ミカンと一緒にお風呂
が。
風呂の前について思った。
(ミカンと一緒に入るわけにはいかないな)
(ミカンは悪魔族とはいえ、見た目は女の子だからな)
となると、問題はどちらが一番風呂に入るかだ。
「ミカン、じゃあ、俺から風呂に入るな」
「えー、ダメですよ。私からです」
ミカンがだだをこねる。
ちょびっと俺の前に出て風呂の入り口をふさぐ。
「なんでだよ?」
「理由なんてありません。お姉ちゃんから入るものです。スバルは弟なんですから」
ちょっとドヤつみかん。
弟を見る姉の目線をする。
(そういえばそんな制度があったな・・・・・)
だが、一番風呂は譲れない。
「じゃあ、ミカン、じゃん拳で決めよう。それでいいな?」
「そうですね~」
ミカンは少し考えてから。
「まぁ、いいでしょう。スバルのおかげでお風呂ができましたしね。
私はそこそこじゃん拳強いんですよ。子猫たちにいつも勝ってるんですから」
(いやそれは・・・子猫達がほぼグーとパーしか出せないからじゃ・・・)
猫の手でチョキは難しいだろう。
戦略的に人型が有利だ。
(まぁいいか)
「よーし、やるぞ」
「はい」
俺とミカンはじゃん拳ポーズをし。
「「じゃんけん~ポンッ!」」
「あぁあぁぁぁああああーーーーー!」
悲観にくれるミカン。
悲鳴を上げて崩れ落ちる。
対して俺は喜ぶ。
(やったぜ。勝った)
ミカンはパー。
俺はチョキだった。
猫とのじゃん拳に慣れているミカン。
対猫戦では負けることのないパーからくると思ったのだ。
猫ならグーとパーしかだせない。
だから、パーを出せば必ず負けないのだ。
その癖が必ずミカンに残っていると思ったのだ。
見事その予測が当たった。
悲嘆にくれるミカンの頭を俺は撫でる。
「じゃあ、ミカン、先に入ってるからっ」
「・・・・・グスン」
元気ないミカン。
「まぁ、ミカン、大丈夫。落ち込むな。すぐにあがるからさっ。ほんの少しの辛抱だ」
「・・・・はい」
悔しそうに答えるミカン。
俺はそんな彼女を背に、新しく作られた風呂に入った。
中には広い脱衣所がある。
まるで銭湯だ。
(でも確か・・・・拡張機能も銭湯のそれだったしな。山の絵とか。一応これでも宮殿なので、大人数仕様なのだろう)
俺は服を脱いで、ロッカーに服を入れる。
それから扉をあける。
中に広がるのは、まさに銭湯。
複数の洗い場と、20人ぐらい入れそうな大きな風呂が有る。
(壮観だな・・・・・まるで近所のスーパー銭湯だ)
俺は中にはいる。
洗い場で体を軽く洗う。
(お湯がきもちいい~~~)
久しぶりの温かい湯に震える俺。
体にお湯をかけるだけで生き返る。
幸福感を感じた。
その後、湯気が立ち上るお風呂へ。
モクモクと立ち上がる湯が気持ちよさそうだ。
チャポン
俺は暖かい湯に浸かる。
(極楽~極楽~)
俺は肩までお湯に浸かる。
足を伸ばして湯に浸かる。
久しぶりのお風呂だからか、体がとけそうになる。
体が湯に飲み込まれそうだ。
それほど心地よかったのだ。
(天国だぁ~~~~)
ヌクヌクと俺が疲れを癒していると。
ガチャン
扉が開く。
(んん?何だ?というか誰だ?)
ペタペタペタ
湯気の向こうから足音が聞こえる。
誰かが中に入ってきたのだ。
「これなら一緒に入れますね。湯気もモコモコでていますし~。ふぅ~、よかったです」
(この声…)
ミカンがいきなり浴槽の中に入ってきた。
湯気の先に小さな影が見える。
絶対にミカンのシルエットだ。
小さな角と悪魔のしっぽがちょこちょこ揺れている。
「な、なに入ってきてるんだよっ!ミカンっ!」
俺は動揺する。
湯気の向こうにチラッとミカンのシルエットが見えるのだ。
小柄な女の子の姿。
「大丈夫ですよ、スバル。ちゃんとタオル持ってますし、お姉ちゃんなんですから」
「ミカン、じゃん拳にまけただろっ。何のためのじゃん拳だっ?」
「スバル、固いこといわないでくださいよぉ」
ミカンはそういうと、俺に近づいてくる。
で、俺はミカンの姿を確認する。
(お、おう、確かにバスタオルで体を囲んでいるので、妙なことにはなっていない)
肌は見えるが、大事なところは隠れている。
「あったかそうですね」
ミカンが湯をすくって体を洗った後。
チャポン
俺の横でお湯につかる。
まったり顔をするミカン。
「スバル、大きなお風呂ですね~。気持ちいです」
心地よさそうな顔のミカン。
表情が蕩けている。
確かに気持ちよさそうだ。
その表情を見ていると、ミカンと一緒にお風呂に入っていることが気にならなくなる。
(まぁ、湯気でよくみえない。湯に浸かっているし。気にすることないな)
「そうだな」
俺もまったりと過ごしたのだった。
「お風呂は随分久しぶりです」
「俺もだ」
2人でまったりして数分経つと・・・・
「あの・・・スバル」
「なんだ?」
ミカンがチラチラと俺を見る。
お湯でのぼせたのか・・顔が赤い。
「恥ずかしいです・・・・」
「はぁ!?」
もじもじするミカン。
俺をすごい勢いでチラ見する。
(いやいやいや。今まで横で普通にお風呂入ってたじゃん)
「よくよく考えたら、やっぱりこんな近くで一緒にお風呂に入るのは恥ずかしいです・・・おかしいですぅうう~~」
ミカンが情けない声を出し始める。
「いや、ミカン、いきなり態度をかえるなよ」
ミカンは顔を凄く赤くする。
「スバル、出てってくださぁああ~~い」
「ええ?ってか、はぁ?」
声が震えるミカン。
俺の方をみて涙目になっている。
今にも泣きそうだ。
「は、肌を見られたくありませんっ!」
「おまぁ、・・・湯気でみえてないって自分でいってただろ」
「しょ、しょういう問題じゃないですぅうう。第一、そんなわけないじゃないですかぁああ。まともに考えてください。
男湯と女湯は別ですぅうう」
「そ、そうか」
なんだかミカンの声がめちゃ震えてる。
今にも泣きそうというか、目が赤い。
瞳が揺れている。
(しょうがない、これじゃー、出るしかないか)
「分かった。ミカン、直ぐに出るよ」
「そうですか、ありがとうございます」
急にすっと落ち着くミカン。
(!?)
なんだか怪しかったが、俺は風呂を出たのだった。
(まぁ、少しの間だったけど、良い湯だったな)
俺は疲れを癒したのだった。