姫様の夜這い
夜。
ビーフシチューを食べた後。
スバルが寝ていると・・・
プニプニ
頬に柔らかい感触。
それにお腹に何か暖かいものがのっかっている。
(なんだ?)
目を開けると・・・目の前には猫パジャマをきた女の子。
黒薔薇姫がいた。
彼女が俺に馬乗りになっていた。
「おっ、やっと起きたか。わたしは30秒もまったぞっ!」
猫耳が動いている黒薔薇姫。
ドヤ顔してる。
「な、なにやってるんだよっ!お前は!?まったぞじゃねー!」
ドスッ
黒薔薇姫を突き飛ばそうとするが・・・・
(あれ、動かない)
「わたしは神だ。スバル攻撃などきかん。すーぱー強いからな」
ドヤ顔する黒薔薇姫。
ちょこんと俺の腹に馬乗りになっている。
俺はとりあえず聞く。
「で、姫様はなんのようなんだ?俺、眠いんだけど。すっごく」
「すっごく」には力を入れて発音した。
すっごく眠かったから。
だがスルーされた。
「スバル、聞くところによるとお主、中々料理が美味いらしいな」
「そ、そうかな・・・」
俺は目をつぶって寝ようとする。
お腹に暖かい塊 (黒薔薇姫)が乗っているので、ちょうどいい気持ちよさ。
ヌクヌクポカポカ。
眠気がはかどる。
「おい、ねるなっ!ばかものっ!めをあけーいっ」
ガリガリガリ~
俺の腹をひっかく姫。
「い、いてええええええええええ!、な、なにすんじゃー!」
お腹がヒリヒリする。
体の芯に響く。
「スバル、わたしにも料理を作るのだぁ」
「いやだ、今は就寝中だ。お休み~」
俺は目をつぶる。
無理やり布団をかぶる。
ガリガリガリ~
俺の腹をひっかく姫。
「きょええええええええええええ!だ、だから、なにすんじゃー!」
お腹がひりひりだ。
「スバルが料理を作るまで、ずっとひっかくからな。すっごく痛いぞ。しかもドンドン痒くなる」
(うおっ!なんだか本当に痒くなってきた)
ムズムズする。
蚊に刺されたみたいだ。
「くぅ・・・しょうがない、一品だけだからな。本当は一週間に一回しか作らないんだぞ」
「最初からそうすればいんだ。まったく、手間をかけさせおって」
姫様は満足げに頷いた。
「あと、お腹が痒いんだけど」
「そうだったな。動く出ないぞ」
(?)
黒薔薇姫が小さな手で俺のお腹を触る。
ペタッ
「ほれっ」
ムーンっとほのかに光る。
(あっ、痒みが消えた。魔法かもしれない)
「これでいいな。よし、じゃあ、ご飯の時間だ」
そうして、俺達は厨房に移動した。
台所。
姫様はナイフとフォークをもって机で待機している。
ルンルン気分っぽい。
背が小さいため、椅子から浮いた足をユラユラ動かしている。
「まだ~、まだか~」っと、時々こっちに叫ぶ。
どうやら、とんでもなく俺の料理を楽しみにしているようだ。
「今きたばかりだろ~」
「はやく~。おなかすいたよ~おなかすいた~」
叫ぶ姫。
(ふぅー、さくっと作るか)
でもな~、正直料理するのはめんどい。
早くベッドで寝たい。
すっごく眠たいのだ。
なので。
(あれでいいよな)
俺はネット通販を起動する。
で。
画面を見て・・・・
(えっと・・・・・あったあった、猫缶)
俺はキャットフードを購入した。
ボシュ
速攻で出てきた。
(よし、これでいいか)
俺はキャットフードを黒薔薇姫の前に。
「姫様、出来た。これだ」
「ほーう、早いな。しかも珍しいいれものだ」
「あぁ、食器も特注なんだ。姫様専用だ」
(缶詰っていう奴だな)
「おっ、スバルもわかっておるではないか。輝いておる。かわいい猫の絵柄つきか」
喜ぶ姫様。
『専用』ってのが響いたかもしれない。
「ほらっ。たべるといい」
俺はキャットフードの蓋をあけて姫様の前に。
「では、いただきまーす」
姫様はキャットフードを食べる。
「う、うまい、うまいにゃー」
キャットフードを美味しそうに食べる姫様。
よほど上手かったのか、早速語尾がネコってる。
俺はふと思った。
(んん?姫様って神だっけ?キャットフードって体にいいのか?)
少し考えたが。
(まぁ、いいか。眠いし。神なら食中毒にもならないだろう。なんせ神だし)
「おいしいにゃー」
またたくまに完食した姫様。
猫耳をふりふりさせて上機嫌。
「そうか、よかった。じゃあ、俺は帰って寝るよ」
「にゃ。これ、毎日もらっていいにゃ?」
姫様が猫缶を掲げている。
「え、毎日?」
(何言ってるんだ?)
「そうにゃ。毎日食べるニャ。これは必要にゃ」
期待に目を輝かせる姫様。
よほど美味しかったのかもしれない。
(だが、さすがにそれは面倒だな。毎日たたき起こされるのも嫌だし)
「それは難しい。これは高価で貴重なモノなんだ」
(ネット通販では300pt=300円&お金もこの宮殿でひろったものだけど)
「そうにゃ。やっぱりにゃ。わたしもわかっていたぞ。これはすごいものなんだろう。ビビっときたぞ」
ドヤる姫様。
一缶300円だけど。
(ここは便乗しよう)
「そうだ。とっても高価なんだ。だから、最低でも3日に1回な」
「しょうがない、それでいいにゃ。わたしは心が広いからなっ」
姫様は満足げに頷く。
「じゃあ、次からは寝る前に部屋の前に届けに行くよ。皆にばれないように。特別だからなっ」
(他の者に、姫様にキャットフードあげてるのをばれたくないからな)
(なんか後々・・・・色々まずいことになるかもしれない)
「そうにゃ。スバル、よくやったぞ。わたしは驚いた」
すごく興奮している姫様。
顔から笑みがこぼれている。
「おう。よかったな、じゃあな」
「おやすみにゃ」
喜ぶ姫様を背に、俺はベッドに帰って寝た。
ぐっすりと。
新連載始めました。 (こちらは数話で完結予定です)
宜しければどうぞ。
↓
『3日後、婚約破棄されます。』
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