ミカンのお願い
次の朝。
召喚4日目。
朝食を食べ終わり、居間で子猫たちと遊んでいると・・・
「ちょりっす、スバル」
ミカンが元気に挨拶。
(そういえば、ミカンは朝食後にどこかにいっていたな~。お腹でも減ったのだろうか?)
「なんだ、ミカン。飯はつくらないぞ。一週間に一回だ」
「いやですねー違いますよ。お姉ちゃん、そんなにくいいじはってません」
「ねぇー」っと子猫を取り上げて、頭を撫でる。
子猫は「ニャー」っといってミカンの腕の中で嬉しそうに鳴く。
「じゃあ、なんだ?」
「私思ったんです。昨日作った銅像ですけど、庭じゃなくて玄関に飾りましょう」
(そういえば、銅像は庭に野ざらしになっているな)
「雨でも振ったらせっかく作った銅像が壊れるか・・・・」
「そうです。ちゃんと保存しましょう。大事ですよ」
「だな。じゃあ、玄関に運ぶか」
「はい、きっと良い見栄えですよ。お客さんもビックリです」
そこで俺は思う。
頭に不安がよぎったのだ。
(ちょっとまてよ・・・)
「いや、ミカン、銅像は土の塊だから意外に重いぞ。床が抜けないか?」
そう。
この黒薔薇の宮殿はオンボロなのだ。
いたるところに穴が空いているし、気を抜いて歩いていると床が抜ける。
重い銅像なんて置いた日には、床が抜けること待った無しに思える。
「うーん。そうですね~~~確かに。じゃあ、屋敷の前に置きましょうか?」
「いや、それじゃあ雨風にやられちゃうだろ。 銅像がボロボロになる」
(それにミカンや子猫像を玄関にズラリと並べるのは・・・・どんな屋敷かと疑われる気が・・・不思議な館に思われそうだ)
「ですね~困りました」
うんうん唸るミカン。
胸の中の子猫も「ニャー」と鳴く。
「ミカン、何か良い部屋とかはないのか?この屋敷、オンボロだけで部屋数は多いだろ?」
俺も全ての部屋を確認していない。
見た目はちっぽけに見えるオンボロ宮殿だが、中は意外に広かったりする。
「あっ、思い出しました。良い部屋があるんです」
「本当か?重さに耐えられるのか?」
「はい。元銅像の部屋があるんですよ~♪すっかり忘れてました」
「へぇ~、そんな部屋が。この屋敷に銅像か・・・・」
(意外だな)
「昔銅像をたくさん置いていたんですよ。かなり前ですけど」
「ほうほう」
俺は感心する。
知られざる屋敷の過去だ。
「じゃあ、その部屋に銅像を動かすか」
「はい。直ぐに移動させましょう~」
「ニャーニャー」 (移動されるニャー)
俺とミカンと子猫達は、庭の銅像の下へ移動した。
庭に到着。
ずらーーっと銅像が並んでいる。
(あれだな・・・改めてみると・・・なんかスゴイ。壮観だ)
(だって猫銅像がいっぱいあるんだもん)
ここだけ不思議な空間になっている。
まるで違う世界に迷い込んでしまったようだ。
蝋人形館とか、そんな感じに場所に来た感じ。
しかし、一個一個移動させるのが面倒だったので・・・アイテムボックスに収納することにした。
現在の重量は以下。
森で狩ったホワイトラビット (1匹=80kg)が10匹程入っている。
アイテムボックス【現在の重量 800/10000kg】
試しにミカン像を一つ入れると・・・
アイテムボックス【現在の重量 910/10000kg】
ふむ。
どうやら銅像は一つ110kgあるようだ。
等身代ミカン像は結構重く感じたが、筋力ステータスが人並み以上ある俺だ、無理はない。
「ミカン、110kgだってさ、この像」
「いやですね~。わ、わたし、そんなに重くないですよ。もうっ、スバルはお茶目ですね」
恥ずかしそうに笑うミカン。
「いや、銅像の話だよ」
「銅像も軽いですよ。重くないです。私は軽いんですから」
ニコニコ言い切るミカン。
笑顔がちょっと怖い。
(そ、そこまで気にするのか・・・・ミカン。まぁ、ミカンがそういうのであれば)
「そうだな。悪い、俺の目の錯覚のようだ」
「そうですよ。私は多分10kgぐらいです。子猫たちと同じです」
「ねぇー」といって子猫の頭を撫でるミカン。
子猫も「ニャー」と鳴く。
「そ、そうか・・・」
(ミカンがいいのであれば、俺もそれでいい)
「じゃあ、残りの子猫像もいれるか」
「はい」
俺はどんどんアイテムボックスにいれていった。
子猫像はいっぱい作った。
その数11体。
で。
全て入れ終えると・・・最終的なアイテムボックスの重量は。
アイテムボックス【現在の重量 1460/10000kg】
一つの子猫像は50kg程だったのだ。
50x11で550kgの追加。
中々の重さ。
(にしてもすごいな、このアイテムボックスに1トン以上は入ってるけど、袋自体は軽い)
(まるで財布でも持っているかのような重さだ)
「ではっ、スバル、『黒銅像の間』に行きましょう~」
ミカンが元気一杯に叫ぶ。
「ニャーニャーニャー」 (移動ニャー)
子猫達を続く。
なんか部屋の名前まで決まってる。
昔の部屋の名前だろうか。
(まぁ、いくかな)
「よし、案内頼む」
「はい、こっちですよ~。途中で穴に落ちないで下さいね。落ちたら大変ですよ」
「ニャーニャーニャー」 (そうニャー、多分暫く帰ってこれないニャー)
「おう、注意する」
こうして、俺とミカンと子猫たちは移動した。
いざ、『黒銅像の間』へ。




