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未読少女  作者: 青戸透
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さて、帰宅した僕は疲れ切ってベッドに寝そべりながらこれからの生活についてぐるぐる考えていた。

ただの一介の図書委員としてなら、こんな性格、思考な僕でもなんとかやっていけそうなのだが、そんな僕に図書委員副委員長の肩書きがついてしまった。

仕事の内容や仰々しい称号が僕の身に余るのは誰だって理解できるだろう。

放棄できるならしてしまいたいが、立場が立場なのでサボったりすることもできない。

僕1人の行動が図書委員全員の行動として見られてしまう、という大変重い立場になってしまった。

しかも、これまでよりも圧倒的に関わる人の人数、密度、関係性が大きく変化してくる。

これは僕にとってゆゆしき事態だった。

問題が山積みだった。

ぐるぐると考えて悩みに悩んだ結果、僕は無難な策をとることにした。

必要性最低限の人間関係を持つことを渋々認め、必要最低限の言葉しか交わさない。

そして、自分は事務仕事に徹するという策だった。

これなら少しでも話す機会やきっかけを減らせるし、僕の精神の負担が最も少なかった。

これからいつもの倍疲れることを決意して考えを無理にまとめた。

考えがまとまったところで、瞼が重くなってきたのでそのまま目を閉じることにした。

日中よっぽど辛かったのか悪夢を見てうなされた気がしたが朝起きると内容まで憶えていなかった。


考え抜いた日の翌日、昼休みに屋上て1人で昼食を摂っていると放送で呼び出しがかかった。

「2-C 佐倉くん、図書室まで来てください。」とのことだった。

早速仕事か…と気が滅入りながらも昼食のパンを急いで牛乳で流し込んでから図書室へ向かった。

図書室の扉を開けると川上が頬を膨らませて待ち構えていた。

僕を見つけるなりつかつかと歩み寄ってきて「佐倉くん、なにしてたの?」と機嫌が悪そうに聞いてきた。

僕は「お昼を食べてたよ。」と返すと川上はムスッとしながら「委員長と副委員長は毎日、図書室が開放している間貸し出しカウンターの当番じゃなくても図書室にいなくちゃダメなんだよ?この間のプリントちゃんと読んだ?」と小さい声で言ってきた。

もらって胸ポケットに入れっぱなしになっていたプリントを慌てて確認すると確かに書いてあった。

腑に落ちなかった僕は「昨日の仕事の説明の時に教えてくれてもよかっただろ?」と文句を言うと「次来なかったら私が教室まで迎えに行くから。」と川上が言い出したので降参して素直に謝ることにした。

謝りながら、川上に教室まで来させない為にも二度と遅れないと僕は密かに心に決めた。


謝ると川上は機嫌を直してくれた。

それから委員長と副委員長の指定席になっているという窓際の日当たりのいい席に案内され、そこに座ってパラパラと本をめくりながら残りの昼休みと放課後を過ごすことになった。


これから毎日、川上や他の図書委員や本を借りに来る生徒と時間を共有することになってしまった。

計画が大きく狂ってしまった気がしたがやる事は変わらないので気にしないことにした。

ただ僕の心労は確実に増えていた。

正直に言うと今すぐ立場を放棄したかったがどうしようもなかった。

いっそ不登校になってしまおうか、と思ったが、自分の考えが馬鹿らしくなって考えるのをやめた。

自分から関わるような事はしないぞ、と改めて決意して何とか1日を乗りきった僕の心に、「月曜日も楽しみにしてるよー」と川上がとどめを刺していった。

もう言葉を返す気力もなかった。



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