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あいさつは世界を救う

作者: 雨咲まどか

 おはようございます。

 世界中から見放された空間で、誰かの声がした。

 おはようございます。

 私はその無機質な声を聞きながら硬いベッドから身を起こす。

――おはようございます!


「ああもうわかった、おはよう!」


 半ば吐き捨てる様に言い放つと、ようやく声が止まった。ピコピコと音がしたと思うとすぐに静寂がやって来る。

 窓の外は忌々しいまでの晴天で、ここは安いアパートの三階だ。住人はおそらく、もう私一人だけ。

 重い腰を上げて洗面台へ向かう。途中で機械音がした。


「良い朝ですね」


 私は声の主を一瞥して、ボトルの水を手の平に溢した。温い水で気休め程度に顔を洗う。仮にも十七になる女がこんな生活をしているなんて惨め……だったのは初めのたった三日ほどの話で、今ではむしろ気楽なものだ。

 横から、先ほどと一言一句違わぬ台詞が流れてくる。


「良い朝ですね」


「……そうですね」


 渋々私が答えると、満足したらしくピーロロと変な音がした。

 あちこちに傷やへこみが目立つ鉄のおもちゃが、じっと私を見ている。時代錯誤もいいところな、機械丸出しの小さな体。動くのは口と目だけの、古い機能。


 さっき住人は私一人だと言ったが、あれは間違いだった。このアパートの住人は、私とこのロボットの二人だ。







 棚の上に座っている小さなロボットは、ロボットのくせに挨拶以外何も出来なかった。その唯一のアイデンティティでさえ、「おはようございます」「おやすみなさい」「良い朝ですね」「こんにちは」の四種類しかない。

 この部屋に住み始めたすぐ翌日の朝のことだ。薄い壁を挟んだ隣室から「おはようございます」が聞こえてきた。一定の間隔で、何度も何度も。

 安眠を妨害された私は、とっくに誰も住んでいなかった隣室に寝起きの爆発した髪のまま突撃した。

 そこに転がっていたのはガラクタの山と、一体のロボットだった。壊れてしまったのか、はたまた初めからそういう設定なのか、ロボットは誰かが「おはよう」と返事をしない限り、約一時間の間「おはようございます」を言い続ける。このスヌーズ機能を止めさせる方法がさっぱり分からず、私は渋々五月蠅い隣人を自室に連れ帰った。壊すのは忍びなく、どこかに捨てに行く気にもなれなかった。

 それからというもの、ロボットは毎日同じ時間に私を起こす。その所為でちっとも起きたくないのに無駄に早起きする日々だ。

 特にすることも無い私は再びベッドへ転がった。滲んだ汗をシーツが吸ってゆく。一体最後にいつ替えたのかすらわからないシーツは埃と汗が混ざった嫌な臭いがした。病院の薬品くさいベッドとは、また違う。


 ああ息苦しい。


 夏になってからもう五ヶ月になる。こんな気候になった原因は二酸化炭素がどうとかなんとかかんとか。学校で習ったが、当時私のクラスを受け持っていた理科の先生が天生教信者であったためにまともな授業ではなかった。天の怒りがなんとか、大地の声のままに生きるのがなんとか。私には割とどうでもよくて、とりあえず地球の今後を憂いておいた。

 腕を伸ばし、私はロボットの腕を掴んだ。抱き上げて目の前に翳す。逆光でロボットの顔に暗く影が落ちた。電気の通っていないこの部屋では、太陽光の明かりが差し込むこの時間が一番明るい。


 未だこの日本で地上にいるのは、死にかけの私とロボットと生き延びた動物たち、天生教の狂信者や頑固ジジイに自殺志願者。それからアメーバみたいな宇宙生物だけ。みんな地下に逃げてしまった。私は逃げた奴らを地底人と呼んでいる。


「地底人共には私の高尚な生き様が理解できないのですよ」


「こんにちは」


「君さ、出会って結構経つんだからそろそろ名前くらい教えてくれてもいいんじゃないの?」


「こんにちは」


 らちがあかない。


「柔軟性の無い奴め」


 私は小さく呟いて、ロボットを枕元に置いた。今や地底人となった筈の顔も知らない隣人は、何を思ってこんなロボットを買ったのか。とんだ欠陥品だ。今時、挨拶しか出来ないロボットなどどれほどの価値があるというのか。

 窓の外を見ると白い霞がかかっていた。


 地上はもうおしまいらしい。

 異常気象や大気汚染が進行しおよそ人間が安全に暮らせるような環境ではなくなり、偉い人達がこぞって打開策を探し求めた。ここ日本では私が生まれた頃には地下への移住案が執行されており、これが世界中で最も普遍的な解決策だった。地上は結局そのままで、何も解決してないけれど。


