表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/35

ミカンのお願い3

 暫くして、完成。

 俺は銅像を、『黒銅像の間』に並び終えた。


 皆で眺める。


「うーん」

「ですね~」

「ニャーニャー」 (うーんにゃー)


 俺達は渋い顔で唸る。


(あれだ、なんだかしっくりこないな。とても)


 ピカピカの大理石の部屋。

 そこに土で作った像が並んでいるのだ。

 なんだかとてもミスマッチに感じる。


 例えるなら・・・おにぎりの中にチョコレートが入っていた感覚だろうか。

 あれぐらいおかしい。


(なんか違うな。やっぱり違う気がする)


「スバル・・・変ですね。まったく落ち着きません」

「ニャーニャーニャー」 (あたしもニャー、鳥肌が立つニャー)

「ニャーニャーニャー」 (あちしもニャー、逆毛が立つニャー)


 皆同じ気持ちらしい。

 部屋を眺めて微妙な顔をしている。


「そうだよな。ちょっと調整した方がいいかもしれないな」

「調整?ですか?」


 ミカンが俺を見る。

 意図が分からないのかもしれない。


「あぁ、調整だ」



 俺は一匹の子猫像の前に立つ。

 土で出来た銅像が聳え立つ。


 そして、俺はここまで使用したスキルと魔法を思い出す。


 一つは【固有魔法】の付与魔法LV70。


 木の棒を持って『炎、炎、炎』と強く念じると・・・

 木の棒がニワカに赤く光りだし、炎属性を与えることが出来たのだ。


【木の棒 (炎):炎属性が宿った木の棒。この木の棒で攻撃すると炎ダメージを与えられる】


 もう一つは【魔法】の土魔法LV20。

 庭の土で銅像を作ったのだ。


 これらを使用することで、この部屋の違和感をなくせると考えたのだ。



 では、さっそく開始。

 まずは付与魔法から使用する。


 とりあえず心の中で念じてみる。


(銅像よ~銅像よ~、大理石にな~れ)


 だが・・・・


 シーン

(何も変化なしか・・・)


 少し考える。

 木の棒では炎属性を付与出来たのに、何故今回は何も起きないのか。

 一体何が違うのか。

 その原因を考える。


「・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・」


(そ、そうか)


 俺はひらめいた。

 すぐさましゃがみこみ、右手で銅像にさわり、左手で大理石に触る。

 そしてイメージする。

 

 心の中で描くのは、右手から左にエネルギーが流れていく図。

 つまり、大理石が銅像に流れ込んでいくイメージだ。

 間の俺が媒体となる。

 大理石を土に付与するのだ。


(銅像よ~銅像よ~、大理石にな~れ)


 次の瞬間。


 ピピピピッ、ピカンッっと白い光に包まれて・・・

 俺が触れている銅像は真っ白になったのだ。

 さっきまで茶色だった土の像は、真新しい白い彫像になったのだ。

 まるで西洋美術館にあるギリシャ像だった。


「スバル、この銅像・・・・すっごくピカピカです。床と同じです。光ってます。子猫が光ってますよっ!」

「ニャーニャーニャー」 (キラキラにゃー)

「ニャーニャーニャー」 (綺麗にゃー)


(よし、成功したようだ)


 俺が触れていた銅像は、ピカピカの大理石製になったのだ。


 

 今俺がやったことは簡単だ。


 周りの大理石の属性を銅像に与えたのだ。

 木の棒では魔法属性を与えることが出来た。

 それならば、材質属性も与えることが出来るのかもしれないと思ったのだ。

 

 一回目に失敗した理由は、そもそも俺の中に付与する元がなかったからだろうと考えた。

 炎魔法LV55の俺なら、木の棒に炎属性を与えることができた。

 だが、俺の体に大理石などはない。だから与えられないと。

 付与魔法は、そもそも『何か』を付与する魔法。

 元になるものを俺が持っている、または触れていなければいけないと考えたのだ。


 どうやら、その推測は当たっていたらしい。


(だが、これはまだ手始めだ。もう一段階先にいく)


(まだ、完成していないのだ)



 俺は床の大理石に両手で触れる。

 そして土魔法を行使する。

 頭の中でイメージするのは立派な台座だ。


 美術の教科書で見るような、銅像の台座をイメージする。

 綺麗なレリーフを思い浮かべるのだ。


 ボコボコボコボコ

 大理石の床が動き出す。

 思ったとおり、大理石も土魔法の効果範囲内だったのだ。


 俺は大理石を操作して、銅像の下に台座を作る。

 美術の教科書を思い出して、立派な台座を作っていく。



 

 そして数分後。

 完成。


 目の前には、華麗な台座に乗った子猫像。 

 ここだけ現代美術館になった。

 子猫像がただの猫ではなく。神の使途や化身のようになっている。


 俺は眺めて思う。


(うんうん。やっぱりポツンと像を置くより、土台は必要だ。見栄えが違う。まったく別物だ)


 俺が自分の仕事振りに満足していると・・・


「スバル・・・カッコ良いですっ!」

「ニャーニャーニャー」 (あたしの銅像がカッコよくなったニャー)


 キラキラした目で銅像を眺めるミカン。

 子猫像をさわさわしている。


 子猫達も目を輝かせて銅像を見ている。

 前足でさわさわしているのだ。


 綺麗なものに触れたいのかもしれない。

 それは人も猫も悪魔族も同じか。


「まぁな、ちょっとやってみた。土魔法が上手く使えたみたいだ」

「スバル~~~~~!」


 ミカンが俺に抱きついてくる。

 ぎゅっと俺を抱きしめる。


(!?))


