お茶会当日
数日後。
つまり、お茶会当日である。
メガネ美少年が持ってきた、聖女様の回覧板に書かれていたイベントの当日だ。
俺は黒薔薇の宮殿で正装?する。
ミカンが用意してくれたスーツっぽい物を着るのだ。
今俺は、絶賛ミカンに仕立てられている。
「スバル。お姉ちゃんに任せてください。動かないで下さいね」
「おう」
ミカンが俺に黒スーツのジャケットを着せる。
黒薔薇だからか、俺は全身ダークに仕立てられるようだ。
ミカンは俺の正面に立ち、抱きつくように両腕を俺の首の後ろにまわしてネクタイをつける。
「うーん。こうでしたかねー。えいっ」
「ぐっ、ぐるしいいぃ・・・・・」
一瞬ネクタイを思いっきりしめられて、窒息しそうになる。
「えへへっ、すみません。男の人にネクタイをつけるのは初めてなんです。
子猫達で練習したんですけど、やっぱり違いますね」
軽く笑うミカン。
「ちょっとビックリした」
「少し緩めますね~」
それからミカンは何度か試行錯誤し、ネクタイをつけた。
うん。
ちょうど良い長さだ。
「ではスバル、髪をとかすので座ってください」
「おう」
俺が椅子に座ると・・
ミカンが俺の後ろに立ち、髪をクシで整える。
「うんうん。スバル、よく似合っていますよ。とってもかっこいいです」
「そうか?」
ミカンが自信満々に頷く。
スーツ姿の俺をみて微笑む。
「はい。とってもよく似合っています。私が服を選んできたんですから。間違いありません」
そう。
ミカンがいつの間にか服を買ってきていたのだ。
昨日買い物に行っていたらしい。
「でもいいのか?俺のために服なんて。宮殿は大変そうだけど・・・」
(俺の服なんかより、少しでも宮殿に金を使った方が良いと思うが)
「大丈夫ですよ。スバルから貰ったモノで買って来ましたし」
そうだ。
俺は狩りや生贄で手に入れたモノをミカンに渡していた。
ここ最近俺は狩り中心で、換金はミカンに頼んでいたのだ。
一応俺はこの宮殿で世話になっている。
だから、やっぱり生活費的なものはいれた方がいいと思ったのだ。
で。
今現在黒薔薇の宮殿の管理をしているのはミカンだ。
俺が狩りで稼ぎ、ミカンが色々他のこと、生活家事全般をやっている。
ミカンは毎日皆の分の料理を作り、屋敷を掃除し、食材などの生活必需品をどこかから仕入れてきているのだ。
小さくて頼りなさそうに見えるミカンだが・・・
自分でお姉ちゃんというだけあり、中々生活力がある。
縁の下の力持ちなのだ。
(まぁ、これまで黒薔薇の宮殿を運営してきたのだから、当然かもしれないが)
「そうか・・・まぁ、ありがとな、ミカン」
「いいですよ。私の役目ですから」
俺が鏡をみると、鏡にはそこそこイケメンが写っていた。
聖女化でイケメン化した俺だ。
髪型も決まっていた。
しかしふと疑問に思った。
「でもミカン、俺が狩りに行く前はどうやって生活費を稼いでいたんだ?」
「色々方法はありますよ。王城から最低限の費用が出ますし、子猫達が魔物を狩ってくるので、私がそれを換金するんです」
「へぇー、そういえば子猫達って強いんだよな」
(俺が狩りをする時も、かなり堂々としていたからな。多分、かなりレベルも高いと思う)
「はい。皆とっても逞しいんです」
そこで俺は思う。
「でも、それじゃー、姫様は何をしてるんだ?」
姫様は神のはずなので、色々とんでもない能力をもっていると思うんだが・・・
「姫様はお忙しいんです。神ですから。
私も軽いお手伝いはしていますが、宮殿の要である黒薔薇の維持は姫様しか出来ません。
姫様あっての各宮殿なんです」
「そうか・・・」
(確か前にも聞いたかもしれない)
「あっ、スバル、もうそろそろお茶会の時間です。いつの間にか時間がたっていました」
ミカンが時計を見て慌てている。
(ほんとうだ。ミカンといると、いつの間にか数時間たっていたようだ)
「だな、じゃあミカン、行くか王城に」
「そうですね。私、なんだか今から緊張してきました」
ブルブル震えるミカン。
俺はそんなミカンの頭をちょこんと撫でる。
「まぁ、落ち着け。何もないさ」
「そ、そうですね。スバルもいますし、私はお茶会に出るわけはないですから」
(え?)
「んん?そうなのか?」
(ミカンも俺の傍にいると思ったのだが・・・)
「はい。お茶会には聖女以外は入れません」
「そうなのか・・・」
(まぁ、聖女のお茶会だしな)
「あっ、それとスバル。これが必要ですよ」
ミカンが俺の手に黒い葉っぱ渡す。
(これには見覚えが有る・・・・これはもしや)
「黒薔薇の葉か?」
「そうです。黒薔薇に生えているモノをとってきました。お茶会には必要なものなんですよ。
お茶会のお茶は各宮殿の葉で作るんです」
「ほーう。って、ミカン、色々詳しいんだな」
「はい。色々姫様に聞いておきました」
(ほう、あのちっこい姫様が。一応神だからな物知りなんだろうか)
「じゃあ、行くか」
「ですね」
俺達は王城へ向かった。