 私は黄ばんだ天井を見つめて空きっ腹を押さえた。地上がおしまいでも腹は減る。しかし残念ながら技術も道具も人間も、みんな地下に行ってしまった。そのお陰で地上には食料がまともに残っていない。私の住むこの部屋も例外で無く、水でさえボトルの中身が底をつき始めている。


「仕方ない、貰いに行くか」


 私はむくりと起き上がり、ぼさぼさの頭を手ぐしで気持ち程度に整えた。長すぎるワンピースを引きずってアパートを出る。地下移住が始まって暫くしたばかりの時は混乱に乗じた犯罪が横行し、地上は物の見事に世紀末だった。しかしそんな状態がこの現代国家で長続きする筈もなく、非行犯罪をしていた人は綺麗さっぱり地下の収容所へ送られた。もしかするとまだどこかに隠れているのかもしれないが、この地上はそんな犯罪者ですら割に合わないと撤退するような環境だ。

 今では鍵を掛ける必要すらなくなったこの地上は、まるで呼吸をしていないみたいだった。


 閉じたドアを一度振り返り、唇を尖らせる。


「行ってらっしゃいくらい言ってよね」


 私は日に日に独り言が増えていた。

 周囲をくまなく確認しながらのろのろと足を進める。スカートの裾が長くて邪魔だから結んだ。


 地上はもう、人間よりもアメーバ怪人の方が多い。

 アメーバ怪人というのは私が付けたあだ名である。グニャグニャした半透明の生き物で、学者によると地球外生命体らしい。緑色した体は伸縮自在であり、大きさも様々。個体によっては成人した人間ほどの大きさがある。

 そしてアメーバ怪人を怪人たらしめる理由というのは、大きな個体が人型をとる事だった。私たちの真似をしているのか、緑色の宇宙生物は頭と手足を生やし二足歩行をする。

 彼らが地球へやってきたのは、つい九年前の事だ。


 九年前の夏、日本国内にある民家の庭に隕石が降ってきた。その頃のアメーバ怪人はほんの一ミリにも満たないような生物で、隕石に付着していた新種の微生物と学者は言っていた。そんなことよりも地下への確実な移住がなによりの課題だった私たちの間では、話題にすらならなかったが。

 しかし彼らは二年も掛からぬうちに人間達を恐怖に陥れて見せたのである。


 地球上の、人間達が嫌った大気はアメーバ怪人にとってこの上ないごちそうだった、らしい。驚異的な速度で成長し巨大化した彼らは次々と分裂し、個体数を増やしていった。一体からいくらでも分裂を繰り返せる上、分裂した個体もまた無限に分裂出来る。

 そうしてあれよあれよという間に日本を浸食し、彼らは世界中でも増殖を続けた。ほんの小さな破片のような個体でも、ちょっとした荷物にくっついて海を越え、その先で成長し繁殖する。環境破壊される前の地球が人間の繁殖に適していたのと同じように、今の地球はどうやら彼らにピッタリらしい。

 地球人側も勿論彼らを止めるべく奮起したが、核を持たず、ほとんど弱点の無いアメーバ怪人はそもそもの作りが地球上の生物とは違うようだった。いくらでも分裂し、分裂後すぐに個体化するうえ、グニャグニャと変幻自在であり、熱にも強い。アメーバ怪人に火を近づけると炎は勢いを増してしまうため、大火事に発展した事例も多々ある。唯一冷気には弱い様だが、そのような欠点を補ってあまりある繁殖力と適応力を持っていた。


「人間を襲わないだけいいけどね」


 私はマンションの壁に張り付くアメーバ怪人を見やって息を吐いた。

 呼吸をするたび、この地上の空気が人間の生命活動に適していないのだと思い知らされる。地下では空気を国家が管理し、一定の水準を保っているらしい。それはそれで、恐ろしい環境だと私は思う。

 アメーバ怪人が人に危害を加えるのは、人間側が何らかの方法で彼らを脅かした時だけだ。知能も低く、わざわざ扉を開けてまで室内に侵入することはない。だからこうして共存関係を築くうちは直接的な脅威はないのだ。それどころか、アメーバ怪人には植物と似た機能がある事が研究で解明された。悪化するばかりだった大気汚染が、彼らの侵略が進むにつれ止まったのだ。捕獲して地下の空気清浄に利用する計画が進んでいるとか、なんとか。失敗してたった一ミリでもどこかに逃したら地下まで乗っ取られると案ずる声もあるようだが、おそらくそのうち実現するだろう。


