お茶会
賢者の爺さんとお茶会の部屋の中へ。
部屋の中央には円卓がある。
席についているのは・・・・
黄薔薇宮殿の猫。
紫薔薇宮殿のメガネ美少年。
それと・・・・・青薔薇宮殿の美少女だ。
(あれ?全員揃っているはずなのに・・・・3人しかいない)
俺合わせても4人だ。
聖女召喚されたのは7人。
だから3人足りない
残りの美少女2人と、おっさんがいないのだ。
「あの~爺さん、俺合わせて4人しかいないけど・・・」
「そうじゃのう。残りの聖女は欠席じゃ」
「欠席?」
(えっ?それありなの?)
「そうじゃ。心配せんでも葉は預かっておるし、怪我はない。
元々、このお茶会の目的は、聖女が各宮殿の薔薇に認められたか確認するものじゃ。
提出された葉を見れば、認められたかどうかわかるのじゃ」
(ほーう。そうなのか)
「ということで、お主の葉ももらおうかのう」
(そうだった)
俺はミカンから貰った黒薔薇の葉を爺さんに渡す。
「どうぞ」
「ふむ、確かに受け取った」
爺さんは受け取った葉を見つめて・・・
「良い葉じゃのう」
葉を見て「うんうん」と頷く爺さん。
鑑定をつかって何か見たのかもしれない。
数秒後。
爺さんは俺の葉をアイテムボックスにしまうと・・・
「後は、4人で話して仲を深めると良い。ワシは退出するのじゃ。
時間一杯まで話すと良い。ワシは葉っぱでお茶をつくってくるからのう。ほほほっ」
そういって部屋を出て行く爺さん。
で。
残された俺達。
とりあえず俺は席に着く。
すると、トコトコトと黄薔薇の猫が俺の元に駆け寄ってくる。
ピョコンっと俺の胸に飛び込んできた。
「ニャーニャーニャー」 (お久しぶりぶりニャー)
「そうだな、召喚以来だな」
猫は俺の腕の中でほおづりしてくる。
寂しかったのかもしれない。
「ニャーニャーニャー」 (宮殿はお隣なんだから、遊びに来れば良いのににゃー)
「悪いな、色々やることがあったんだ」
「ニャーニャーニャー」 (そうにゃー残念にゃ。早くきてほしいニャー)
「今度、いってみるよ」
「ニャーニャーニャー」 (絶対ニャー、約束にゃー)
「おう、任せておけ」
俺は猫の頭を撫でた。
で。
気づいた。
黄薔薇の猫の右前足、その肉球に文様があったのだ。
俺の右腕にある文様と似ている。
(多分、黄薔薇の刻印だろう)
俺の視線を受けて猫は。
「ニャーニャーニャー」 (きづいたにゃ?)
「あぁ、俺の右腕にもある」
俺は腕をまくって文様を見せる。
黒い刻印、黒薔薇の文様が右腕に刻まれているのだ。
「ニャーニャーニャー」 (かっこいいニャー、黒くていいにゃー)
「確かに、猫のは黄色いな。目に優しい」
俺は文様が刻まれた肉球をさわる。
そして気づく。
なんだろうな・・・・文様がある右足の肉球と、文様がない左足の肉球の感覚が少し違う気がする。
気のせいかもしれないが・・・
「どうしたニャー?」
「いや、なんでもない」
「そうにゃー、そういえば自己紹介がまだだったにゃ。あたしの名前はミクにゃー」
お。
挨拶された。
(ミクか・・・・名前聞いてなかったな)
「俺は南雲スバルだ。よろしくな」
「ニャーニャーニャー」 (スバル、宜しくにゃー)
俺と猫が仲良く話していると・・・
「スバル、君、猫と会話できるのか?」
メガネ美少年。
インテリっぽい紫薔薇宮殿の聖女が、驚きながら近づいてきた。
(確か名前は・・・御神だ)
「あぁ、出来るみたいだ」
「そうか。聖女の能力か?」
(元からの能力だが・・・それをいうと面倒そうだな)
「あぁ、そんなところだと思ってくれ」
こう答えておく。
「そうか。中々良い能力だな。でも猫が聖女とはな・・・驚きだよな」
御神がミクに触れようとすると。
「ニャーっ!」
「うぎゃああああっーー!」
猫のミクが御神をひっかいた。
御神は悲鳴を上げながら手を押さえる。
「な、なにするんだよ?この子は?手に傷が出来たじゃないか」
御神は驚きながらミクを見る。
「ニャーニャーニャー」 (メガネは生理的に嫌いニャー)
(そ、そうか・・・・)
ミクは御神がお嫌いのようだ。
「おい、スバル、この子はなんていってるんだ?」
「えっとだな・・・・」
「ニャーニャーニャー」 (メガネを叩き割るにゃー、もやしっ!)
