丈夫。少しだけ目元がゆたーっとしてただけだから」
「そうですか。それならよかったです」
「だな。じゃあミカン、聞くが…」
「何ですか?」
「これは何だ?」
「はい?」
「俺の手の中にいつの間にか入れられている紙だ」
(そう。いつの間にか俺の手の中に紙が握られていた)
(多分、寝ているときに押し込まれたのだろう)
中身を見ると…
ミカンの銅像の修正案のようだ。
銅像自体と、台座の変更点が描かれている。
しかも、結構細かい。
1~3段階に修正箇所が分かれていている。
1は、絶対に直して欲しいところ。
2は、そこそこ直して欲しいところ。
3は、出来たら直して欲しいところらしい。
下の方に説明書きされていた。
「スバル…ふふふっ、」
怪しく笑うミカン。
「どうしたミカン?」
「私は知っているのですよ」
「何を?」
「とぼけても無駄です。子猫像を改良したことを知っているのです」
「そ、そうか…」
(ミカン、随分察知するのが早いな。ついさっき改良したのに)
ミカンは、ペタっと俺の肩に手を触れる。
そして俺をキリッとした目で見つめる。
「なんだミカン?いつになく真剣な顔して…」
「スバル、お願いです。暇な時に銅像を直して欲しいのです」
「いや…まぁ、いいけど」
(そんなに真剣な顔しなくても…)
「本当ですか?本当の本当ですか?」
「あぁ。念を押さなくてもいいよ」
「ふぅーよかったです。やっぱり、私の銅像が凄くないといけません。子猫達への威厳に関わりますからっ」
「そ、そうなのかー」
「はい」
(一応皆のお姉さんだからな。ミカンは)
(まぁ、そういうことにしておこう)
(ミカンが喜んでいるようだから、いいだろう)
よく分からないけど、ミカンは俺の肩をめちゃくちゃ揉んでる。
嬉しさの表現なのかもしれない。
暫くすると。
ミカンは「肩トントンしますね~」と言い出し、実際に肩をトントンしだした。
しかも正面から。
なので。
(凄い顔近い…というか、距離が近い)
(鼻がぶつかりそうな距離だ)
で。
俺がミカンの視線をさけるために首を振ると…
(あれ、子猫達が集団でどこかに行くようだ…)
ゾロゾロと部屋を出て行く。
ミカンも俺の視線に気づいたのか、子猫達を見る。
「多分、子猫達はお風呂の時間です」
「へぇー。昼にお風呂に入るのか?」
(知らなかった)
「はい。一日何回か入っているようです」
(猫は綺麗好きらしいからな)
「じゃあ、俺も昼風呂でも行こうかな」
「いいですねー。では、私も」
「えっ」
(また混浴…)
(前は途中で恥ずかしいっていいだして、俺を追い出したはず…)
(………)
俺が硬直していると…
ミカンは俺をじーっと見てから、ニコッと笑う。
「スバル、嘘ですよ|~。そんなに驚かないで下さい。一緒には入りませんよっ」
「そ、そうだよな」
「スバル、もしかして一緒に入りたいんですか?」
「そんなことない」
「怪しいですねー。まぁ、いいです。私には今からやる事がありますからっ。一緒には無理なのです」
ドンっと忙しいアピールするミカン。
「そ、そうか…」
(何をするか知らないけど、まぁ、よかった)
「じゃあミカン、俺は風呂に行くよ」
「はい。では、また夕食の時にでも」
「おう」
俺はミカンと別れ、お風呂に向かった。
お風呂に到着。
脱衣所で服を脱ぎ。
ガチャー
浴室に入る。
子猫達が湯に浸かっている。
実は、この浴室には3つの湯がある。
特に誰用と分けた事はないのだが…
一番左は姫様用。
いつの間にか縦札が掲げられていた。
『姫様専用』という。
黒薔薇姫が自分で立てたのかもしれない。
ちょっと字がまるっこい女の子文字なので、多分、姫様っぽい。
真ん中は俺とミカンがよく使う場所。
夕食時に聞いてみたら、ミカンも真ん中を使うとの事だった。
最後に一番左は、子猫達用。
子猫達は今も、一番右の浴槽に皆で入ってる。
隅っこが好きなのかもしれない。
この用に、いつのまにか3つに分かれていた。
で。
俺は今、鏡の前で体を洗い中。
石鹸を使って体を洗う。
※因みに、この石鹸もptで購入するのだ
※お風呂場セットということで、1週間に2pt程消費する
※すると石鹸やシャンプー、タオルなどを購入できる
体を石鹸でアワアワしていると…
ヌコヌコ
ヌコヌコ
(おっ、背中にこの柔らかな感触は…肉球?)
振り返ると…子猫がいた。
しかも、銅像の間にいた子だ。
「ニャーニャーニャー」(スバルにゃー。お風呂にゃ?)
「あぁ、久しぶりに昼風呂だ」
「ニャーニャーニャー」(銅像直してくれたから、肩もんであげるにゃ)
「いいのか?」
「ニャーニャーニャー」(にゃ)
「じゃあ、よろしく頼む」
俺が石鹸で頭を洗っていると。
俺の肩にのった子猫が器用に肩を揉む。
若干不思議な状態だが…
(肉球マッサージは良いな)
(絶妙な力加減と感触だ)
(昼寝したばかりだけど、再度眠りそうになる程心地よい)
バシャーっと水で洗い落とし、俺が体を洗い終わると…
マッサージをやめて、ヒョコッと肩に乗る子猫。
「ニャーニャーニャー」(湯船にゃー)
「そうだな。綺麗になったからつかるか」
俺は空いている真ん中の浴槽に近づき。
チャポン
湯に浸かった。
(極楽~極楽~)
肩から降り、横で子猫も湯に浸かっている。
今日は真ん中に浸かるようだ。
「ニャーニャーニャー」(良い湯にゃー)
「そうだな。昼からいい気分だ」
「ニャーニャーニャー」(スバルー)
「何だ?」
「ニャーニャーニャー」(体が溶けそうにゃー)
「気持ちよくても、解けちゃダメだぞ」
俺は子猫の頭を撫でる。
「ニャーニャーニャー」(ふにゃにゃー)
まったりする子猫。
本当に解けそうになっている。
顔とかだらけきってる。
(ふにゃふにゃだ)
俺は子猫の肉球を触る。
(すごいふにゃってるな。ゼリーみたいになってる)
「ニャーニャーニャー」(ふんにゃー)
子猫は目をつぶっている。
もはや、目を開けることすらだるいのかもしれない。
心もとろけているのだろう。
俺もとろけそうだ。
俺はまどろむ意識の中で、子猫の肉球を触った。
触っていると、何故か心が落ち着いたのだ。
こうして俺は、子猫と湯に浸かったのだった。
(極楽~極楽~)
毎週、月曜:23時に更新予定です。
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前回のエッセイの続きを投稿しました。
↓
「現代は恋人がいない人が多いですが…恋人はいた方がいい」
※下部にリンク有
宜しければ、どうぞっ