「どうせなら、地上を綺麗にして下さいよ」


 ふと立ち止まって、私は道端に立つアメーバ怪人に語りかけてみる。アメーバ怪人はぐにゃりと捻れて、また元に戻った。

 アメーバ怪人には耳が無いが、音を聞く機能はあるらしい。元からあるのか進化の過程で手に入れたのかは不明だが、音に対する反応はかなり顕著である。近くで「おめでとう」と口にすると襲われるとか、海外の学校ではチャイムがなると彼らが音源にへばり付いて離れなくなったとか、金管楽器の音が苦手で危なくなれば吹けばいいとか、本当か嘘かわからない情報が飛び交っている。

 声帯も無いが稀に音を発する事もあり、研究家によると機械音に近い音だという。私も何度か聞いたことがある。何かの鳴き声を録音し再生したような奇妙な音声だ。宇宙広しと言えど全く不思議な生物が居たものだ。


「――そこの人、止まりなさい」


 不意に背後から声がして、私は思わず飛び上がった。周囲のアメーバ怪人達も折れ曲がったり分裂したりしている。

 顧みると見覚えのある平べったい鉄の塊があった。私は顔を顰め、後退る。しまった、これに会わないために気をつけていたのに。

 機械を通した向こう側で、若い男が吐き捨てるみたいに言う。


「身分を証明できるもの、ある?」


 私は無骨な鉄塊にへらりと笑う。


「ありません」


「そう。家族は?」


「いません」


「じゃあすぐに職員が向かいますから、そこで待機して下さい」


 私は眉間の皺を深くした。何故地上に人が居なくなったのか、それは誰もが進んで地下へ逃げたからではない。

 地下を国として「キチンと」成り立たせるために、政府は地下に保護施設を用意した。地上で家が無い人も、金が無い人も、家族が無い人も、地下に来れば確実に生きていけるように。そしてそれは、国民全員が対象だった。救える命を救うのは国家の義務であると偉そうな人が偉そうに語っていた。

 この鉄の塊は探索機だ。内蔵されたカメラ越しに地上を探索し、移住が済んでいない人を見つけては保護車両を派遣して地下の保護施設へ送る。そんなの、私はごめんだけど。


「あの、私、こっちで死ぬからいいです」


 私が言うと、少しの沈黙の後で舌打ちが聞こえた。


「……また自殺志願者かよ」


 その言葉に含まれた意味に辿り着くのに、しばし時間を要した。長いスカートを、大して力の入らない手で握りしめる。じわじわと頬が熱くなってゆく。


 地下で生きていく事に恐怖した人が地上で死を選ぶ事がある。死にたいのだと言って、地下へ行かない人を私は前に見たことがある。全国民の移住を掲げている政府としては「自由意思」を主張する自殺志願者達はある意味で犯罪者よりも面倒な存在なのだ。


 私は自分の、やせ細った身体を見下ろした。小汚い身なりの私は、それはきっと立派な自殺志願者に見えただろう。

 でも私は違う。私はもう何からも逃げたくないだけだ。


 急に頭が真っ白になって、次の瞬間私は手近に居たアメーバ怪人を持ち上げた。ぶにょりとした気味の悪い感覚が手のひらから脳へ伝わる。大きく振りかぶって、アメーバ怪人を探索機に向かって投げつけた。

 驚いたのか、探索機の上でアメーバ怪人はその半透明の体を次々変形させた。探索機から慌てた声が聞こえてくる。

 それを合図に、私は駆けだした。

 走るのなんてどれくらいぶりだろう。すぐに内蔵が軋み、全身が酸素を求めて藻掻き出す。路地裏を縫って、足を引きずりながら進んで、開けた道路に出た途端倒れ込む。


「やばい、今度こそ死ぬ」


 チカチカする視界の中で、電信柱に張られた標語ポスターがぼやけていた。


『あいさつは世界を救う』


 そんなもんで救えたら、訳ないよ。






 命からがら、ようやく目的地についた私を迎えたのは仏頂面だった。


「また来たのか」


「……数少ない客なんだからもっと喜んでよ」


 掠れ声で言って、咳を繰り返す私を佐和田さんは一瞥して肩を竦めた。御年八十二歳の佐和田さんはそれはもう見事な頑固ジジイである。家も金も家族もあるのに、頑として地下へは行かない。

 今時珍しい程に古びた小さな店の中は、殺風景だが掃除だけは行き届いている。去年のままのカレンダーも無駄にでかい狸の置物も、埃一つ被っていない。

 私は数日前となんら代わり映えのしない店内を見回し、勝手に奥に入り込んで腰を下ろした。あー死ぬかと思った。


 佐和田さんは饅頭屋の店主だった。だった、というのは最早閉店したも同然だからだ。本人は絶対に認めないけど。

 毎日綺麗に店を掃除して、何度も読んだであろう本を片手に佐和田さんは店番をしている。しかし電気もガスも水道も止まっているために饅頭は作れず、店には何も商品が並んでいない。


