ミカンのお願い3
暫くして、完成。
俺は銅像を、『黒銅像の間』に並び終えた。
皆で眺める。
「うーん」
「ですね~」
「ニャーニャー」 (うーんにゃー)
俺達は渋い顔で唸る。
(あれだ、なんだかしっくりこないな。とても)
ピカピカの大理石の部屋。
そこに土で作った像が並んでいるのだ。
なんだかとてもミスマッチに感じる。
例えるなら・・・おにぎりの中にチョコレートが入っていた感覚だろうか。
あれぐらいおかしい。
(なんか違うな。やっぱり違う気がする)
「スバル・・・変ですね。まったく落ち着きません」
「ニャーニャーニャー」 (あたしもニャー、鳥肌が立つニャー)
「ニャーニャーニャー」 (あちしもニャー、逆毛が立つニャー)
皆同じ気持ちらしい。
部屋を眺めて微妙な顔をしている。
「そうだよな。ちょっと調整した方がいいかもしれないな」
「調整?ですか?」
ミカンが俺を見る。
意図が分からないのかもしれない。
「あぁ、調整だ」
俺は一匹の子猫像の前に立つ。
土で出来た銅像が聳え立つ。
そして、俺はここまで使用したスキルと魔法を思い出す。
一つは【固有魔法】の付与魔法LV70。
木の棒を持って『炎、炎、炎』と強く念じると・・・
木の棒がニワカに赤く光りだし、炎属性を与えることが出来たのだ。
【木の棒 (炎):炎属性が宿った木の棒。この木の棒で攻撃すると炎ダメージを与えられる】
もう一つは【魔法】の土魔法LV20。
庭の土で銅像を作ったのだ。
これらを使用することで、この部屋の違和感をなくせると考えたのだ。
では、さっそく開始。
まずは付与魔法から使用する。
とりあえず心の中で念じてみる。
(銅像よ~銅像よ~、大理石にな~れ)
だが・・・・
シーン
(何も変化なしか・・・)
少し考える。
木の棒では炎属性を付与出来たのに、何故今回は何も起きないのか。
一体何が違うのか。
その原因を考える。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
(そ、そうか)
俺はひらめいた。
すぐさましゃがみこみ、右手で銅像にさわり、左手で大理石に触る。
そしてイメージする。
心の中で描くのは、右手から左にエネルギーが流れていく図。
つまり、大理石が銅像に流れ込んでいくイメージだ。
間の俺が媒体となる。
大理石を土に付与するのだ。
(銅像よ~銅像よ~、大理石にな~れ)
次の瞬間。
ピピピピッ、ピカンッっと白い光に包まれて・・・
俺が触れている銅像は真っ白になったのだ。
さっきまで茶色だった土の像は、真新しい白い彫像になったのだ。
まるで西洋美術館にあるギリシャ像だった。
「スバル、この銅像・・・・すっごくピカピカです。床と同じです。光ってます。子猫が光ってますよっ!」
「ニャーニャーニャー」 (キラキラにゃー)
「ニャーニャーニャー」 (綺麗にゃー)
(よし、成功したようだ)
俺が触れていた銅像は、ピカピカの大理石製になったのだ。
今俺がやったことは簡単だ。
周りの大理石の属性を銅像に与えたのだ。
木の棒では魔法属性を与えることが出来た。
それならば、材質属性も与えることが出来るのかもしれないと思ったのだ。
一回目に失敗した理由は、そもそも俺の中に付与する元がなかったからだろうと考えた。
炎魔法LV55の俺なら、木の棒に炎属性を与えることができた。
だが、俺の体に大理石などはない。だから与えられないと。
付与魔法は、そもそも『何か』を付与する魔法。
元になるものを俺が持っている、または触れていなければいけないと考えたのだ。
どうやら、その推測は当たっていたらしい。
(だが、これはまだ手始めだ。もう一段階先にいく)
(まだ、完成していないのだ)
俺は床の大理石に両手で触れる。
そして土魔法を行使する。
頭の中でイメージするのは立派な台座だ。
美術の教科書で見るような、銅像の台座をイメージする。
綺麗なレリーフを思い浮かべるのだ。
ボコボコボコボコ
大理石の床が動き出す。
思ったとおり、大理石も土魔法の効果範囲内だったのだ。
俺は大理石を操作して、銅像の下に台座を作る。
美術の教科書を思い出して、立派な台座を作っていく。
そして数分後。
完成。
目の前には、華麗な台座に乗った子猫像。
ここだけ現代美術館になった。
子猫像がただの猫ではなく。神の使途や化身のようになっている。
俺は眺めて思う。
(うんうん。やっぱりポツンと像を置くより、土台は必要だ。見栄えが違う。まったく別物だ)
俺が自分の仕事振りに満足していると・・・
「スバル・・・カッコ良いですっ!」
「ニャーニャーニャー」 (あたしの銅像がカッコよくなったニャー)
キラキラした目で銅像を眺めるミカン。
子猫像をさわさわしている。
子猫達も目を輝かせて銅像を見ている。
前足でさわさわしているのだ。
綺麗なものに触れたいのかもしれない。
それは人も猫も悪魔族も同じか。
「まぁな、ちょっとやってみた。土魔法が上手く使えたみたいだ」
「スバル~~~~~!」
ミカンが俺に抱きついてくる。
ぎゅっと俺を抱きしめる。
(!?))