「シャー」っと威嚇するミク。
毛が逆立っている。
爪だってでている。
本当にメガネが嫌いなようだ。
「スバル、なんだ、威嚇してるぞ?どういう意味だ?んん、何だ?」
(本当の意味を伝えるのは後々は面倒だな。聖女同士、なるべく仲良くしたい)
「今はお腹がすいて機嫌が悪いみたいだ」
「そ、そうか・・・・まぁ、そうだよな。僕はこうみえても動物には好かれるタイプなんだ。実は、元の世界でも猫を飼っていてね」
「はははっ」と笑いながらメガネの位置を直す御神。
「ニャーニャーニャー」 (メガネは好かれるわけないにゃー。嘘つくにゃー)
「まぁまぁ。ここは落ち着いて」
俺はミクを撫でる。
「ニャーニャーニャー」 (スバル、メガネに大嫌いって伝えて欲しいにゃー)
(いや、無茶言うなよ)
「落ち着こう、ミク、落ち着きが大事だ。冷静になっ」
俺はミクの頭を撫でながら、顎の下を揉む。
黒薔薇の子猫にこれをやると、みんな喜ぶのだ。
「ニャニャー」 (気持ち良いにゃー)
落ち着くミク。
まったりとした顔をして、爪もひっこむ。
「へぇー、ミクっていうのか。その子。ほらっ、ミク、お手」
御神がこりずに手を出す。
「ニャーニャーニャー」 (ふざけてるにゃー。やっぱりメガネかち割るにゃー)
「シャーシャー」吠えるミク。
「お、落ち着こう、ミク」
俺はさらにミクの顎の下を揉みながら、頭をなでる。
「ニャニャー」
和むミク。
再び出た爪がひっこむ。
「んん、すっごく腹減ってるみたいだな、ミク」
御神はポケットから木の実をとりだす。
で、ミクの前に出す。
「ほら、食べて良いぞ。木の実だ。好きだろ」
「ほれほれ」といって、ミクの前に木の実を出すメガネ。
御神に悪気はないだろうが、完全に猫扱いしてるな。
「ニャーニャーニャー」 (やっぱふざけてるにゃー。このメガネ。そんな怪しげな木の実を食べるかーーっ!)
「ニャー!」
「うぎゃああああーー!」
手を引っかかれる御神は、再び悲鳴を上げる。
俺は御神とミクを少し話す。
これ以上近づけると危険だ。
争いしか起きないだろう。
「御神、ミクはすっごくお腹がへって気が立っているんだ。今は近づかないほうが良い」
「そ、そうだな。腹ペコの動物は危険だからな」
御神は冷静になりながらも、何かを唱える。
ファーン
手の怪我が治っていく。
「お、御神、回復魔法が使えるのか?」
「まぁな」
「へぇー」
俺は感心した。
やっぱり、他の聖女も魔法やスキルを持っているのだろう。
と、思っていると。
―――バンッ!
大きな音がする。
ここでまで沈黙をつらぬいていた青薔薇宮殿の聖女が、机を強く叩いたのだ。
(!?)
(!?)
(!?)
俺達はいっせいに美少女を見ると・・・青薔薇聖女はキリっと俺たちを睨む。
「ちょっとー!なによなによー!皆して楽しそうに話してっ!
私に一番に話しかけなさいよっ!
ここに美少女がいるのよ!あんた達ホモか何かっ!」
いきなり叫びだした。
(!?)
俺とメガネは固まったのだった。