「また一段と死にかけとるな」


 本を閉じ、佐和田さんは老眼鏡を外した。


「まあね」


 私は荒い呼吸の狭間で先の出来事を話した。この地上で、佐和田さんは数少ない私の話し相手でもあった。宗教の信者でも、自殺志願者でもない人間は貴重だ。

 興味が薄そうに私の話を聞いていた佐和田さんは、髭に覆われた口の端で僅かに笑った。


「逃げてきたのか」


 その単語の響きは、無性に癪に障った。


「他にどーしろっつー訳」


「そんな言葉遣いだから男に逃げられるんだ」


「残念、私好きな男の前ならちゃんと可愛く喋れます」


「くだらん」


「先に男のこと持ち出したのそっちじゃん」


 私と佐和田さんは睨み合って、同時に嘆息した。口喧嘩も疲弊するからよくないな。お互い死にかけなんだから、もう少し労らないと。今更労ったところで、どうしようもないかもしれないけど。


「そうだ、水貰いに来たんだった」


 言いながら私は畳に寝転がる。


「それが人にものを頼むときの態度か」


 佐和田さんは小言を言いながらも腰を上げ、台所へ向かった。

 随分と前からこの店で籠城する覚悟をしていたらしい佐和田さんは大量の水と食料を備えていた。

 行き当たりばったりに地上に残った私はすぐに食料問題にぶち当たり、偶然助けてくれたのが佐和田さんだった。それからというもの、私は佐和田さんに飲食物を別けて貰う事でどうにか生き延びてきたのだ。


 台所から戻ってきた佐和田さんは、水が入った容器と缶詰やドライフルーツの袋を私の鼻先に置いた。私は横たわったまま礼を述べる。

 私は一人で勝手にまだまだ世紀末気分で、恥も失礼も掻き捨てだという心持ちだった。どうせ直に死ぬ。死ぬなら、自由に行動してから死にたい。私が地上にいる理由はそれだけだった。


「そろそろ家族が迎えに来ても可笑しくないんじゃないの?」


 問うてみると、佐和田さんは眉根を寄せた。しわくちゃな顔にもっと皺がよる。


「さあな」


「迎えが来たら、行っちゃうの?」


「俺は死ぬまでここで店をやる」


「頑固だなあ」


 私は悪態をつきながら、その頑固さに安心していた。天生教の信者達も頑固と言えば頑固だが、彼らのそれは佐和田さんとはやはり違う。

 佐和田さんの家族、というのは娘一家の事である。「気が済んだらいつでも来て」と地下のマンションに部屋まで用意して貰っているというのに、佐和田さんは「嫁いだ娘とその婿の世話になるなど出来るか」と突っぱねた。老人ホームも断り、政府が運営する保護施設も嫌がり、その結果が客の来ない饅頭屋で一人死を待つ現在になる。


「でも私、佐和田さんの生き様、嫌いじゃないよ」


「お前に好かれたところでな」


 しゃがれた声に呆れを混ぜ込み、佐和田さんはがらんとした店内を見やった。

 二十年前まで、あのカウンターには佐和田さんの奥さんが座っていたそうだ。奥さんが亡くなって、店を畳んで一緒に住もうと提案してくれた娘さんに佐和田さんは頑として首を縦に振らなかったのだという。

 この話を聞いた私は、死んだ奥さんとの思い出であるお店を守り続ける彼の姿勢にいたく感動してしまった。それはどうやら娘さんも同じらしく、強引に地下へ引っ張っていくような事はしないようだ。この頑固ジジイは、死ぬまで気が済んだりしないと思うが。


