久しぶりの王城
久しぶりの王城。
異世界召喚ぶりだから、一週間ぶりだ。
で。
王城へつくと待機室に通された。
そこで少し待っていると・・・
「黒薔薇の聖女はおられますかのう?」
見覚えの有るお爺さんが入ってきた。
俺たちを召喚した「賢者」と呼ばれる魔法使いだ。
「俺だよ」
俺が宣言すると・・・
「んん?」
俺を見てキョトンとした顔をする賢者。
それから「ぬぬーーー」っと顔を近づけてくる爺さん。
すっごく凝視される俺。
で、それから爺さんは笑う。
まるで可笑しなものでもみたように。
「ほほほっ、可笑しなことをいってはいかんのう。このアレイスター、老いたとはいえ、まだボケてはおらんぞ」
軽く笑う爺さん。
メガネ聖女と同じ反応だ。
俺が黒薔薇の聖女だと信じていないらしい。
俺が嘘をついていると思ったのだ。
(まぁ、かなり見た目が変わっているからしょうがないか。俺だって未だに鏡を見た自分の姿に驚くぐらいだ)
「爺さん、本当だ。鑑定でも何でもして、確認してくれ」
「そうか。それじゃ失礼するのじゃ」
【注意!注意!鑑定を使用されています。防御しました】
(あっ、また頭の中で警報がなった)
「ぬっ」
爺さんが怪訝な顔をするので、俺は心で念じる。
(ジョブより上は開示)
すると。
「ほほう~」
爺さんは感心した声を出す。
そして、パチパチと瞬きして俺を見る。
信じられないものでもみるように、凝視する。
「まさかのう、あのデ・・・・いやのう、逞しい青年がお主だったとは・・・」
(おい、今デブっていおうとしたなぁあああー!この爺さん。俺には分かってるぞぉおお!。デブじゃねー、ぽっちゃりだ (自称))
と思ったが。
俺は落ち着いて。
「はい。見た目の変化は聖女化のせいかもしれません」
「ほほう。だとしたら、余程お主は聖女の適性が高いのじゃろうな。
たった一週間でここまで変貌を遂げた者は・・・・歴代の聖女の中でもおらんのではないかのう・・・ふむふむ」
(ほーう。そうなのか。そういえば・・・メガネ美少年は全然見た目が変わってなかったな。元から美少年だからかもしれないが)
「そうなんですか」
「じゃのう。容姿の変化は聖女の力を見る一種のバロメータにもなるのじゃ。まぁ、あくまで一種じゃがのう」
「ほほほっ」っと爺さんは明るく微笑む。
顎に伸びた長い白ひげをさわさわしている。
「だがじゃ、もしかするとお主・・・・」
キリっと表情を変えて俺を見つめる。
ちょっと真剣な顔をする爺さん。
「なんですか?」
「もしや、とんでもない能力を秘めているのではないか?
もし、容姿の変化=能力値だとすれば、お主の能力はずば抜けているはずじゃ。とんでもない程になっ」
ニヤリと笑う爺さん。
表情は柔和だが、どこか迫力がある爺さんだ。
目の奥に力がある。
(さすが異世界召喚をした賢者・・・こ、この爺さん・・・・意外とするどいのかも・・・)
だが、爺さんは俺のステータスを見ていないはず。
だから俺は平静を装う。
とんでもない能力を持っていると思われたら、何かよからぬことに巻き込まれるかもしれないからだ。
俺のチートスペックは知られたくない。
「そんなことないですよ。いたって普通です」
俺が無難に答えると。
「そうかのう。まぁ、言ってみただけじゃ。ほほほっ」
ほっと柔和な表情に戻る爺さん。
(本当に冗談だろうか・・・・油断ならない爺さんだ)
一応注意した方がいいのかもしれない。
俺の後ろでは、ミカンも居心地悪そうな顔をしている。
偉い人 (爺さん)を目の前にして緊張しているのかも。
前の召還の時もビビッっていたし。
「では、お茶会に参ろうかのう。他の者は揃っておる。すぐ隣の部屋じゃ」
(んん、なんだ・・・・俺が最後だったのか。だから待合室に他の人がいなかったのかも)
「分かりました」
俺はミカンに振り返る。
「じゃあ、ミカン、いってくるよ」
「いってらっしゃい。スバル。私はここで待っていますね」
「おう」
俺はミカンと別れ、爺さんに続いてお茶会の会場へと入ったのだった。