「な、なんだいきなり?」

「えーっとですね。あたしの銅像はですね~。あたしのはですね~~。あっ、ちょっと待ってくださいね~」


 「ふんふんふん~」っと鼻歌を歌いながらペンで紙に絵を書き出すミカン。

 そしてお絵かきを開始する。


 で。

 俺の前に絵を差し出す。


「えっと、こんな感じの台座が良いです」


(どうやら自分の銅像もかっこよくしてほしいらしい)


 ミカンが差し出した絵は、なんだかとってもファンシーな図案だ。

 黒薔薇っぽいのに囲まれたミカン像だ。

 すっごいキャピキャピしてる。

 子猫像のギリシャっぽさとは違う。


 それに思ったのが・・・


(花びらの文様は難しそうだな・・・・)


 細かい模様を彫るのは難しいのだ。

 昨日の銅像作りでも苦労した。


(でも、やってみるかな)


「分かった、ちょい待ち」

「スバル、お願いします」


 俺はミカン像の前に移動して土魔法を行使する。

 大理石を操作して台座を作るのだ。

 ミカンの絵を思い出して作る。 


 ズーーーーーン

 ボコボコボコボコ



 で。

 完成。


「どうだ?ミカン?」


 ミカンに聞くが・・・・表情が冴えないミカン。

 渋い顔をする。


「うーん。もっとルンルンです。かわいくしてください」

「そうか・・・」


 俺は再び土魔法を行使する。

 「かわいく」「かわいく」唱えながら土魔法を行使する。


 ズーーーーーン

 ボコボコボコボコ


 もう少し黒薔薇を増やし、花びらの角を丸めてみた。

 ちょっとファンシーにしたのだ。


「どうだ?ミカン」

「そうですね~。ここのツルは、わたしのしっぽみたいにしてください。きゅっと丸い感じです」


 ミカンが自分のしっぽを指差す。

 かわいくひょこひょこ動いている。


「そ、そうか・・・」


 俺はミカンのしっぽを見ながら土魔法を使用する。

 まるく、きゅっと、まるく、きゅっと、と心で念じる。


 ズーーーーーン

 ボコボコボコボコ


 まるくて、きゅっとなった台座。


「ミカン、こんな感じか?」

「う~ん。ここはもっとルンルンです」


「ほう」


 再び土魔法で台座を囲う。

 ルンルンにしていく。


 ズーーーーーン

 ボコボコボコボコ


 ズーーーーーン

 ボコボコボコボコ


 ズーーーーーン

 ボコボコボコボコ



 こうして何度か繰り返すこと数度・・・ミカンの台座が完成した。

 ミカンからOKが出たのだ。


 そして、台座の上のミカン像を付与魔法で大理石化する。



 完成。



 うん。

 怪しげな銅像が目の前に誕生した。

 少女漫画のキラキラ1シーンを石像化したらこうなるのかもしれない。

 とてもピュアってる。



 再び皆で鑑賞だ。

 じーっとじっくり見る。


「うん。なかなか良い出来だな」

「ですね。やりました。なんだか達成感がありますよー私。それにキラキラです」

「ニャーニャーニャ」 (ミカンが輝いてるニャー)

「ニャー%E

新連載開始しました。

『妊娠した私を婚約破棄するって、気は確かですか? 【連載版:全国ご当地グルメ編 】』

※ページ下部にリンク有


現在連載している、妊娠した私を婚約破棄するって、気は確かですか?【ヒグマ格闘編(石狩鍋) 】のIFバージョンになります。3章から大きく展開が異なります。

ヒグマ編では、途中からクマとのバトルになりますが、

こちらでは・・・

全国を転々としながらも、現地で恋をして、

観光地を巡り、美味しいご当地ご飯を食べる話です。


宜しければごらん下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拍手ボタン設置中。なろうユーザーでなくても、一言感想を送ることができます。

 

【2/5】続きのエッセイです↓
現代は恋人がいない人が多いですが…恋人はいた方がいい

 

【2/2】エッセイ短編です↓
恋人がいない人は、これをちょっと見て欲しい

 

【1/6】短編が好評?だったので、連載開始です↓
【連載版】生産職の俺は彼女を寝取られたので、パーティーを抜けて自立することにした

 

新連載です~ (数話で完結予定です)↓
3日後、婚約破棄されます。

 

同時連載中です↓(タイトルあれですが、実は少年漫画っぽい話です)
妊娠した私を婚約破棄するって、気は確かですか?【ヒグマ格闘編(石狩鍋) 】

 

とまっていましたが、連載再開です~↓
チートスキル「美容整形」持ちの俺は、目立ちたくないのにハーレムに
― 新着の感想 ―
[一言] 土でできたものは塑像といいます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