 私はやっとの思いで上体を起こし、浅くゆっくり息をする。深呼吸は肺に負担が掛かる。結局私はこうして、自分を死から遠ざけている。

 水のボトルに手を伸ばすと、佐和田さんが飲食料を纏めて袋に入れてくれた。

 『サワダ菓子店』の文字が書かれた袋を手に下げて、立ち上がる。


「ありがとう。また来るね」


 私はひらひらともう片方の手を振って、扉の向こうに耳を澄ませた。アメーバ怪人が店内に入り込まないようにと、探索機に見つからないようにだけ気を付けなければならない。


「――またな」


 小さな隙間から私が出て行こうとした時だった。投げかけられた言葉に、私は瞬きする。

 あの佐和田さんが、「ああ」でも「もう来なくてもいい」でも「また来れるならな」でもなく、「またな」と言った。雪でも降るかもしれない。

 ねっとり絡みつく熱気の中を歩き出しながら、私はさっき見た標語を思い出していた。


――あいさつは世界を救う。


 あながちあり得ないことでもないかもしれない。現に今、私の心はほんの少し救われた。世界なんて大それたものは、無理だろうけれど。







「ね、そこの人」


 死にかけの私が家に向かって歩いていると、頭上から声が降ってきた。ずっと前に閉店したのであろう、汚れた外装をした喫茶店の方からだ。

 見上げると女の子がバルコニーに立っていた。乾いたショートカットの髪に、焼けた肌。中学生くらいだろうか。ワンピースから伸びる手足が細い。

 目が合うと女の子は嬉しそうに笑って、柵に足を掛けた。器用に体を反転させたと思うと、軽やかに飛び降りる。慌てる私を尻目に彼女は看板に指を引っかけ、小さな体を振ってから着地した。猫みたいに身軽な子だ。


「お姉さん、教会の人?」


 呆気にとられ身動きのとれない私に、女の子が無邪気な声色で問いかける。


「違う、けど」


「そ、ちょうどよかった。暇なの。ちょっと話でもしようよ」


 女の子は私の腕を掴み、喫茶店の中に引きずり込んだ。なされるがまま私はソファーに腰を下ろし、出された水に視線を落とす。


「ちゃんと綺麗な水だよ」


 怪訝そうな私の態度はお構いなしに、向かいに座った女の子は頬杖をついて笑っている。


「……あなた、教会員なの?」


「うん、まあ一応ね。お父さんもお母さんもそうだから」


 今の地上で「教会員」といえば天生教の教会員を指す。地上に残る事を選択した人の多くが天生教の信者であったがためだ。

 天生教――正式名称「天地生然教」は、環境問題が世界的な問題として取り返しのつかないまでに進んだ頃から流行りだした宗教だ。自然に宿る神を崇拝し、現在人々が苦しんでいるのは環境破壊に対する当然の報いだと考え、裁きを受け入れるべきだというのが天生教の主たる思想だ。それ故地下へは行かず、機械にも頼らずに生活している。それで結局死んでしまうのだから、私には理解出来ないが。


「大変ね」


 どうかしている人達ばかりなのだと思っていたが、両親のために自身の寿命を削らさせられている子どもも居たとは知らなかった。私は心底同情したが、当の女の子はきょとんとしている。


「そう?」


「だって、あなたこのままここに居たら死んじゃうでしょう」


 呼吸をしているだけで、肌が空気に触れるだけで、保護スーツも酸素マスクもしていない私たちの体はどんどん蝕まれていく。ただ運が良いから生きているだけで、いつどんな病気で死ぬかわかったものではない。


「まだ元気だから大丈夫。それに、私自分でこっちを選んだんだよ」


 確かに彼女は近頃出会った誰よりも元気そうだった。痩せてはいるが、顔色も悪くない。珍しい子どもも居たものだ。天生教の考えでいくと、彼女は自然に許されているのだろうか。


「自分で?」


「地上の方が面白いから」


「面白い、ねえ」


 決して面白いとは言い難い日々を思い返して、私は苦虫を噛み潰した。


「お姉さんはどうして地上にいるの?」


「逃げたくないから」


 ふうん、と興味なさそうに唇を尖らせる女の子に、私はむっとしてしまう。訊いたのはそっちじゃないか。

 明かりの無い喫茶店の中はほの暗い。


「お姉さん、一人で暮らしてるの?」


「……いや」


「家族とか?」


「家族はいない」


「じゃあ恋人?」


「それもいなくなった」


「じゃあ友達?」


「それは最初からいない」


「……じゃあ誰?」


 女の子は訝しそうに首を傾けた。


「五月蠅い同居人」


「どーきょにん」


「あいさつしか出来ないの。それも四種類。「おはよう」と「おやすみ」と「こんにちは」と「良い朝ですね」だけ。ちなみにどんな朝でも必ず「良い朝ですね」」


「変なの」


「だよね」


 素直な意見に私は笑ってしまった。そうなんだよ、変なんだよね、あのロボット。見たことも聞いたこともないロボットだもの。誰かのお手製なのか、声も変だし、少し訛ってるようにも聞こえるし。


「でもじゃあ、楽しそうだね」


「……うん」


 しばし思案したのち、私は頷いた。変な声でも、五月蠅くても、あの硬い同居人が言ってくれる「おはよう」は間違いなく私を孤独から救っていた。


「お姉さんが逃げたくないものって、何?」


 どうやら目の前に座っている女の子は詮索好きなようだった。彼女はきっと、良くも悪くも素直で、好奇心に忠実なのだろう。


「死ぬこと」


「死ぬ?」


「私、生まれたときから死にかけだったの」


 正確には、母のお腹に居た頃からだが。


「生きてるじゃん」


 私をじっと観察して、女の子が呟く。


「必死で生きたからね」


 ソファに体を沈めて、私は明かりのつかない天井を見上げた。

 ずっと死にかけだった。胎児の頃から安定せず、私は未熟なままこの世に生まれた。母は出産後、すぐに亡くなった。父はこの混乱した世の中で病弱な子どもを抱える事を怖がり、逃げた。