「な、なんだいきなり?」
「えーっとですね。あたしの銅像はですね~。あたしのはですね~~。あっ、ちょっと待ってくださいね~」
「ふんふんふん~」っと鼻歌を歌いながらペンで紙に絵を書き出すミカン。
そしてお絵かきを開始する。
で。
俺の前に絵を差し出す。
「えっと、こんな感じの台座が良いです」
(どうやら自分の銅像もかっこよくしてほしいらしい)
ミカンが差し出した絵は、なんだかとってもファンシーな図案だ。
黒薔薇っぽいのに囲まれたミカン像だ。
すっごいキャピキャピしてる。
子猫像のギリシャっぽさとは違う。
それに思ったのが・・・
(花びらの文様は難しそうだな・・・・)
細かい模様を彫るのは難しいのだ。
昨日の銅像作りでも苦労した。
(でも、やってみるかな)
「分かった、ちょい待ち」
「スバル、お願いします」
俺はミカン像の前に移動して土魔法を行使する。
大理石を操作して台座を作るのだ。
ミカンの絵を思い出して作る。
ズーーーーーン
ボコボコボコボコ
で。
完成。
「どうだ?ミカン?」
ミカンに聞くが・・・・表情が冴えないミカン。
渋い顔をする。
「うーん。もっとルンルンです。かわいくしてください」
「そうか・・・」
俺は再び土魔法を行使する。
「かわいく」「かわいく」唱えながら土魔法を行使する。
ズーーーーーン
ボコボコボコボコ
もう少し黒薔薇を増やし、花びらの角を丸めてみた。
ちょっとファンシーにしたのだ。
「どうだ?ミカン」
「そうですね~。ここのツルは、わたしのしっぽみたいにしてください。きゅっと丸い感じです」
ミカンが自分のしっぽを指差す。
かわいくひょこひょこ動いている。
「そ、そうか・・・」
俺はミカンのしっぽを見ながら土魔法を使用する。
まるく、きゅっと、まるく、きゅっと、と心で念じる。
ズーーーーーン
ボコボコボコボコ
まるくて、きゅっとなった台座。
「ミカン、こんな感じか?」
「う~ん。ここはもっとルンルンです」
「ほう」
再び土魔法で台座を囲う。
ルンルンにしていく。
ズーーーーーン
ボコボコボコボコ
ズーーーーーン
ボコボコボコボコ
ズーーーーーン
ボコボコボコボコ
こうして何度か繰り返すこと数度・・・ミカンの台座が完成した。
ミカンからOKが出たのだ。
そして、台座の上のミカン像を付与魔法で大理石化する。
完成。
うん。
怪しげな銅像が目の前に誕生した。
少女漫画のキラキラ1シーンを石像化したらこうなるのかもしれない。
とてもピュアってる。
再び皆で鑑賞だ。
じーっとじっくり見る。
「うん。なかなか良い出来だな」
「ですね。やりました。なんだか達成感がありますよー私。それにキラキラです」
「ニャーニャーニャ」 (ミカンが輝いてるニャー)
「ニャー%E
新連載開始しました。
↓
『妊娠した私を婚約破棄するって、気は確かですか? 【連載版:全国ご当地グルメ編 】』
※ページ下部にリンク有
現在連載している、妊娠した私を婚約破棄するって、気は確かですか?【ヒグマ格闘編(石狩鍋) 】のIFバージョンになります。3章から大きく展開が異なります。
ヒグマ編では、途中からクマとのバトルになりますが、
こちらでは・・・
全国を転々としながらも、現地で恋をして、
観光地を巡り、美味しいご当地ご飯を食べる話です。
宜しければごらん下さい。