 呼吸器官に障害のあった私は、何度も手術を繰り返しながらどうにか命を繋いできた。機械も埋め込んで、日がな病室のベッドで過ごす日々だった。少子化対策として執行された未成年の医療費免除システムが、何もないはずの私を生かし続けた。たまに病状が安定すると児童養護施設に入れられ、学校にも通った。その頃には児童養護施設も学校も多くが地下に移動しはじめていたが、結局すぐに病状を悪化させて病院に戻された。

 そのうち病院の地下移行が進み、私はこのまま人生を病室で終わらせる事が急に恐ろしくなって病院を抜け出したのだ。地下で延命処置を受け続けるよりも、地上を一度自由に生きてみたいと思った。


 行き場のない私を拾ってくれたのはマサタカくんで、彼は自殺志願者だった。「キミが死ぬときにボクも一緒に死ぬよ」彼はそう言った。もう人生に疲れてしまったのだと、だから地下には行かないのだと、確かに彼は言ったのだ。なのに地上から人が減ってゆき、マサタカくん自身が病気になった頃のある日、彼は姿を消した。きっと地下に行ったのだと、すぐに理解できた。


 そうして私は、彼が私に残した一部屋五百円のオンボロアパートの一室で、一人で暮らしている。なんの空調機能もない地上のアパートなど、ほとんど価値がない。そんなことマサタカくんにも分かっていただろうに、彼はアパートの住所と鍵だけ残して消えた。私の存在が彼にとってワンコイン程度だったとは、恐れ入ったものだ。もうどこの場所で勝手に暮らしても誰にも咎められない現状で、それでもそのワンコイン部屋にしがみついている私も、どうかしているけれど。


 女の子はソファに凭れてコップを手に取った。


「よくわかんないけど、地上で生きたいなら出歩かない方がいいよ」


「室内にいたって大して変わんないでしょ」


「そういう意味じゃなくて、もしかしてお姉さんわかってないの?」


「何がよ」


「政府はどうして偵察機なんて方法使ってると思う?」


「え?」


 どうしてって――、どうしてだろう。実際に人が出向く手間を出来るだけ減らすため?


「本当に地上の人を全員保護したいなら、片っ端から家を訪問して、住民を探す方が早いでしょ。どうせみんな好き勝手な場所に住んでるんだから、外を探すよりよっぽど効率的」


「……確かに」


「裏を返せば、政府は出歩いている人間だけ捕まえられればいいんだよ。つまり、出歩けないくらい弱ってる人なら、そのままのたれ死んでくれて構わないし、死体もそのまま放置する気ってこと」


 腕を組んで、女の子が声を低くした。窓にはアメーバ怪人がくっついていて、鮮やかすぎる緑が目に痛い。

 女の子は名探偵よろしく、静かに続ける。


「何故政府は地上を人に歩かれたくないのか。考えられるのは何か見られたくないものがある、ってこと。政府が制限してることは他にも沢山あるんだよ。地上と地下の民間人の行き来も禁止されてて、職員が同行する事を条件にした上で、かなり厳しい審査をパスしないと短時間でも地上へ上がることは出来ない。手紙も禁止。物資の運搬も禁止」


「そう、なんだ」


 私は彼女の語りに圧倒されていた。死ぬまでを生きるだけの私の人生では、こんな事を考える事などなかった。


「あの宇宙生物に空気を綺麗にする性質があるのは知ってる?」


 アメーバ怪人を見やって女の子が訊ねる。


「それは知ってる」


「どんどん空気が綺麗になるって言われてたのに、急にぴたっと止まっちゃったのは、何でだと思う?」


「えーと」


 答えられない私に女の子が口の端で微笑む。


「地上に大きな空気清浄施設があるの。地上から綺麗な空気だけ地下に送って、反対に地下の汚れた空気は地上に排出する。政府は地上を捨てたってこと」


「本当なの、それ」


「表向きは地上に戻る方法を模索してる、って言ってるけどね。増え続ける宇宙生物との共存なんて難しいことを考えるより、よっぽど簡単な生きる方法だから、政府が間違ってるとは思わないけど。この方法なら人間と宇宙生物、どっちにも得だし。ただ、それだと自然を食いつぶすことになる。あの緑のブヨブヨが地上を埋め尽くして、他の生物はみんな居場所を失う事になるの。天生教は地上を守るために、政府と戦ってるんだよ」


「……天生教って、ただの少し頭が可笑しい人達だと思ってた」


 私の言葉に女の子はケラケラ笑った。私は何にも知らない。なんにも、知らない。


「お姉さんってさ、死ぬことから逃げてないんじゃなくて、生きることから逃げてるんじゃないの?」


 小さなジャーナリストは図星を突いて、私はコップの中の水が波紋を作った気がした。


「どうして私に話しかけたの?」


 丸い目をもっと丸くして、女の子が私を見つめる。私は自分で問いかけたのに、その瞳の純真さに身がすくむ。


「死にそうだったから」


「……死にそう?」


「生きて欲しいと思って」


 私は胸が苦しくなった。息が出来ない。それを全部病気のせいにして私は立ち上がり、いつ死ぬか分からない体を引きずって歩く。


「またね」


 背後で酷く可愛い声がした。







 アパートに戻った私は、すぐにベッドへ倒れた。同居人のロボットはやっぱり「おかえり」も言ってくれない。

 十七年。私は十七年も生きたのに、知らないことばかりだ。何にも知らずに死んでいくのか。何にも成し遂げずに。


「おやすみなさい」


 動かなくなった私にロボットが反応する。大した機能は無いのに、変なところだけ芸が細かい。

 またね。マサタカくんは言ってくれなかったな。もう会う気はないんだろうな。会えそうに無いけど。

 呼吸をするたび、身体が軋む。


 思えばあの頃、地上はどうしようもなくおかしくなっていて、多発する犯罪とそれを押さえ込む政府が地上の終わりを早めていた。なのに私が今こうしてまだ息をしているのは、間違いなく私を生かそうとしてくれた人がいたからだ。

 こんな今更になって、気付いてしまった。結局逃げていたんだ。マサタカくんからも、世界からも。あんな子どもにだって分かることじゃないか。

 どうして私は、マサタカくんに言えなかったんだろう。「生きて欲しい」って、ただそれだけの一言が。


 胸が苦しくて、意識が遠くなってゆく。どうか、生きて欲しいと、とにかく思った。マサタカくんも、父も、病院の先生も、学校の先生も、児童養護施設の先生も、佐和田さんだって、名前も知らない女の子だって。

 全く今更だ。両親にも先生達にもマサタカくんにも、私はろくに挨拶もしていない。さよならくらい、言えばよかった。


 そうして私は少しだけ夢を見た。生まれたときの、赤ん坊の頃の、夢だ。本物の記憶かは分からない。


「おめでとう」


 あの時私は、この世界に歓迎されていたんだ。皆が口を揃えて言った。「おめでとう」と。母はそれを聞いて、安心したみたいにこの世を去った。「おめでとう」。私の命は、生まれただけでおめでとうを言って貰えるものだったのだ。どうして今まで忘れてしまっていたのだろう。







 どれくらいの間意識を手放していたのだろうか。呼吸が出来ずに目を覚ました私は、目前に広がる緑色の塊に呆然とした。朦朧とした脳が警報を鳴らしている。

 ああそうか、ドアが閉まりきっていなかったんだ。このアパートは度重なる地震や老朽化で立て付けが悪くなっていた。あの宇宙生物は、ほんの小さな隙間でも通り抜ける。油断していた。嘘みたいに生き延びてきたから、感覚が狂っていた。


 大きなアメーバ怪人は私の体に張り付き、そのぶよぶよとした肢体で口を塞いでいた。剥がそうと腕に力を入れるがびくともしない。藻掻こうにも、酸素が足りず四肢が言うことを聞かなかった。

 視界が点滅する。助けを呼ぶための声も、助けてくれる相手も、私にはもうない。ああもう本当に、今更だ。


「おはようございます」


 唐突に、アメーバ怪人の動きが止まった。あのロボットが、私が目覚めたのを感知したのだ。聞き慣れた筈の声が、どうしようも無い程響いた気がした。


「おはようございます」


 全く変わらない挨拶が再び流れ出る。私はその声の主に目を見張った。今声を出したのは、間違いなく緑色した宇宙生物だ。


「良い朝ですね」


 挨拶が返ってきたと認識したロボットが言う。アメーバ怪人は私から離れると、人型を崩しながらロボットの方へ近づいてゆく。


「おはようございます」


 なんども寸分違わぬ挨拶を繰り返しながら棚の上のロボットへ辿り着いたアメーバ怪人は、棚ごとロボットに覆い被さった。

 瞬間、甲高い音が響き渡った。赤ん坊の泣き声のような音は次第に大きくなってゆく。私は訳が分からずに、耳を押さえて身体を丸めた。

 音が鳴り止み、ようやく私は呼吸を取り戻す。ピーロロ。耳鳴りの向こうでロボットの悲鳴が、聞こえた気がした。


 ボロアパートが揺れる。私はベッドの隅で竦み上がった。

 開いたドアの隙間から、次々とアメーバ怪人が入ってくる。彼らは一直線にロボットの元へ集い、覆い被さっては固まって動かなくなった。同化して一つの塊となり、見る間に巨大化してゆく。

 私は慌てて窓へ向かった。鍵を開けて身を乗り出す。


「――ひぃ」


 もっと叫びたいのに、私の壊れた喉はまともに叫び声さえ出すことが出来ない。見渡す限り緑の海が広がっている。アパートは数え切れない程のアメーバ怪人によって包囲されていた。

 背後ではドアが破壊され、アパートが軋む音とアメーバ怪人が蠢く音がどんどん大きくなる。


「死んじゃう」


 ああもう嫌だ、死にたくないや。

 私は目を硬く閉じ、窓から飛び降りた。アメーバ怪人のぶよぶよした体に受け取められる。無我夢中でひしめく宇宙生物の上を走り抜け、逃げた。


 どれくらい走っただろう。緑の絨毯の切れ間を見つけ、ようやく地面に足を付けるようになった頃には私の全身はとっくに限界を超えていた。

 顧みると、アパートはすっかり破壊されている。代わりに緑色の塊がそびえ立っていた。

 私の記憶は、そこで途絶えた。







 遠くでニュースの音がしている。

 僅かな瞼の隙間から光が網膜を焼き、眩しさに視界が滲んでいる。少しずつピントが合う。

 見覚えのある白い天井。人生の大部分を過ごした、病院のベッドによく似ていた。


「――地上で起きた宇宙生物の異常行動発生から二週間が経ちました。あの日からたったの十日間で、世界中の宇宙生物は日本の一カ所に集まり、残らず結晶化しました。未だ正確な観測が間に合わない程の巨大な結晶体からは空気を清浄する機能が発見されており、今後の人類地上復帰計画が期待されています。――本日は当時地上にいたというジャーナリスト、葉山藤子はやまふじこさんにお越し頂きました」


 ニュースキャスターの男性が誰かを紹介している。回らない頭がぼんやりと音を拾い上げてゆく。


「葉山です。よろしくお願いします」


 聞き覚えのある子どもの声。


「葉山さんは幼いながらに、その勇気ある行動によって政府が隠していた本来の目的を暴き、今回の異常行動の一部始終もご覧になっていたとの事ですが」


「……ただ好奇心を追求しただけです」


「当時の様子をお聞かせ頂けますか」


「まず、金切り声のようなものが聞こえたんです。慌てて外に出ると宇宙生物たちが一斉に「おはようございます」と言い出しました。と思うと、すぐに彼らは一カ所に集い始めたんです」


「おはようございます、ですか」


 キャスターは困惑しているようだった。私は少し笑えた。それだけで全身に痛みが走る。


「――おい! 気が付いたのか」


 ふいに耳元でしゃがれ声がした。と思うと皺だらけの顔が目の前に覆い被さった。

 いつもしかめっ面しか見たことの無かった佐和田さんが、必死な形相で私に声を掛けている。


「すぐ医者を呼ぶ、頑張れ」


 私はその震えた声に、また視界が滲んだ。どうして佐和田さんが、ここに。また助けてくれたのだろうか。あんなに大切にしていた奥さんとの思い出の店は? ああもう、私は本当に大馬鹿だ。

 声を絞り出そうにも、硬い呼吸機器に覆われた口は上手く動かない。


 どうか生きて。


 私はもっと早く、声が出る内に、伝えなくてはいけなかった。どうか生きて、奥さんの分まで幸せに。

 瞼が重い。世界が暗く閉じてゆく。

 ニュースの音も佐和田さんの声も遠くなっていって、脳裏にぽつんと浮かんだのはあのロボットの姿だった。


 ああ死ぬんだな。しぶとく生き延びた方だとは思うけど、今となっては命が惜しい。

 死ぬ前に、彼の起こした奇跡を誰かに伝えたかった。


「おはようございます」


 たった一言の挨拶で、あのロボットは地上を、世界を救って見せたのだ。他の誰が言ったって、駄目だった。あのロボットの「おはようございます」だけが、世界を救えた。そのことを知っているのは、私だけなのに。


 生まれ変わったら、私も世界を救えるような人になれるだろうか。おはようとか、そんな簡単な言葉で。


「良い朝ですね」


 あの声が聞こえた気がして、私は意識を手放した。うん、良い朝だ。




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― 新着の感想 ―
[一言] しっかり世界観を作ってあって、この世の中がどういうことになっている……そういう説明を聞くたびに物語に引き付けられていきました。 主人公は、何かと戦いながら同時に逃げていたり、抗っているよう…
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